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Ⅰ
決行
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その後すぐに一限の授業が始まり、クリフは慌てて席に戻ってきた。
授業と授業の間の休み時間は短い時間であるため、お手洗いに行ったり次の準備をしたりと忙しく、私とクリフが話す機会はなかった。
そのため授業中ずっと、私はクリフにどんな塩対応をするかを考えていてなかなか集中出来なかった。
そしてついに昼休みがやってきた。
私がクリフに対して毅然とした態度をとろうという決意を固めるとも知らずに、クリフは気軽に話しかけてくる。
「リアナ、一緒にお昼を食べよう」
一瞬、彼の方から誘われて少し嬉しくなってしまったが私は大きく深呼吸する。
きっと彼は別にエルマとの接し方を反省したとかではなくただの気まぐれだろう。
ここでいつも通りに接してしまえば今まで通りの時間が続くだけだ。一緒にご飯を食べはするものの、私が一方的にクリフに気を遣うだけの時間。
今まであまり考えないようにしてきたけど、クリフは私が婚約者だから多少雑に接したとしても私は離れていかないし、私の態度は変わらないと思っている。
でもそうではないということを見せつけなければ。
「……私ではなく最近仲良しのエルマと行ってきたらいいのでは?」
私は出来るだけ冷たい声色で答える。
これまでこんな当てつけのゆなことは言わなかったので一瞬クリフはぎょっとした顔をする。
「おいどうしたんだ急に? 今までそんなこと言うような性格じゃなかっただろう?」
「そうだね。でも今までのような性格でいたら私よりもエルマの方がいいってことだよね?」
私の言葉にクリフは困惑する。
きっと彼には私の心の中は何一つ分かっておらず、唐突に感じたに違いない。
「な、何を言ってるんだ? エルマはあくまで友達に過ぎない。婚約者の君とくらべものになる訳がないだろう?」
「なるほど、私は婚約者だから雑に扱ってもいいけど、エルマは友達だから大事にしなきゃってこと?」
私の言葉に一瞬クリフは凍り付く。
一方の私はそんなことを言いながら不思議な気持ちになっていた。
最初はクリフにこんなことを言ったらどう思われるだろうとか、嫌われるんじゃないかとか考えていた。しかし最初は言葉を必死に考えて話していたはずなのに、だんだん言葉が自然に出てくるようになってきたのだ。
「ち、違う! 一体いつ俺が君を雑に扱ったって言うんだ?」
「数日前に私の誘いを断ったとき、カーティスと一緒に試合があるって言ってたけど実は試合には出ていなかったって聞いたけど」
「……」
クリフは沈黙する。
だが私の方は止まらなかった。
「あと、私との勉強会の誘いを断ってエルマと仲良く勉強していたとも聞いたけど」
「そ、それは……」
クリフの表情が青くなり、額に汗がにじんでくる。
それと反比例するかのように、私の口からは自然と言葉が出てくる。
「それでも私のことを雑に扱ってないって言える?」
言っているうちに私はどんどん肩の荷が下りていくような感覚を覚えた。
もしかしたら今までどうにかクリフに好かれようと色々していたときはどこか自分に無理をしながら行動していたのかもしれない。だからこうして本音がとめどなくあふれ出してくるし、それらを吐き出すことで少しずつ楽になっていくのだろう。
一方のクリフはおそらく本人も内心私を雑に扱っていることに気づいてきたのだろう、そして私のただならぬ気配を察し、どんどん表情が青ざめていく。
「わ、悪かった。そのことは謝るから許してくれ」
「謝るって……本当に悪いと思ってる?」
「お、思ってるって!」
クリフはそう言うものの、その表情からは焦りこそ感じられるが、誠意はあまり感じられない。とりあえず私が怒っているから謝っておこうという雰囲気が感じられる。
「じゃあ、他にも私に嘘ついたことがないか全部話して」
「そ、それは……」
そう言ってクリフの視線が一瞬泳ぐ。
が、すぐに私の方を向いた。
「そ、そんなことはしてない! さっき言った二回がたまたま魔が差しただけだ!」
二回連続魔が差すなんてことがある訳ないし、クリフの態度は怪しいし、仮に本当だったとしても「じゃあ仕方ないか」とはならない。
「じゃあ、私に隠れてエルマと会ったことは?」
「そ、そんなことはいいだろう! 大体何ださっきから! 俺たちは婚約者なんだから仮に他の女と二人きりで会っていたとしても気持ちが揺らぐ訳ないだろう!?」
「なるほど、それは私が他の男と二人で会っても構わないということですね?」
「う……」
私の言葉にクリフは完全に押し黙った。
よし、これで大体言いたいことは言ったはずだ。
「では私はあなたよりも自分を大事にしてくれる男性と一緒に食べてきますので」
そう言って私は席を立った。
