14 / 19
シーモア商会の陰謀
しおりを挟む
「バート様、オルメタ鉱石を手配しておきました」
「おお、こんなにたくさん」
あれから約一か月後、バートは屋敷に運び込まれる大量の鉱石を見て驚く。元々オルメタ鉱石はそんなにたくさん流通しているものでもなく、運ぶのも楽でもないのにこんなにたくさん用意出来てしまうとは。
「ではこちら私どもで倉庫に運んでおきますね」
「何から何まで助かる」
そんなバートを横目で見ながらレベッカは商会の者たちに命じて鉱石をオレット家の倉庫に運び込ませる。
馬車数台分の鉱石を運び込むのは大変だったが、オレット家の広大な倉庫にどうにか収めることが出来た。
が、レベッカがそんな作業を指揮していると、バートの視線はだんだん作業ではなくレベッカの方へと向いて来る。しかもその視線には好色な光が宿っている。
レベッカもそれはすぐに察することが出来た。
「もう、バート様ったらまだ日が出ているのに気が早いですね」
「ああ、だがレベッカとしても本来は商会の者に任せればいいのにわざわざ来たというのはそういうことだろう?」
そう言ってバートは好色な笑みを浮かべる。
そんなバートを見てレベッカは内心ほくそ笑む。しかしここまで騙されてくれた以上最後ぐらいは恩返ししてもいいだろう。
また、レベッカはバートのことをただの馬鹿、もしくはカモとしか見ていなかったが、いくら金を持っているとはいえ商人に過ぎない自分が貴族の嫡男と体の関係を持てるのはおそらくこれが人生最後だろう。そう思うと貴重な体験と思えなくはない。
「はい……」
レベッカはわざと少し恥ずかしがるような仕草をしつつ答える。
それを見てバートは嬉しそうにするのだった。
翌朝、レベッカは当たり前のように一泊してからオレット家の屋敷を出た。
これまでシーモア商会が献金してきたためか、男爵家にしては立派な屋敷が立っている。この屋敷ももう見ることはないだろうと思うと少しだけ感慨深い。
「……ただいま戻りました」
商館に戻ると、そこには上機嫌な表情の父親が待っていた。
「ご苦労だったレベッカ。それで首尾はどうだ?」
「上々です。今朝もまるで貴族令嬢になったかのように愛していただきました」
「そうか。まさか情が移ったなどということはないだろうな?」
父が少し不安そうに尋ねるが、レベッカはすぐに首を横に振る。
「もちろんです。いくら顔と家柄が良くても、こんな単純な色仕掛けで騙される男は嫌です」
「ははは、それでこそ我が娘だ」
そう言って二人は笑い合う。
広い商館であったが、すでに中の荷物の多くは運び出されていたため中はがらんとしていた。
「しかし助かった、たまたま安いからといってオルメタ鉱石をたくさん仕入れたのだが、まさか相場の数倍の値段で売りさばくことが出来るとは」
「はい、オルメタ鉱石なんていくら待っても相場が下がることはあっても上がることはないというのに」
そう言って二人は笑う。
「ではそろそろ我らもここを出る準備をしようではないか」
「はい」
「新天地に着いたら今回の儲けできれいな屋敷でも建てようではないか」
こうして二人は商会の者たちとともに屋敷を出るのだった。実はバートが勝手に騙されただけで二人は詐欺というほどの行為はしていない。投資はどんな説明を受けようと、最終的には行うと判断した者の責任だ。だから実は法的には悪いことはしていないが、バートのような単純な人物であれば法とは関係なく報復してくる可能性がある。
すでに商館の建物も他の商人に売る算段はついており、新天地への移動には多少お金がかかるが、鉱石の売値と比べると微々たるものだった。
「おお、こんなにたくさん」
あれから約一か月後、バートは屋敷に運び込まれる大量の鉱石を見て驚く。元々オルメタ鉱石はそんなにたくさん流通しているものでもなく、運ぶのも楽でもないのにこんなにたくさん用意出来てしまうとは。
「ではこちら私どもで倉庫に運んでおきますね」
「何から何まで助かる」
そんなバートを横目で見ながらレベッカは商会の者たちに命じて鉱石をオレット家の倉庫に運び込ませる。
馬車数台分の鉱石を運び込むのは大変だったが、オレット家の広大な倉庫にどうにか収めることが出来た。
が、レベッカがそんな作業を指揮していると、バートの視線はだんだん作業ではなくレベッカの方へと向いて来る。しかもその視線には好色な光が宿っている。
レベッカもそれはすぐに察することが出来た。
「もう、バート様ったらまだ日が出ているのに気が早いですね」
「ああ、だがレベッカとしても本来は商会の者に任せればいいのにわざわざ来たというのはそういうことだろう?」
そう言ってバートは好色な笑みを浮かべる。
そんなバートを見てレベッカは内心ほくそ笑む。しかしここまで騙されてくれた以上最後ぐらいは恩返ししてもいいだろう。
また、レベッカはバートのことをただの馬鹿、もしくはカモとしか見ていなかったが、いくら金を持っているとはいえ商人に過ぎない自分が貴族の嫡男と体の関係を持てるのはおそらくこれが人生最後だろう。そう思うと貴重な体験と思えなくはない。
「はい……」
レベッカはわざと少し恥ずかしがるような仕草をしつつ答える。
