【完結】『お姉様に似合うから譲るわ。』そう言う妹は、私に婚約者まで譲ってくれました。

まりぃべる

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6. キャシーの部屋

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 お父様との話を終え、キャシーと話をしようと彼女の部屋へ向かった。


「キャシー?ちょっといいかしら?」

「なぁに?お姉様。」

 私は、ノックして部屋へ入って行くと、キャシーは窓際でロッキングチェアに座りながら縫い物をしていた。

 キャシーは、手先が器用でよく、縫いぐるみを作っている。
部屋にも溢れんばかりにいろいろなサイズの縫いぐるみがある。
置けないものは、孤児院に寄付したりもしていた。これがかなりの好評だ。

 それに、販売もしている。

 うちボールドウィン伯爵家と取り引きのある衣裳屋がキャシーの部屋にドレスの採寸などをしに来た時にそれを一目見て『店頭に置きたい』と言われ、部屋に置いておくだけというのもと思って小さい手に乗るほどの熊と兎を二体譲ったらしい。

 すると店に来たお客も、店頭に飾ってあったぬいぐるみを見て売って欲しいという声があったのだとか。
それからはお父様の承諾を得て月に数体、作って販売もしている。

 今日は、手に乗るほどの熊のぬいぐるみを縫っていた。

「キャシー、忙しいのにごめんなさいね。」

「いいえ、大丈夫ですわお姉様。なんでしょうか。」

「昨日お父様が言っていた、ルシウス様の事です。キャシー、本当にいいの?ルシウス様は、とても美丈夫と評判であるし、いい方なのではないかしら?」

「お姉様。だから昨日も言いましたでしょう?お姉様のがお似合いだと。私は、ルシウス様とは結婚いたしませんわ。」

「そう。意思は固そうね。じゃぁボールドウィン家を継いでくれるの?」

「お父様から聞きました。お姉様がどこかへ嫁いだ時は、ボールドウィン家の後継をどうするのかと。自分でも分かっているの、領主は向いてないと。だから、お姉様に子どもが出来たら、跡取りとしてお願いしたいわ。もちろん、私が嫁げたとしたら、私の子どもでもいいのだけれど、私、まだ結婚したくないのよ。ぬいぐるみを縫うの、結婚したらやめないといけなくなるかもしれないでしょう?まだ続けたいわ。」

「そうだったの…。じゃぁ好きな人がいるわけでもないのね。」

「いないわよ。さぁ、この話は終わりにしてもいいでしょう?お姉様、ルシウス様と結婚したらどう?お姉様は自分から相手を見つけるなんて無理じゃない。ま、合わない人だったなら断ればいいと思うし。だってまだ正式な打診ではないのでしょう?」

 よく分かってるわね…。確かに自分で相手を見つけるなんて、難しいのよ。

「…じゃあ、私がルシウス様と結婚してもいいのね?」

「何度も確認しなくても大丈夫!お幸せにね、お姉様!」

 そう言うと、キャシーは本当に話はおしまいとでも言うように、手元のぬいぐるみをまた縫い始めた。

 私も、キャシーの部屋を出て、今日の調べ物をするために書庫へ向かった。
途中、侍女のタバッサに、お父様にルシウス様との婚約の話を進めるようお願いする言付けを頼んだ。
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