5 / 5
第一章 転生悪役令嬢は冷酷だったはずの王子に溺愛されています
第四話 騎士団長は女嫌いのはずでは?
しおりを挟む
「はぁ……。私の推しカプ、どこに行ったのよ……」
豪華な天蓋付きベッドの上で、私は特大のため息をつきました。 前世の私は、このゲーム『聖女の祈りと、銀の誓い』の熱烈なファンでした。特に、氷のように冷徹なアルフレッド殿下が、清らかな聖女マリアちゃんにだけ心を開いていく過程が大好きで、二人の絡みを見るためだけに何度周回プレイをしたことか。
(リナリアを処刑する時のあの冷酷な瞳……あれこそがアルフレッド殿下の『美学』だったのに!)
それがどうでしょう。今、目の前にいるのは、私の指先に触れるだけで顔を赤らめたり、他の男と話しただけで国を滅ぼしかねない勢いで嫉妬したりする、キャラ崩壊したヤンデレ王子。 私がリナリアに入り込んでしまったせいで、聖女マリアちゃんとの尊い絡みが見られないどころか、マリアちゃんの存在自体が消されかけている。
「推しの幸せが見られないなんて、転生した意味がないじゃない……。おまけに私の命も危ういし」
こうなったら、最終手段です。 攻略対象の一人、騎士団長カシウス・ディードリヒ。 彼は極度の「女嫌い」で、ゲーム内ではリナリアがどれだけ色仕掛けをしても「不潔だ、寄るな」と一蹴し、最終的に彼女を捕縛する役回りでした。 でも、聖女マリアにだけは「忠犬」のように懐くという、ギャップ萌えキャラだったはず。
(カシウス様なら、今の『バグったアルフレッド様』から私を引き離してくれる。彼に嫌われて『こんな女、国外追放すべきだ』と進言してもらえれば、私の勝ちよ!)
決意を固めた私は、翌日、重いドレスを脱ぎ捨てて、動きやすい(といってもお嬢様風の)外出着に身を包みました。
第五話:鋼鉄の騎士団長なら、私を嫌ってくれるはず!
王宮の端にある、騎士団演習場。 そこには、むせ返るような汗の臭いと、木剣がぶつかり合う鈍い音が響いていました。
「……いたわ。鋼鉄の壁」
演習場の中央で、一際鋭い覇気を放ちながら部下をしごいている男。 短く刈り上げられた銀髪に、傷跡のある精悍な顔立ち。カシウス様です。 彼は女性が近づくだけで露骨に不快感を示すため、この演習場は実質「女人禁制」の聖域。
(よし、ここで思いっきり『嫌な女』を演じて、彼に軽蔑されるわ!)
私はわざとらしく扇子を広げ、護衛を振り切って演習場のど真ん中へと突き進みました。
「あら、むさ苦しいところね。カシウス団長、お忙しいかしら?」
演習が止まり、騎士たちの視線が突き刺さります。 カシウス様がゆっくりと振り返りました。その瞳は、まさに「汚物を見るような目」。
(そう、それよ! その目が欲しかったの!)
「……リナリア様か。ここは貴女のような令嬢が来る場所ではない。速やかに立ち去れ」
「ふふっ、冷たいのね。殿下が私を構いすぎて退屈なんですもの。少しは私を楽しませてくださらない?」
私はカシウス様にわざと近づき、彼の鍛え上げられた胸板に指を這わせようとしました。 ゲームのリナリアなら、ここで彼に激怒され、突き飛ばされるはず。
ところが。
「……貴女は、何をしている?」
カシウス様は私の手首を掴みましたが、そこには嫌悪感というより、困惑……あるいは「観察」するような色がありました。
「えっ……? い、いやだわ、突き放さないの?」
「…………。殿下が貴女に固執する理由が分からなかったが。……貴女、瞳の奥が死んでいるな」
「は!?」
予想外の指摘に、私の悪役令嬢スマイルが凍りつきました。
「……怯え、逃げ場を探し、絶望している。……今の殿下に愛されることが、それほど苦痛か」
(ちょ、ちょっと待って! あなた、女嫌いの無愛想キャラでしょ!? なんでそんなに察しがいいのよ!?)
カシウス様は私の手首を離さず、低く呟きました。
「……いいだろう。貴女が殿下の手から逃れたいというなら、俺が稽古をつけてやる。自分の身を守る術がないから、そうやって震えているのだろう」
「……え、ええええええ!? 稽古!? 追放じゃなくて!?」
私の作戦が根底から崩れ始めたその時。 背後から、演習場全体の空気が一瞬で凍りつくような、凄まじい「殺気」が押し寄せました。
「——カシウス。私のリナリアに、その汚い手で触れる許可をいつ出した?」
振り返ると、そこには抜剣したアルフレッド様が立っていました。 その瞳は、もはや人間のものではありません。 「あ……あああ……」 私は膝から崩れ落ちそうになりました。
カシウス様は、私をかばうように前に出ると、あろうことか王子に向かって剣を構えたのです。
「殿下。この令嬢は、貴殿の歪んだ愛に悲鳴を上げておられる。……騎士として、これを見過ごすわけにはいきません」
(違うのーーーー!! 私が欲しかったのは追放なの!! 王子と騎士団長の全面戦争じゃないのよーーーー!!)
私のスローライフへの道は、さらに血なまぐさい方向へと猛スピードで加速し始めたのでした。
豪華な天蓋付きベッドの上で、私は特大のため息をつきました。 前世の私は、このゲーム『聖女の祈りと、銀の誓い』の熱烈なファンでした。特に、氷のように冷徹なアルフレッド殿下が、清らかな聖女マリアちゃんにだけ心を開いていく過程が大好きで、二人の絡みを見るためだけに何度周回プレイをしたことか。
(リナリアを処刑する時のあの冷酷な瞳……あれこそがアルフレッド殿下の『美学』だったのに!)
