【完結】『お姉様に似合うから譲るわ。』そう言う妹は、私に婚約者まで譲ってくれました。

5. お父様からの提案

　次の日。
　朝食を食べてすぐにお父様に呼び出されました。

「お父様。なんでしょうか。」

「昨夜キャシーが、ルシウス様との結婚をサーラに譲ると言った。そうなのか？」

「ええ。昨日キャシーから『お姉様のがお似合いだ』と言われました。キャシーは、他に気になる人でもいるのでしょうか？」

「うーん…そうなのか…。」

「でも、ボールドウィン家を継ぐ為の勉強を、キャシーはしてません。これからしてくれるのでしょうか？」

「まぁ、サーラがルシウス様と結婚するならそうなるだろうな。ルシウス様はディクソン伯爵家の跡取りはであるのだから。でも、サーラはどうなんだ？サーラの好きにしていいんだぞ？嫌だったら止めておこう。」

「私は、ボールドウィン家をキャシーが継ぐ気があるのなら嫁いでも構いません。けれど、勉強しないのなら、ボールドウィン家を継ぐ者がいなくなってしまいますから無理ですよね。」

「それはどうとでもなる。サーラとルシウス様が結婚するのなら、いつか生んだ子どもに継いでもらうとかな。それをすると、サーラが子どもを二人以上授からないといけないが。ディクソン伯爵家を継ぐ者も必要だからな。キャシーもどこかに嫁いでしまった場合、サーラの子ではなくそちらとの子どもをという方法もあるが、キャシーが勤勉じゃないからなぁ。その子にしっかりと勉強を教えられるかが心配だ。」

　まぁ不安に思いますわよね…。

「それにな、キャシーが嫁ぐ相手となるとあまり爵位を落としてもうちの箔がつかないだろう？ディクソン伯爵とは昔の知り合いだからいいと思ったんだがなぁ…。逆に、婿入りしてもらう令息なんてそれこそ性格の定まらん幼い頃から婚約関係を結んでいる家も増えてきてめぼしい家柄の令息は結構減ってきているだろう。まぁ、だからサーラの相手も苦戦しているわけだが。まぁ、好き同士なら平民になる覚悟があれば、それも悪くはないが。」

　そうなのですよねぇ…。
お父様は私の結婚相手を、領主である自分が決める事を戸惑っていたのよね。
だから私が十五歳になった頃から、『自分から令息に声を掛けに行って自分で結婚相手を見つけてこい』という無理難題を私に言ってきたのよね。

　周辺諸国のような、学校と呼ばれるものがこの国にもあれば良かったのに。

　同じ学年の子達が毎日顔を合わせてお互いに切磋琢磨出来るような、そんな機関があれば、令息とも簡単に話が出来るのに。

　ガーデンパーティーや、ダンスパーティーで自ら令息に話し掛けて知り合いになって、結婚までこぎつけるなんて私には無理だわ…。
積極的な性格なら、自分からぐいぐいと行けるのでしょうけれど…。

　お父様は、私の意思を尊重すると言ってくれていたけれど、有難いけれど難しいのですよね。しかも、相手の家柄も見つつ交流を深めていくなんて…。


「ではお父様さえよければ、キャシーにもう一度聞いて、その答えによって決めてもよろしいですか。」

「そうだな。ディクソン伯爵にも話さないといけないからな。済まないが早急に教えてくれると助かる。」

「わかりました。」

　そう言って、話を終え、私は執務室を出た。

　将来を左右する大事な事だから、キャシーにもう一度確認してみようかしらね。