満足感、達成感もあったが、同時に塩対応のはずが感情的になりすぎてしまったなとも思うのだった。
授業と授業の間の休み時間は短い時間であるため、お手洗いに行ったり次の準備をしたりと忙しく、私とクリフが話す機会はなかった。
そのため授業中ずっと、私はクリフにどんな塩対応をするかを考えていてなかなか集中出来なかった。
そしてついに昼休みがやってきた。
私がクリフに対して毅然とした態度をとろうという決意を固めるとも知らずに、クリフは気軽に話しかけてくる。
「リアナ、一緒にお昼を食べよう」
一瞬、彼の方から誘われて少し嬉しくなってしまったが私は大きく深呼吸する。
きっと彼は別にエルマとの接し方を反省したとかではなくただの気まぐれだろう。
ここでいつも通りに接してしまえば今まで通りの時間が続くだけだ。一緒にご飯を食べはするものの、私が一方的にクリフに気を遣うだけの時間。
今まであまり考えないようにしてきたけど、クリフは私が婚約者だから多少雑に接したとしても私は離れていかないし、私の態度は変わらないと思っている。
でもそうではないということを見せつけなければ。
「……私ではなく最近仲良しのエルマと行ってきたらいいのでは?」
私は出来るだけ冷たい声色で答える。
これまでこんな当てつけのゆなことは言わなかったので一瞬クリフはぎょっとした顔をする。
「おいどうしたんだ急に? 今までそんなこと言うような性格じゃなかっただろう?」
「そうだね。でも今までのような性格でいたら私よりもエルマの方がいいってことだよね?」
私の言葉にクリフは困惑する。
きっと彼には私の心の中は何一つ分かっておらず、唐突に感じたに違いない。
「な、何を言ってるんだ? エルマはあくまで友達に過ぎない。婚約者の君とくらべものになる訳がないだろう?」
「なるほど、私は婚約者だから雑に扱ってもいいけど、エルマは友達だから大事にしなきゃってこと?」
私の言葉に一瞬クリフは凍り付く。
一方の私はそんなことを言いながら不思議な気持ちになっていた。
最初はクリフにこんなことを言ったらどう思われるだろうとか、嫌われるんじゃないかとか考えていた。しかし最初は言葉を必死に考えて話していたはずなのに、だんだん言葉が自然に出てくるようになってきたのだ。
「ち、違う! 一体いつ俺が君を雑に扱ったって言うんだ?」
「数日前に私の誘いを断ったとき、カーティスと一緒に試合があるって言ってたけど実は試合には出ていなかったって聞いたけど」
「……」
クリフは沈黙する。
だが私の方は止まらなかった。
「あと、私との勉強会の誘いを断ってエルマと仲良く勉強していたとも聞いたけど」
「そ、それは……」
クリフの表情が青くなり、額に汗がにじんでくる。
それと反比例するかのように、私の口からは自然と言葉が出てくる。
「それでも私のことを雑に扱ってないって言える?」
言っているうちに私はどんどん肩の荷が下りていくような感覚を覚えた。
もしかしたら今までどうにかクリフに好かれようと色々していたときはどこか自分に無理をしながら行動していたのかもしれない。だからこうして本音がとめどなくあふれ出してくるし、それらを吐き出すことで少しずつ楽になっていくのだろう。
一方のクリフはおそらく本人も内心私を雑に扱っていることに気づいてきたのだろう、そして私のただならぬ気配を察し、どんどん表情が青ざめていく。
「わ、悪かった。そのことは謝るから許してくれ」
「謝るって……本当に悪いと思ってる?」
「お、思ってるって!」
クリフはそう言うものの、その表情からは焦りこそ感じられるが、誠意はあまり感じられない。とりあえず私が怒っているから謝っておこうという雰囲気が感じられる。
「じゃあ、他にも私に嘘ついたことがないか全部話して」
「そ、それは……」
そう言ってクリフの視線が一瞬泳ぐ。
が、すぐに私の方を向いた。
「そ、そんなことはしてない! さっき言った二回がたまたま魔が差しただけだ!」
二回連続魔が差すなんてことがある訳ないし、クリフの態度は怪しいし、仮に本当だったとしても「じゃあ仕方ないか」とはならない。
「じゃあ、私に隠れてエルマと会ったことは?」
「そ、そんなことはいいだろう! 大体何ださっきから! 俺たちは婚約者なんだから仮に他の女と二人きりで会っていたとしても気持ちが揺らぐ訳ないだろう!?」
「なるほど、それは私が他の男と二人で会っても構わないということですね?」
「う……」
私の言葉にクリフは完全に押し黙った。
よし、これで大体言いたいことは言ったはずだ。
「では私はあなたよりも自分を大事にしてくれる男性と一緒に食べてきますので」
そう言って私は席を立った。
満足感、達成感もあったが、同時に塩対応のはずが感情的になりすぎてしまったなとも思うのだった。
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