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Ⅲ
事件 シエラ視点
「さあこっちへ」
私はウィルさんに手を引かれて部屋へと入っていきます。
そろそろ帰らないと心配されてしまうということはウィルさんだって分かっているはずなのに、今の彼はいつになく強引なような気がします。
そう言えば最近のウィルさんは私に対して以前にもまして積極的になったような気がします。特にお姉様と喧嘩した後からは特に。
そんなウィルさんに対する漠然とした不安はありましたが、それよりも彼が急に積極的になったことに対する期待のようなものが上回ってしまいます。何だかんだ美形で優しいウィルさんが私に好意を寄せてくれていることは私にとってかなり嬉しいことでした。
お姉様とウィルさんに仲直りして欲しいという気持ちは依然としてありますが、一方でウィルさんとの関係を進めたいという気持ちもあります。私はそんな自分の気持ちにわざと答えを出さずにいました。
「ちょっと待ってくれ」
部屋で二人きりになると、そう言ってウィルさんは私に食後の紅茶を淹れて持ってきてくれました。
「少しでもシエラと長く一緒にいたくてね」
ウィルさんはソファの私の隣に腰かけながら言います。
「ありがとうございます」
そう言われてしまうと私も断ることは出来ません。
私は言われるがままに紅茶に口をつけます。
が、そこで不意に違和感を覚えます。どういう違和感か説明は出来ませんが、紅茶の味がいつもと違うような気がします。私はお姉様によると味覚が狂っていて、普通の人が食べてまずいと思うものでもおいしいと思ってしまうようです。その私が違和感を覚えるなどあまりないことです。
よく分かりませんが、私は無言で紅茶のティーカップを置きます。
そしてウィルさんととりとめのないことを話すのですが、話していると不意に頭がぼーっとしてきます。今日は特に気合を入れてお料理したので疲れてしまったのでしょうか。心なしか、体が熱く熱があるような気もします。
「どうした、眠いのか?」
「あれ……ちょっと今日はお料理を頑張りすぎてしまったせいでしょうか?」
「そうかもしれないな」
そう言いながらウィルさんは私の体へと手を伸ばしてきます。
私は頭がぼーっとしているせいか、それを避けることも出来ません。
気が付くと、彼は明らかに偶然ではない形で私の体を触っています。そして、なぜか私はそれに対して快感を覚えてしまいます。
それを見て、ウィルさんは手を動かしながら私にささやくように言いました。
「やっぱりシエラは可愛いな」
「そ、そうでしょうか?」
それよりも先ほどから私の体を撫でてくるウィルさんの手が気になります。
私は思い切って指摘することしました。
「それより先ほどから手が私の体に触れていますが」
「そうだ、僕は君のことを手放したくないんだ」
「でも……」
私は何か反論しなければ、と思いますが頭がぼーっとして何も考えられないし体に力も入りません。もうこのまま彼の愛撫に身を任せてしまってもいいかなと思ってしまいます。
が、その時でした。
不意にぼーっとしていた頭がすっきりしていきます。まるで今まで効いていた麻酔がきれていくときのように。
麻酔?
そこで不意に私の中で全てが繋がります。
不意に積極的になったウィルさん。
違和感があった紅茶の味。
ぼーっとしていた意識と少し熱っぽかった体。
さては紅茶に盛られていた?
ティーカップを見るとかなりの量が残っています。少し飲んで違和感があったので、すぐに紅茶を残したからでしょう。
これなら途中で薬が切れてもおかしくありません。
それに気づくと、これまで好ましく思えていたウィルさんが途端にけだもののように見えてきます。
彼は絶対そんなことはしない紳士な方だと信じていたのに。
こんなことをする人はもうウィルさんじゃない。
そう思うと途端に彼の手が気持ち悪く思えてきます。
「離して!」
そのことに気が付くや否や私はウィルさんから逃げるように立ち上がっていたのでした。
私はウィルさんに手を引かれて部屋へと入っていきます。
そろそろ帰らないと心配されてしまうということはウィルさんだって分かっているはずなのに、今の彼はいつになく強引なような気がします。
そう言えば最近のウィルさんは私に対して以前にもまして積極的になったような気がします。特にお姉様と喧嘩した後からは特に。
そんなウィルさんに対する漠然とした不安はありましたが、それよりも彼が急に積極的になったことに対する期待のようなものが上回ってしまいます。何だかんだ美形で優しいウィルさんが私に好意を寄せてくれていることは私にとってかなり嬉しいことでした。
お姉様とウィルさんに仲直りして欲しいという気持ちは依然としてありますが、一方でウィルさんとの関係を進めたいという気持ちもあります。私はそんな自分の気持ちにわざと答えを出さずにいました。
「ちょっと待ってくれ」
部屋で二人きりになると、そう言ってウィルさんは私に食後の紅茶を淹れて持ってきてくれました。
「少しでもシエラと長く一緒にいたくてね」
ウィルさんはソファの私の隣に腰かけながら言います。
「ありがとうございます」
そう言われてしまうと私も断ることは出来ません。
私は言われるがままに紅茶に口をつけます。
が、そこで不意に違和感を覚えます。どういう違和感か説明は出来ませんが、紅茶の味がいつもと違うような気がします。私はお姉様によると味覚が狂っていて、普通の人が食べてまずいと思うものでもおいしいと思ってしまうようです。その私が違和感を覚えるなどあまりないことです。
よく分かりませんが、私は無言で紅茶のティーカップを置きます。
そしてウィルさんととりとめのないことを話すのですが、話していると不意に頭がぼーっとしてきます。今日は特に気合を入れてお料理したので疲れてしまったのでしょうか。心なしか、体が熱く熱があるような気もします。
「どうした、眠いのか?」
「あれ……ちょっと今日はお料理を頑張りすぎてしまったせいでしょうか?」
「そうかもしれないな」
そう言いながらウィルさんは私の体へと手を伸ばしてきます。
私は頭がぼーっとしているせいか、それを避けることも出来ません。
気が付くと、彼は明らかに偶然ではない形で私の体を触っています。そして、なぜか私はそれに対して快感を覚えてしまいます。
それを見て、ウィルさんは手を動かしながら私にささやくように言いました。
「やっぱりシエラは可愛いな」
「そ、そうでしょうか?」
それよりも先ほどから私の体を撫でてくるウィルさんの手が気になります。
私は思い切って指摘することしました。
「それより先ほどから手が私の体に触れていますが」
「そうだ、僕は君のことを手放したくないんだ」
「でも……」
私は何か反論しなければ、と思いますが頭がぼーっとして何も考えられないし体に力も入りません。もうこのまま彼の愛撫に身を任せてしまってもいいかなと思ってしまいます。
が、その時でした。
不意にぼーっとしていた頭がすっきりしていきます。まるで今まで効いていた麻酔がきれていくときのように。
麻酔?
そこで不意に私の中で全てが繋がります。
不意に積極的になったウィルさん。
違和感があった紅茶の味。
ぼーっとしていた意識と少し熱っぽかった体。
さては紅茶に盛られていた?
ティーカップを見るとかなりの量が残っています。少し飲んで違和感があったので、すぐに紅茶を残したからでしょう。
これなら途中で薬が切れてもおかしくありません。
それに気づくと、これまで好ましく思えていたウィルさんが途端にけだもののように見えてきます。
彼は絶対そんなことはしない紳士な方だと信じていたのに。
こんなことをする人はもうウィルさんじゃない。
そう思うと途端に彼の手が気持ち悪く思えてきます。
「離して!」
そのことに気が付くや否や私はウィルさんから逃げるように立ち上がっていたのでした。
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