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10. 会話
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あれは、王宮のガーデンパーティーの時。
ーーーー
ブレンダとベンチであの後も話していると、銀色の髪の男性が一人でこちらに向かって来るのが見えた。
私達が居る目の前の石畳の道を奥へと進むと、ぐるりと一周して戻って来れるはず。でも、何故一人なのか疑問だった。
ブレンダと話していたけれど、近くまで来たので話を止めた。
肩までの長さの銀色の髪が、サラサラと風に靡いてなんだか見入ってしまう程。
「誰かと思ったら、あなただったのね。」
ふいにブレンダが言った。
もう、その男性は話が出来るほど近くにいた。
「あぁ、ごめんよ。驚かせてしまったかな?僕は、この奥に用があってね。温室へ行くんだ。」
「温室?」
私は、思わず口を挟んでしまった。この奥に温室があるなんて知らなかったから。
「お、君も興味があるのかい?この国では普段育たないような植物が咲いているんだ。久々に来たからね。もちろん、国王様には許可を頂いているよ。」
「でも、何故今なのよ?」
「人が少ないからさ。普段だったら、王宮に申請しないといけないだろう?そして、予約が空いているかとか。ちょっと面倒でね。なかなか来られないからね、ついでにお願いしてみたんだ。丁度良く人込みから抜けられるし。」
「そう。あなたこういう催し苦手だものね。」
「まぁね。ごめんね、お邪魔してしまったかな。あ、そちらの君もね。そういえばそろそろ戻った方がいいんじゃない?さっき、新作のケーキが出てきてたよ。」
「大変!なくなっちゃうわ!サーラ、そろそろ戻りましょう!」
ーーーー
そこで会った人が、ルシウス様だったなんて!
確かに銀髪ではあったけれど。
彼は、辺境の地に普段いるからパーティーなどであまり顔を見た事がなかった。
来たとしても、男性の、しかも年上がいるテーブルの所まで行かないから、貴族の名前と領地の特産品はしっかりと覚えていても、顔と一致させる事は難しかった。
「ここの庭も、王宮に劣らず綺麗だね。よく手入れされている。」
そうだったわ!今は、ルシウス様に庭の案内をしている途中だった。
「…ありがとうございます。温室には、無事に行けたのですか?」
「ああ。気になっていたものがあってね。参考になった。うちのディクソン領は北にあって寒いからね。温室があると植物も良く育つから機会があるときは見せてもらってるんだ。」
「そうでしたの。」
「サーラ嬢。僕は、ディクソン領を継がないといけないんだ。あそこは辺境の地でね。寒さも厳しい。それでも、どうだろう?サーラ嬢、僕と結婚してくれるかい?」
「ええと…。」
「…実は、あのガーデンパーティーで会った日から君の、凛とした佇まいが目に焼き付いて離れなくて。ブレンダ嬢と仲がいいなんて、よっぽど面倒見がいいんだろうなと思って。彼女、言い方がよくないかもしれないがさばさばとして、男っぽいだろう?人脈はあるけど、ブレンダ嬢は結構気も強い。そんな奴が仲良くしているなんて、きっと心優しいんだなと思ったら、毎日気になってしまっていたんだ。その後に、父上から婚約の話を聞いた時はまだ君だと気づかず迷ったんだけれど。名前を聞いて、もしかしてと思ってね。…あなたで良かった。」
そう、手を頭の後ろにやって髪をがしがしと掻きながら言ったルシウス様。
そしていきなり跪いて、私の方を見て、右手を取った。
「サーラ嬢…いや、サーラ=ボールドウィン様。会って急かもしれないが、結婚して欲しい。君のその柔らかい表情に心癒され、温かい雰囲気に和まされるんだ。笑った顔なんて、周りを和ませる雰囲気はまるで太陽のようだよ。結婚を前提でもいい。前向きに検討してもらえませんか。」
上目づかいで、私の手を取ってそう話すルシウス様は、前回会った時のようにキラキラと輝いて見えた。
「…はい。」
「はー、やった!よかった!」
そう言うと、ルシウス様は立ち上がり、私の手を引いて強く抱きしめた。
でも、それは一瞬で。
「は!あ、や、ごめん!嬉しすぎて…済まな…いや、申し訳ない!!」
と、顔を真っ赤にして謝ってくれるから私は、クスクス笑い出してしまった。
「ふふ。では、奥にある珍しいバラの花を見ませんか?」
その場の雰囲気を変えるように、私は最近咲いた虹色のバラを見せようと歩き出した。