それがどうでしょう。今、目の前にいるのは、私の指先に触れるだけで顔を赤らめたり、他の男と話しただけで国を滅ぼしかねない勢いで嫉妬したりする、キャラ崩壊したヤンデレ王子。 私がリナリアに入り込んでしまったせいで、聖女マリアちゃんとの尊い絡みが見られないどころか、マリアちゃんの存在自体が消されかけている。
「推しの幸せが見られないなんて、転生した意味がないじゃない……。おまけに私の命も危ういし」
こうなったら、最終手段です。 攻略対象の一人、騎士団長カシウス・ディードリヒ。 彼は極度の「女嫌い」で、ゲーム内ではリナリアがどれだけ色仕掛けをしても「不潔だ、寄るな」と一蹴し、最終的に彼女を捕縛する役回りでした。 でも、聖女マリアにだけは「忠犬」のように懐くという、ギャップ萌えキャラだったはず。
(カシウス様なら、今の『バグったアルフレッド様』から私を引き離してくれる。彼に嫌われて『こんな女、国外追放すべきだ』と進言してもらえれば、私の勝ちよ!)
決意を固めた私は、翌日、重いドレスを脱ぎ捨てて、動きやすい(といってもお嬢様風の)外出着に身を包みました。
第五話:鋼鉄の騎士団長なら、私を嫌ってくれるはず!
王宮の端にある、騎士団演習場。 そこには、むせ返るような汗の臭いと、木剣がぶつかり合う鈍い音が響いていました。
「……いたわ。鋼鉄の壁」
演習場の中央で、一際鋭い覇気を放ちながら部下をしごいている男。 短く刈り上げられた銀髪に、傷跡のある精悍な顔立ち。カシウス様です。 彼は女性が近づくだけで露骨に不快感を示すため、この演習場は実質「女人禁制」の聖域。
(よし、ここで思いっきり『嫌な女』を演じて、彼に軽蔑されるわ!)
私はわざとらしく扇子を広げ、護衛を振り切って演習場のど真ん中へと突き進みました。
「あら、むさ苦しいところね。カシウス団長、お忙しいかしら?」
演習が止まり、騎士たちの視線が突き刺さります。 カシウス様がゆっくりと振り返りました。その瞳は、まさに「汚物を見るような目」。
(そう、それよ! その目が欲しかったの!)
「……リナリア様か。ここは貴女のような令嬢が来る場所ではない。速やかに立ち去れ」
「ふふっ、冷たいのね。殿下が私を構いすぎて退屈なんですもの。少しは私を楽しませてくださらない?」
私はカシウス様にわざと近づき、彼の鍛え上げられた胸板に指を這わせようとしました。 ゲームのリナリアなら、ここで彼に激怒され、突き飛ばされるはず。
ところが。
「……貴女は、何をしている?」
カシウス様は私の手首を掴みましたが、そこには嫌悪感というより、困惑……あるいは「観察」するような色がありました。
「えっ……? い、いやだわ、突き放さないの?」
「…………。殿下が貴女に固執する理由が分からなかったが。……貴女、瞳の奥が死んでいるな」
「は!?」
予想外の指摘に、私の悪役令嬢スマイルが凍りつきました。
「……怯え、逃げ場を探し、絶望している。……今の殿下に愛されることが、それほど苦痛か」
(ちょ、ちょっと待って! あなた、女嫌いの無愛想キャラでしょ!? なんでそんなに察しがいいのよ!?)
カシウス様は私の手首を離さず、低く呟きました。
「……いいだろう。貴女が殿下の手から逃れたいというなら、俺が稽古をつけてやる。自分の身を守る術がないから、そうやって震えているのだろう」
「……え、ええええええ!? 稽古!? 追放じゃなくて!?」
私の作戦が根底から崩れ始めたその時。 背後から、演習場全体の空気が一瞬で凍りつくような、凄まじい「殺気」が押し寄せました。
「——カシウス。私のリナリアに、その汚い手で触れる許可をいつ出した?」
振り返ると、そこには抜剣したアルフレッド様が立っていました。 その瞳は、もはや人間のものではありません。 「あ……あああ……」 私は膝から崩れ落ちそうになりました。
カシウス様は、私をかばうように前に出ると、あろうことか王子に向かって剣を構えたのです。
「殿下。この令嬢は、貴殿の歪んだ愛に悲鳴を上げておられる。……騎士として、これを見過ごすわけにはいきません」
(違うのーーーー!! 私が欲しかったのは追放なの!! 王子と騎士団長の全面戦争じゃないのよーーーー!!)
私のスローライフへの道は、さらに血なまぐさい方向へと猛スピードで加速し始めたのでした。
4
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。
aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。
ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・
4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。
それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、
生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり
どんどんヤンデレ男になっていき・・・・
ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡
何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
旦那様の溺愛が常軌を逸している件
矢野りと
恋愛
貴族には珍しく恋愛を経てから、私と旦那様と結ばれた。
順風満帆な結婚生活なのだけれど悩みもある。
――それは旦那様からの溺愛が過ぎること!
贅沢すぎる悩みまたは惚気だと思われるかもしれない。けれど、私、本気で困ってます!
今日も誰かが殺られそうなので……。
愛が激重の旦那様と私の攻防と、それに巻き込まれる周囲の人達。愛あり笑いあり訳ありの、……重く切ないお話です。
※軽い出だしですがラブコメではありません。⚠重めのお話も入ります。
※お話があわない時はそっと閉じてくださいませ。
※完結後はネタバレありです。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる