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10. 領主さまのお屋敷へ
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「この道をまっすぐ行くと、大きな館が見えるから、そこだよ。
…でも、本当に行くのかい?止めておいた方が良いよ。私らは不便に思っていないし、大丈夫なんだからね。」
エレナはそうマダリーナに言われたが、鼻息荒く頷き、言葉を返した。
「行ってきます。今までありがとうごさいました。そのご恩が返せるように、伝えてきます!」
「無理しなくて良いんだけどねぇ…私らは特に不満は無いし。
でもエレナの気の済むなら、ね。
美味しい食事を作って待ってるから、気をつけていくんだよ!」
「はい!」
エレナは、昨日ダリアと一緒に沸き湯に入った時に闘志が芽生えた。そして、沸き湯から上がったエレナは、早速マダリーナと、小麦粉などを配り終えて帰って来たアンに自分の気持ちを話した。
自分がいた世界には〝老人ホーム〟という施設があり、年齢が上がって一人では生活が出来なくなった人達のお手伝いをする仕事があると。
そんな仕事をしていた自分には、ここの〝終の山〟とはなんて酷い場所で、そんな場所がある事を認めている領主に考えを改めてもらいたい、と。
だから、領主様に直談判しに行く、と。
「何を言っているのですか!さすがにそんな事をしたら、牢屋に入れられてしまいます!
私達に不満は無いのですから!」
「そうだよ!私達の事を考えて怒ってくれているのは、嬉しいよ。だけれど、そんな事でせっかくある若い命を無駄にしてはいけないよ。
私らは満足しているんだよ。そんな事をしなくても大丈夫なんだよ!」
アンとマダリーナは、エレナの意気込みに対してそのように返した。
皆、領主様は自分達より格上の偉い人だと思っている為、反抗するなどとは全く考えていないからだ。それに、不満は特に無く、このままでいいと思っている。
けれどもエレナは、自分が以前生きていた世界で感じた事と、今この世界で感じた事を思い返し、やはり正した方が皆の為だと思ったのだ。
(自分が言うだけでは変わらないかもしれないけれど、やってみなければ分からないもの!それに、もしかしたら私がこの世界に来たのは、それを正す為に、来たのかもしれないし。
…まぁ、牢屋に入れられたらそれまでだわ。どうせ、あの時に私、きっと一度死んでるんだもの。)
エレナはそのように思ったのだった。
エレナは、マダリーナと別れ、初めての山道を辿っていく。ゆっくりとなだらかな坂道で、領主様の屋敷へと続くからだろう、そちらの道は両側は木々に覆われていたが歩く地面は石畳で舗装されていた。
(あちらの道とは全然違うのね。)
エレナは、そう思いながら進んでいく。
しばらく進むと、やがて道が開けて正面に重厚な門と、それを囲むように幅広い塀が伸びていた。
(わー広い!どこまで続いているのかしら。)
横に伸びた塀は、先が見えない程であった。
正面の門も、エレナの背丈よりも縦に倍以上はある大きな門で、両開きになっており、今は昼だからなのか開かれていた。
(人はいないのかしら?んー、見当たらないから、しょうが無いわよね。建物まで進ませてもらいまーす。)
「お邪魔します。」
キョロキョロと見渡すが、門の辺りに人は見当たらなかったので、そのように小さな声を出し、さらに先へ進んでいく。門の前には少し先にこれまた大きな二階建ての建物があり、それが領主様の家なのだろうと思ったのだ。
(よし!)
玄関の所まで来て、エレナは、一呼吸すると扉を叩いた。
「すみません、お話よろしいでしょうか。」
…………
のどかで、鳥の声の囀りが聞こえるばかりであった。
「すみませーん!聞こえますかー!?
少しお話よろしいでしょうか-!!」
先ほどよりも強く扉を叩き、そして大きく声を張り上げてエレナは言って再び待った。
程なくして扉が開き、出てきたのはエレナよりも頭一つ分ほど背の低い、男の子であった。
「どちら様でしょうか。」
彼は、扉を少し開けエレナの顔をジロリと見上げて応対する。見た目は十歳になるかならない位だろうとエレナは思うが、言葉遣いは丁寧でその為大人びて見えて、そのせいで年齢不詳に感じた。
(領主様の子供なのかしら?でも、こういうお金持ちそうな家って、お手伝いさんとかいるのよね。だったら…お手伝いさん?こんな小さな子が!?
