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アシュリー視点 不安
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それから私は様々なことから解放されて自由な日々を送っていた。
数日の間はとても楽しかったが、何日か経つと次第に不安になってきた。世の中には何かすべきことがないと落ち着かないという人がいると聞いたことはあるが、どうやら私はそちら側の人間らしい。
加えて、カールが今頃どうしているのかも気になる。
カール本人が心配という訳ではないが、暴走した彼がこの後何をするか。また、彼にとりいった伯爵やカミラが何を企んでいるのか。それを考えているとどんどん不安になってくる。とはいえ、婚約破棄された私はもはや王家とは何の関係もない一介の貴族令嬢である。そんな私に出来ることはない。
そしてそんな私に気を遣ってくれたのか、友達は頻繁にお茶に誘ってくれた。
「……大丈夫、アシュリー?」
「あ、ご、ごめん」
ルーミアに声を掛けられて、そう言えば今はお茶会だったことを思い出す。
不安なのは仕方ないけど、これでは誘ってくれた友達にも失礼だ。
私に声を掛けたルーミアは苦笑する。
「もしかしてまた王宮の心配をしてる?」
「ごめん、せっかく声を掛けてくれたのに」
「やっぱりアシュリーはそういうところ真面目なんだね」
シルヴィアも苦笑する。
するとエイミーが言った。
「そう言えば、余計な心配をかけたくないと黙っていましたが、殿下関連で気がかりな噂を聞きましたわ」
「気がかりな噂?」
「何でも、以前まで殿下にべったりだったカミラ嬢が伯爵家の屋敷に行ったきり出てこないとか」
「それはおかしいわね」
ルーミアとシルヴィアが首をかしげる。
確かにそうだ。伯爵はカミラをカールと結ばせて、それで殿下に言うことを聞かせる作戦だったのではないか?
殿下は今は普通に王宮にいると聞いている。
何をしているかまでは聞いていないが、きっと伯爵と手を組んでろくでもないことをしているのだろう。それなのになぜカミラが彼の側にいないのだろうか。
考えられるのはカミラと殿下が仲違いしたパターンだが、カールのことだからカミラと仲違いしたらその勢いで伯爵も遠ざけるのではないか。
「殿下は今も伯爵と仲はいいの?」
「仲がいいかは知らないけど、伯爵に有利な命令ばかり出そうとしてるらしいけど」
「ということはもしかして」
もしかして、カミラは本当にカールのことが好きだっただけで、伯爵の陰謀に気づいてしまったために軟禁されているのではないか。
そして伯爵はカミラの解放を条件にカールに言うことを聞かせているのではないか。
「あの、もしかしてカミラは伯爵に軟禁されているんじゃない!?」
「え、どういうこと?」
「そう考えれば全て辻褄が合う!」
そう言って私は今しがた考えたことを話す。
私の推測に三人は少しの間首をかしげていたが、やがてシルヴィアが言う。
「実は私の婚約者の姉が、ヒューム家のご子息に嫁いでいますの。ですからその伝手で様子を聞いてみますわ」
「うん、ありがとう」
「やっぱりアシュリーはゆっくり休んでいるのは似合わないね」
そんな私を見てルーミアは首をかしげる。
「せっかく気を遣ってくれたのにごめんね」
「いいよ、アシュリーがその方が落ち着くなら私たちはそれで」
そう言って三人は顔を見合わせる。
それを見て改めて私はいい友人を持ったな、と思うのだった。
数日の間はとても楽しかったが、何日か経つと次第に不安になってきた。世の中には何かすべきことがないと落ち着かないという人がいると聞いたことはあるが、どうやら私はそちら側の人間らしい。
加えて、カールが今頃どうしているのかも気になる。
カール本人が心配という訳ではないが、暴走した彼がこの後何をするか。また、彼にとりいった伯爵やカミラが何を企んでいるのか。それを考えているとどんどん不安になってくる。とはいえ、婚約破棄された私はもはや王家とは何の関係もない一介の貴族令嬢である。そんな私に出来ることはない。
そしてそんな私に気を遣ってくれたのか、友達は頻繁にお茶に誘ってくれた。
「……大丈夫、アシュリー?」
「あ、ご、ごめん」
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不安なのは仕方ないけど、これでは誘ってくれた友達にも失礼だ。
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「もしかしてまた王宮の心配をしてる?」
「ごめん、せっかく声を掛けてくれたのに」
「やっぱりアシュリーはそういうところ真面目なんだね」
シルヴィアも苦笑する。
するとエイミーが言った。
「そう言えば、余計な心配をかけたくないと黙っていましたが、殿下関連で気がかりな噂を聞きましたわ」
「気がかりな噂?」
「何でも、以前まで殿下にべったりだったカミラ嬢が伯爵家の屋敷に行ったきり出てこないとか」
「それはおかしいわね」
ルーミアとシルヴィアが首をかしげる。
確かにそうだ。伯爵はカミラをカールと結ばせて、それで殿下に言うことを聞かせる作戦だったのではないか?
殿下は今は普通に王宮にいると聞いている。
何をしているかまでは聞いていないが、きっと伯爵と手を組んでろくでもないことをしているのだろう。それなのになぜカミラが彼の側にいないのだろうか。
考えられるのはカミラと殿下が仲違いしたパターンだが、カールのことだからカミラと仲違いしたらその勢いで伯爵も遠ざけるのではないか。
「殿下は今も伯爵と仲はいいの?」
「仲がいいかは知らないけど、伯爵に有利な命令ばかり出そうとしてるらしいけど」
「ということはもしかして」
もしかして、カミラは本当にカールのことが好きだっただけで、伯爵の陰謀に気づいてしまったために軟禁されているのではないか。
そして伯爵はカミラの解放を条件にカールに言うことを聞かせているのではないか。
「あの、もしかしてカミラは伯爵に軟禁されているんじゃない!?」
「え、どういうこと?」
「そう考えれば全て辻褄が合う!」
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「実は私の婚約者の姉が、ヒューム家のご子息に嫁いでいますの。ですからその伝手で様子を聞いてみますわ」
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「やっぱりアシュリーはゆっくり休んでいるのは似合わないね」
そんな私を見てルーミアは首をかしげる。
「せっかく気を遣ってくれたのにごめんね」
「いいよ、アシュリーがその方が落ち着くなら私たちはそれで」
そう言って三人は顔を見合わせる。
それを見て改めて私はいい友人を持ったな、と思うのだった。
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