それを見てバートは嬉しそうにするのだった。
翌朝、レベッカは当たり前のように一泊してからオレット家の屋敷を出た。
これまでシーモア商会が献金してきたためか、男爵家にしては立派な屋敷が立っている。この屋敷ももう見ることはないだろうと思うと少しだけ感慨深い。
「……ただいま戻りました」
商館に戻ると、そこには上機嫌な表情の父親が待っていた。
「ご苦労だったレベッカ。それで首尾はどうだ?」
「上々です。今朝もまるで貴族令嬢になったかのように愛していただきました」
「そうか。まさか情が移ったなどということはないだろうな?」
父が少し不安そうに尋ねるが、レベッカはすぐに首を横に振る。
「もちろんです。いくら顔と家柄が良くても、こんな単純な色仕掛けで騙される男は嫌です」
「ははは、それでこそ我が娘だ」
そう言って二人は笑い合う。
広い商館であったが、すでに中の荷物の多くは運び出されていたため中はがらんとしていた。
「しかし助かった、たまたま安いからといってオルメタ鉱石をたくさん仕入れたのだが、まさか相場の数倍の値段で売りさばくことが出来るとは」
「はい、オルメタ鉱石なんていくら待っても相場が下がることはあっても上がることはないというのに」
そう言って二人は笑う。
「ではそろそろ我らもここを出る準備をしようではないか」
「はい」
「新天地に着いたら今回の儲けできれいな屋敷でも建てようではないか」
こうして二人は商会の者たちとともに屋敷を出るのだった。実はバートが勝手に騙されただけで二人は詐欺というほどの行為はしていない。投資はどんな説明を受けようと、最終的には行うと判断した者の責任だ。だから実は法的には悪いことはしていないが、バートのような単純な人物であれば法とは関係なく報復してくる可能性がある。
すでに商館の建物も他の商人に売る算段はついており、新天地への移動には多少お金がかかるが、鉱石の売値と比べると微々たるものだった。
66
あなたにおすすめの小説
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました
景
恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。
メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。
婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。
松ノ木るな
恋愛
ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。
不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。
研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……
挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。
「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」
※7千字の短いお話です。
【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。
❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」
「大丈夫ですの? カノン様は。」
「本当にすまない。ルミナス。」
ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。
「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」
カノンは血を吐いた。
何か、勘違いしてません?
シエル
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。
マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。
それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。
しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく…
※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。
可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした
珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。
それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。
そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる