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4. お礼
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屋敷へと続いている舗装された道を歩いていると、ナターシャはエドとキャリーが自分のかなり後ろを歩いているのに気が付いた。
「ねぇ、なんで二人共ゆっくり歩いてるの?」
「ゆっくりじゃねぇよ。見ろよ、屋敷の扉の前で出迎えが待ってる。あれは使用人だろ?さすがにここ、公爵家と言っていたし、ナターシャの身分を明かさないわけにはいかないだろう。それには、俺達が仲良く並んで歩いていたら侯爵家の躾がなってないと言われるのはいけないからな。ちゃんとしてるだけだ。」
「そうですね、ナターシャ様。私達は、席には座らず立って待たせてもらいます。」
「え!?」
(…確かにそうね。エドもキャリーもさすがだわ。こういう所はしっかりしているもの。だからお父様も連れていけと言って下さったのでしょうけれど。)
ナターシャは、身分の壁はこういう時煩わしいと思ったし少し寂しいとも思ったが、本来貴族と使用人とはそういうものだ。それが出来ていないが為に、侯爵家が悪く言われてはいけないと背筋を伸ばし、自分も侯爵家の令嬢の仮面を被らなければと思い直した。
☆★
屋敷の玄関扉の前で、白髪を後ろになでつけた執事が恭しく挨拶をしてくれた。
そしてダンスパーティーの会場かと思うような縦横に奥行きのある、吹き抜けの玄関ホールを抜け、応接室へと案内された。
「こちらです。お連れしました。」
「どうぞ、お入りになって。」
中から婦人の声がして、執事が扉を開けてくれる。
と、これまた目も眩むような調度品に囲まれた応接室で、三人は余裕に座れる大きさの皮張りのソファに座って優雅に紅茶を飲んでいる、黒い髪を真っ直ぐに伸ばした、昨日も思ったがとても美しい貴婦人がいた。
ナターシャの家も、侯爵家であるから調度品はなかなかのものであったが、落ち着いた雰囲気で最低限のものしか置いていないのだ。
だが、ここは金色を基調とした家具や花瓶などがこれでもかと置かれていた。
(さすが公爵家…!それとも、国王の妹君だからなのかしら。)
ナターシャはそんな事を思いながら挨拶をし始める。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます。なにぶん急ではありましたので、このような服装で申し訳ありません。私は…」
「あぁ、いいのよ。そんなに硬くならなくて。さぁ、こっちへ来て座ってちょうだい。」
早く早く、というような感じで手招きされ、畏れ多くも対面に座る事となった。
「ごめんなさいね、来てもらって。でも本当に助かったのよ。昨日はね、王宮に泊まって朝食を食べて、帰る途中だったの。それがあんな事になったでしょう?いつもなら御者は二人なんだけれど、たまたま一人しかいなくて。改めてお礼を言わせてちょうだい。ありがとう。」
「そ、そんな!先ほども申し上げました通り、ハンカチを大事に使っていただけたらそれで良かったのですのに…。」
「あぁ、その話もしたいけれどね、それはおいおいね。取りあえず自己紹介からしましょう。私はイェレナ=アレクサンダーよ。」
「は、はい。私は、ナターシャ=テイラーと申します。」
「ナターシャね、素敵な名前だわ。」
「あ、ありがとうございます…。」
「それでね、私思ったの。あなたのような心優しいナターシャが私の息子と結婚してくれたらいいなって。うちの息子はね、ひいき目に見なくてもとても整った顔立ちだと思うわ。それに、性格もそれなりに悪くはないわよ。今は騎士団の副長を務めているし。だからねお礼と言ってはなんだけれど、うちの息子と結婚しなさいな。」
「!?」
(な、なんですって-!?)
イェレナは、良い考えでしょう?とでも言うようにニッコリと笑ってナターシャを見た。
ナターシャはいきなりの事で、言葉を発したいのになかなか繋げなかった。
「ねぇ、なんで二人共ゆっくり歩いてるの?」
「ゆっくりじゃねぇよ。見ろよ、屋敷の扉の前で出迎えが待ってる。あれは使用人だろ?さすがにここ、公爵家と言っていたし、ナターシャの身分を明かさないわけにはいかないだろう。それには、俺達が仲良く並んで歩いていたら侯爵家の躾がなってないと言われるのはいけないからな。ちゃんとしてるだけだ。」
「そうですね、ナターシャ様。私達は、席には座らず立って待たせてもらいます。」
「え!?」
(…確かにそうね。エドもキャリーもさすがだわ。こういう所はしっかりしているもの。だからお父様も連れていけと言って下さったのでしょうけれど。)
ナターシャは、身分の壁はこういう時煩わしいと思ったし少し寂しいとも思ったが、本来貴族と使用人とはそういうものだ。それが出来ていないが為に、侯爵家が悪く言われてはいけないと背筋を伸ばし、自分も侯爵家の令嬢の仮面を被らなければと思い直した。
☆★
屋敷の玄関扉の前で、白髪を後ろになでつけた執事が恭しく挨拶をしてくれた。
そしてダンスパーティーの会場かと思うような縦横に奥行きのある、吹き抜けの玄関ホールを抜け、応接室へと案内された。
「こちらです。お連れしました。」
「どうぞ、お入りになって。」
中から婦人の声がして、執事が扉を開けてくれる。
と、これまた目も眩むような調度品に囲まれた応接室で、三人は余裕に座れる大きさの皮張りのソファに座って優雅に紅茶を飲んでいる、黒い髪を真っ直ぐに伸ばした、昨日も思ったがとても美しい貴婦人がいた。
ナターシャの家も、侯爵家であるから調度品はなかなかのものであったが、落ち着いた雰囲気で最低限のものしか置いていないのだ。
だが、ここは金色を基調とした家具や花瓶などがこれでもかと置かれていた。
(さすが公爵家…!それとも、国王の妹君だからなのかしら。)
ナターシャはそんな事を思いながら挨拶をし始める。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます。なにぶん急ではありましたので、このような服装で申し訳ありません。私は…」
「あぁ、いいのよ。そんなに硬くならなくて。さぁ、こっちへ来て座ってちょうだい。」
早く早く、というような感じで手招きされ、畏れ多くも対面に座る事となった。
「ごめんなさいね、来てもらって。でも本当に助かったのよ。昨日はね、王宮に泊まって朝食を食べて、帰る途中だったの。それがあんな事になったでしょう?いつもなら御者は二人なんだけれど、たまたま一人しかいなくて。改めてお礼を言わせてちょうだい。ありがとう。」
「そ、そんな!先ほども申し上げました通り、ハンカチを大事に使っていただけたらそれで良かったのですのに…。」
「あぁ、その話もしたいけれどね、それはおいおいね。取りあえず自己紹介からしましょう。私はイェレナ=アレクサンダーよ。」
「は、はい。私は、ナターシャ=テイラーと申します。」
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「あ、ありがとうございます…。」
「それでね、私思ったの。あなたのような心優しいナターシャが私の息子と結婚してくれたらいいなって。うちの息子はね、ひいき目に見なくてもとても整った顔立ちだと思うわ。それに、性格もそれなりに悪くはないわよ。今は騎士団の副長を務めているし。だからねお礼と言ってはなんだけれど、うちの息子と結婚しなさいな。」
「!?」
(な、なんですって-!?)
イェレナは、良い考えでしょう?とでも言うようにニッコリと笑ってナターシャを見た。
ナターシャはいきなりの事で、言葉を発したいのになかなか繋げなかった。
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