13 / 38
リリー視点 誤算
しおりを挟む
「ははは、リリー、僕が君を助けたぞ! もう君はミアに虐められることもないんだ!」
「あの、それは大丈夫ですからせめて一度屋敷に帰してください……」
パーシーは私をお姫様だっこすると屋敷の中を失踪した。明らかに異様な光景ではあるが、一応パーシーは貴族の跡継ぎであるため使用人たちは誰も力づくで止めることは出来ない。
その結果、私はついに庭先に泊まっているテイラー伯爵家の馬車まで連れていかれてしまった。このままでは本当に連れ去られてしまう。
が、パーシーは私の話などどこ吹く風、
「いや、今のミアは僕に婚約破棄されて逆上しているから近寄らない方がいい」
と決め顔で言って私を馬車に乗せる。
別にお姉様は逆上したところで私に危害を加えるような性格ではないのに、と思いつつパーシーにそう思わせたのは自分のせいなので何も言えない。
そんな状況に私は内心の溜め息を表情に出さないようにするのが精いっぱいだった。
確かに元々パーシーは単純で騙すのに最適だとは思っていた。私がお姉様から“借りて”いた精霊の力で魔法を使うとすぐに私のことを褒めてくれた。
私の力は所詮借り物。
仮病とは言わないが、私は足の傷が完治しないよう、故意にリハビリを怠ったり、一人の時に足に負担がかかるようなことをしていた。とはいえさすがに十年も経てばほとんど治ってきてしまう。
今はどうにか押し通せていても、いずれお姉様が本気で「返せ」と言ってくるだろう。その時に万一返すことになってしまえばお姉様以外にも私の魔力が借り物であることがばれてしまう。
だからお母様以外にもいざというとき私に味方してくれる人が欲しかった。それでパーシーとは仲良くしていて、お姉様が悪い人であるということをさりげなく刷り込もうとしていたのに、まさかこんなことになるなんて。
「大丈夫、後は全部僕に任せてくれ」
どうやらパーシーは私が思っていた以上に単純すぎる人物だったようで、今ではすっかり自分を何かの主人公だと思い込んで誰の話も聞かずに私を自分の屋敷に連れていこうと思っていた。
今も(外側だけ見れば)キラキラした笑顔を私に向けてきている。
もし今精霊のことを打ち明ければどうだろうか。
彼は自分の世界観が出来ているから、私が精霊を箱に入れて部屋に保管していると言っても疑うことはないだろう。しかしお姉様はこれまではお人よしだから精霊のことを家族以外に言わないでいてくれたが、さすがにこの期に及べば全て話してしまうかもしれない。そしてもしパーシーが「目の前でこれがリリーの精霊であると示してくれ」などと言い出せば一発で私が嘘をついているとバレてしまうだろう。
そうなると、やはり今言い出すことは出来ない。
しかし馬車に揺られている私は不安だった。
何せ私はこれまで「怪我しているのに努力して魔法が使える」というのが唯一のステータスだったのだ。それがなくなればただの嘘つき女になってしまう。
そう考えるだけで私は胸がきりきりと痛む。
「大丈夫だ、君は何があっても僕が守るよ」
「あ、ありがとう」
そんな私に笑いかけてくるパーシーの言葉も今は耳障りで仕方なかった。どうせ彼は私が好きというよりは「病弱な妹を助けている自分」が好きなだけなのだろう。だがここでパーシーを敵に回せばそれはそれで事態が悪化してしまう。
そう思うと、パーシーに対しても愛想笑いを浮かべて返答せざるを得なかった。
馬車に乗りながら、私はこれが自分が今までしてきたことの報いなのか、と思った。
「あの、それは大丈夫ですからせめて一度屋敷に帰してください……」
パーシーは私をお姫様だっこすると屋敷の中を失踪した。明らかに異様な光景ではあるが、一応パーシーは貴族の跡継ぎであるため使用人たちは誰も力づくで止めることは出来ない。
その結果、私はついに庭先に泊まっているテイラー伯爵家の馬車まで連れていかれてしまった。このままでは本当に連れ去られてしまう。
が、パーシーは私の話などどこ吹く風、
「いや、今のミアは僕に婚約破棄されて逆上しているから近寄らない方がいい」
と決め顔で言って私を馬車に乗せる。
別にお姉様は逆上したところで私に危害を加えるような性格ではないのに、と思いつつパーシーにそう思わせたのは自分のせいなので何も言えない。
そんな状況に私は内心の溜め息を表情に出さないようにするのが精いっぱいだった。
確かに元々パーシーは単純で騙すのに最適だとは思っていた。私がお姉様から“借りて”いた精霊の力で魔法を使うとすぐに私のことを褒めてくれた。
私の力は所詮借り物。
仮病とは言わないが、私は足の傷が完治しないよう、故意にリハビリを怠ったり、一人の時に足に負担がかかるようなことをしていた。とはいえさすがに十年も経てばほとんど治ってきてしまう。
今はどうにか押し通せていても、いずれお姉様が本気で「返せ」と言ってくるだろう。その時に万一返すことになってしまえばお姉様以外にも私の魔力が借り物であることがばれてしまう。
だからお母様以外にもいざというとき私に味方してくれる人が欲しかった。それでパーシーとは仲良くしていて、お姉様が悪い人であるということをさりげなく刷り込もうとしていたのに、まさかこんなことになるなんて。
「大丈夫、後は全部僕に任せてくれ」
どうやらパーシーは私が思っていた以上に単純すぎる人物だったようで、今ではすっかり自分を何かの主人公だと思い込んで誰の話も聞かずに私を自分の屋敷に連れていこうと思っていた。
今も(外側だけ見れば)キラキラした笑顔を私に向けてきている。
もし今精霊のことを打ち明ければどうだろうか。
彼は自分の世界観が出来ているから、私が精霊を箱に入れて部屋に保管していると言っても疑うことはないだろう。しかしお姉様はこれまではお人よしだから精霊のことを家族以外に言わないでいてくれたが、さすがにこの期に及べば全て話してしまうかもしれない。そしてもしパーシーが「目の前でこれがリリーの精霊であると示してくれ」などと言い出せば一発で私が嘘をついているとバレてしまうだろう。
そうなると、やはり今言い出すことは出来ない。
しかし馬車に揺られている私は不安だった。
何せ私はこれまで「怪我しているのに努力して魔法が使える」というのが唯一のステータスだったのだ。それがなくなればただの嘘つき女になってしまう。
そう考えるだけで私は胸がきりきりと痛む。
「大丈夫だ、君は何があっても僕が守るよ」
「あ、ありがとう」
そんな私に笑いかけてくるパーシーの言葉も今は耳障りで仕方なかった。どうせ彼は私が好きというよりは「病弱な妹を助けている自分」が好きなだけなのだろう。だがここでパーシーを敵に回せばそれはそれで事態が悪化してしまう。
そう思うと、パーシーに対しても愛想笑いを浮かべて返答せざるを得なかった。
馬車に乗りながら、私はこれが自分が今までしてきたことの報いなのか、と思った。
173
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます
かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。
そこに私の意思なんてなくて。
発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。
貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。
善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。
聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。
————貴方たちに私の声は聞こえていますか?
------------------------------
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!
真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。
そこで目撃してしまったのだ。
婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。
よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!
長くなって来たので長編に変更しました。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。
民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。
しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。
第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。
婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。
そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。
その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。
半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。
二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。
その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる