「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

文字の大きさ
68 / 77

対決Ⅲ

「ではまずはエレン」
「はい」

 そう言って私は前に進み出ます。

「現在シエラは今回のことで謹慎しているため、私が代わりにシエラから聞いたことを話を述べます。それによると、確かにシエラはウィルに好意を抱いていましたが、それはあくまで恋愛的なものではなかったとのことです」
「嘘だ! それならわざわざ僕の屋敷まで一人で来るわけがない!」
「静粛に」

 ウィルが話に割り込んできますが、すぐに公爵にたしなめられました。

「こほん、ですが本当にシエラがあなたにやましい気持ちを抱いているのであれば、彼女はもっと私に対してあなたへの好意を隠そうとしたはずです」
「そ、それは……」
「とはいえ仮にやましい気持ちがなかったとしても、確かにシエラの行いは軽率でした。そしてそれが今謹慎している理由です。彼女はウィルにお菓子作りを習い、それだけで帰ろうとしましたが、ウィルに引き留められて部屋に連れ込まれ、しかも薬を盛られそうになったとのことです」
「その話が本当だという証拠はあるのか!?」

 ウィルとしてはそんな話が事実だと認められては敵わないと思ったのか、必死で反論してきます。

「それに関しては別の方に証言していただこうと思います。他に質問は?」
「ぜ、全部でたらめなのに質問も何もあるか!」

 そう言ってウィルは口をつぐみます。
 まあここまでは既に行われていた言い合いの範疇でしょう。あまり長く続けても意味がないと思ったのか、父上が告げます。

「では次にシエラと親交があったフランクだ」
「はい」

 次に進み出たのはフランクでした。

「僕はシエラと親交がありましたが、彼女はどちらかというと不器用で裏表がない性格です。ウィル殿が言っているような、他人を陥れるような才覚はありません。仮に他人を陥れようとして誰かに近づけばすぐに見破られてしまうでしょう」
「そんなことはない!」

 ウィルは必死で反論してきますが、シエラと知り合いであった貴族の何人かはうんうんと頷いています。

「シエラと親しいから擁護しているんだろう!」

 もはやウィルは公爵の指示も待たずに勝手に口を開きました。
 フランクは少し呆れた顔をしましたが、淡々と答えます。

「仮にあなたの言うようなことをする人物でしたら、親交を結ぶようなことはしません。以上です」

 実際はフランクとシエラの関係は良好ではありませんでしたが、確かにシエラがウィルの言うような人物であればそもそもフランクは彼女に近づかないか、もしくは本気で怒っていたでしょう。

 そして言うべきことは言ったとばかりにフランクは関係者の中へと戻っていきました。

「では最後に元ランカスター子爵家のメイド、ヘレンよ」
「はい」

 そう言ってヘレンが進み出ます。それを見てウィルとランカスター子爵は露骨に敵意の視線を向けます。
 そんな中、ヘレンはこわごわといった様子で口を開きました。

「私はランカスター子爵家に仕えていたヘレンと申します。あの日、私は確かにウィル様に媚薬を用意するよう命じられました。それから、ウィル様の方からシエラ様を部屋に誘ったのも確かにこの眼で見ました」
「そ、そんなことはしない!」

 ヘレンの言葉をかき消すようにウィルは叫びます。
 ヘレンは一瞬びくっとしましたが、彼とは距離があるせいか再び口を開きました。

「それから先ほど私の勤務態度が悪かったという話がありましたが、それも嘘です。そもそも勤務態度が悪かったら媚薬の用意のような重大なことを命じられる訳がありません」
「だからそれが嘘だと言っているんだ!」
「ですが私は特に誰かに呼び出されて注意を受けたようなこともありません」
「う、嘘だ!」
「嘘だと言うのであれば具体的な日時などを出してもらえないでしょうか?」

 ヘレンが委縮しそうになっているので、私は慌てて助け船を出します。
 するとウィルは助けを求めるようにジェームズを見ました。

「おい、ジェームズ」
「は、はい。私が彼女を呼び出したのは……」
「待って下さい。それだけ何度も叱責されたのなら他の方も答えられますよね?」

 そう言って私は他にランカスター子爵家から証人として呼び寄せられた人々を見ます。恐らくジェームズは詳細な答弁を用意していますが、他の方々はそこまで用意していないはずです。案の定、

「いや、あまり……」
「詳しくは覚えていません」

 と、たどたどしい答えになります。
 この答え具合を見れば傍聴の方々は、向こうの言っていることに信ぴょう性がないことは分かるのではないでしょうか。

「という具合でジェームズ以外の者は詳しく覚えていません。これではランカスター家の証言が信用に足る物とは思えませんがいかがでしょうか」

 私は相手ではなく見学席に問いかけると、頷く姿がちらほら見られました。

あなたにおすすめの小説

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

との
恋愛
「取り替えっこしようね」 またいつもの妹の我儘がはじまりました。 自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界! 逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。 幸せ掴みます。 筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。 「可愛いは正義なの!」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済み R15は念の為・・

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。 卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。 二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。 私は何もしていないのに。 そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。 ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。 お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。 ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

「エリアーナ? ああ、あの穀潰しか」と蔑んだ元婚約者へ。今、私は氷帝陛下の隣で大陸一の幸せを掴んでいます。

椎名シナ
恋愛
「エリアーナ? ああ、あの穀潰しか」 ーーかつて私、エリアーナ・フォン・クライネルは、婚約者であったクラウヴェルト王国第一王子アルフォンスにそう蔑まれ、偽りの聖女マリアベルの奸計によって全てを奪われ、追放されましたわ。ええ、ええ、あの時の絶望と屈辱、今でも鮮明に覚えていますとも。 ですが、ご心配なく。そんな私を拾い上げ、その凍てつくような瞳の奥に熱い情熱を秘めた隣国ヴァルエンデ帝国の若き皇帝、カイザー陛下が「お前こそが、我が探し求めた唯一無二の宝だ」と、それはもう、息もできないほどの熱烈な求愛と、とろけるような溺愛で私を包み込んでくださっているのですもの。 今ではヴァルエンデ帝国の皇后として、かつて「無能」と罵られた私の知識と才能は大陸全土を驚かせ、帝国にかつてない繁栄をもたらしていますのよ。あら、風の噂では、私を捨てたクラウヴェルト王国は、偽聖女の力が消え失せ、今や滅亡寸前だとか? 「エリアーナさえいれば」ですって? これは、どん底に突き落とされた令嬢が、絶対的な権力と愛を手に入れ、かつて自分を見下した愚か者たちに華麗なる鉄槌を下し、大陸一の幸せを掴み取る、痛快極まりない逆転ざまぁ&極甘溺愛ストーリー。 さあ、元婚約者のアルフォンス様? 私の「穀潰し」ぶりが、どれほどのものだったか、その目でとくとご覧にいれますわ。もっとも、今のあなたに、その資格があるのかしら? ――え? ヴァルエンデ帝国からの公式声明? 「エリアーナ皇女殿下のご生誕を祝福し、クラウヴェルト王国には『適切な対応』を求める」ですって……?