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ブレンダとベンチであの後も話していると、銀色の髪の男性が一人でこちらに向かって来るのが見えた。
私達が居る目の前の石畳の道を奥へと進むと、ぐるりと一周して戻って来れるはず。でも、何故一人なのか疑問だった。
ブレンダと話していたけれど、近くまで来たので話を止めた。
肩までの長さの銀色の髪が、サラサラと風に靡いてなんだか見入ってしまう程。
「誰かと思ったら、あなただったのね。」
ふいにブレンダが言った。
もう、その男性は話が出来るほど近くにいた。
「あぁ、ごめんよ。驚かせてしまったかな?僕は、この奥に用があってね。温室へ行くんだ。」
「温室?」
私は、思わず口を挟んでしまった。この奥に温室があるなんて知らなかったから。
「お、君も興味があるのかい?この国では普段育たないような植物が咲いているんだ。久々に来たからね。もちろん、国王様には許可を頂いているよ。」
「でも、何故今なのよ?」
「人が少ないからさ。普段だったら、王宮に申請しないといけないだろう?そして、予約が空いているかとか。ちょっと面倒でね。なかなか来られないからね、ついでにお願いしてみたんだ。丁度良く人込みから抜けられるし。」
「そう。あなたこういう催し苦手だものね。」
「まぁね。ごめんね、お邪魔してしまったかな。あ、そちらの君もね。そういえばそろそろ戻った方がいいんじゃない?さっき、新作のケーキが出てきてたよ。」
「大変!なくなっちゃうわ!サーラ、そろそろ戻りましょう!」
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そこで会った人が、ルシウス様だったなんて!
確かに銀髪ではあったけれど。
彼は、辺境の地に普段いるからパーティーなどであまり顔を見た事がなかった。
来たとしても、男性の、しかも年上がいるテーブルの所まで行かないから、貴族の名前と領地の特産品はしっかりと覚えていても、顔と一致させる事は難しかった。
「ここの庭も、王宮に劣らず綺麗だね。よく手入れされている。」
そうだったわ!今は、ルシウス様に庭の案内をしている途中だった。
「…ありがとうございます。温室には、無事に行けたのですか?」
「ああ。気になっていたものがあってね。参考になった。うちのディクソン領は北にあって寒いからね。温室があると植物も良く育つから機会があるときは見せてもらってるんだ。」
「そうでしたの。」
「サーラ嬢。僕は、ディクソン領を継がないといけないんだ。あそこは辺境の地でね。寒さも厳しい。それでも、どうだろう?サーラ嬢、僕と結婚してくれるかい?」
「ええと…。」
「…実は、あのガーデンパーティーで会った日から君の、凛とした佇まいが目に焼き付いて離れなくて。ブレンダ嬢と仲がいいなんて、よっぽど面倒見がいいんだろうなと思って。彼女、言い方がよくないかもしれないがさばさばとして、男っぽいだろう?人脈はあるけど、ブレンダ嬢は結構気も強い。そんな奴が仲良くしているなんて、きっと心優しいんだなと思ったら、毎日気になってしまっていたんだ。その後に、父上から婚約の話を聞いた時はまだ君だと気づかず迷ったんだけれど。名前を聞いて、もしかしてと思ってね。…あなたで良かった。」
そう、手を頭の後ろにやって髪をがしがしと掻きながら言ったルシウス様。
そしていきなり跪いて、私の方を見て、右手を取った。
「サーラ嬢…いや、サーラ=ボールドウィン様。会って急かもしれないが、結婚して欲しい。君のその柔らかい表情に心癒され、温かい雰囲気に和まされるんだ。笑った顔なんて、周りを和ませる雰囲気はまるで太陽のようだよ。結婚を前提でもいい。前向きに検討してもらえませんか。」
上目づかいで、私の手を取ってそう話すルシウス様は、前回会った時のようにキラキラと輝いて見えた。
「…はい。」
「はー、やった!よかった!」
そう言うと、ルシウス様は立ち上がり、私の手を引いて強く抱きしめた。
でも、それは一瞬で。
「は!あ、や、ごめん!嬉しすぎて…済まな…いや、申し訳ない!!」
と、顔を真っ赤にして謝ってくれるから私は、クスクス笑い出してしまった。
「ふふ。では、奥にある珍しいバラの花を見ませんか?」
その場の雰囲気を変えるように、私は最近咲いた虹色のバラを見せようと歩き出した。
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