そもそも子供なのかなぁ?子供にしては言葉遣いが丁寧なのよね。)
「…あの、どちら様でしょうか?」
エレナは考え込んでいた為に、一度目の問いに返事をしなかった。なのでもう一度問いかけられ慌ててエレナは答えた。
「あ、ごめんなさい!
私、エレナと申します。領主様にお話をしたくて来たのですが、いらっしゃいます?」
「面会のご予定はありますか?」
「え?ないわ。」
「では、お引き取り願います。」
「…え?面会の予定がないと会えないって事?では今、予約すれば明日来たら会えるって事かしら?」
「いいえ。お引き取り願います。」
「困ったわね…大事なお話があったのよ。では、どうすれば会えるの?」
「会えません。そんな事で気を惹いても無駄です。お引き取り下さい。」
そう淡々と事務的に言って彼は扉を閉めようとしたので慌ててエレナは、口にした。
「あ、待って!気をひくってなに?私は一言文句を言いに来ただけよ?別に危害を加えようだなんて思ってないわ!
それとも、ここの領主様は住民の悲しい思いがあっても、その聞く耳を持っていないって事!?」
エレナがそう叫ぶと、閉まりそうだった扉はギリギリで止まり、小さな声で少しお待ち下さいと聞こえてまたゆっくりと閉まった。
(ちょっときつく言ってしまったかな?でも、取り付く島もなかったのだもの、仕方ないわよね?
小さな少年が応対してくれたから、接客で培った丁寧語も話さなかったけれど良いわよね?
でも、少年じゃなかったら?
…いきなり、牢屋にぶち込まれないわよね?)
エレナは、この待つ間に今さらながらドキドキソワソワとしていた。
…でも、本当に行くのかい?止めておいた方が良いよ。私らは不便に思っていないし、大丈夫なんだからね。」
エレナはそうマダリーナに言われたが、鼻息荒く頷き、言葉を返した。
「行ってきます。今までありがとうごさいました。そのご恩が返せるように、伝えてきます!」
「無理しなくて良いんだけどねぇ…私らは特に不満は無いし。
でもエレナの気の済むなら、ね。
美味しい食事を作って待ってるから、気をつけていくんだよ!」
「はい!」
エレナは、昨日ダリアと一緒に沸き湯に入った時に闘志が芽生えた。そして、沸き湯から上がったエレナは、早速マダリーナと、小麦粉などを配り終えて帰って来たアンに自分の気持ちを話した。
自分がいた世界には〝老人ホーム〟という施設があり、年齢が上がって一人では生活が出来なくなった人達のお手伝いをする仕事があると。
そんな仕事をしていた自分には、ここの〝終の山〟とはなんて酷い場所で、そんな場所がある事を認めている領主に考えを改めてもらいたい、と。
だから、領主様に直談判しに行く、と。
「何を言っているのですか!さすがにそんな事をしたら、牢屋に入れられてしまいます!
私達に不満は無いのですから!」
「そうだよ!私達の事を考えて怒ってくれているのは、嬉しいよ。だけれど、そんな事でせっかくある若い命を無駄にしてはいけないよ。
私らは満足しているんだよ。そんな事をしなくても大丈夫なんだよ!」
アンとマダリーナは、エレナの意気込みに対してそのように返した。
皆、領主様は自分達より格上の偉い人だと思っている為、反抗するなどとは全く考えていないからだ。それに、不満は特に無く、このままでいいと思っている。
けれどもエレナは、自分が以前生きていた世界で感じた事と、今この世界で感じた事を思い返し、やはり正した方が皆の為だと思ったのだ。
(自分が言うだけでは変わらないかもしれないけれど、やってみなければ分からないもの!それに、もしかしたら私がこの世界に来たのは、それを正す為に、来たのかもしれないし。
…まぁ、牢屋に入れられたらそれまでだわ。どうせ、あの時に私、きっと一度死んでるんだもの。)
エレナはそのように思ったのだった。
エレナは、マダリーナと別れ、初めての山道を辿っていく。ゆっくりとなだらかな坂道で、領主様の屋敷へと続くからだろう、そちらの道は両側は木々に覆われていたが歩く地面は石畳で舗装されていた。
(あちらの道とは全然違うのね。)
エレナは、そう思いながら進んでいく。
しばらく進むと、やがて道が開けて正面に重厚な門と、それを囲むように幅広い塀が伸びていた。
(わー広い!どこまで続いているのかしら。)
横に伸びた塀は、先が見えない程であった。
正面の門も、エレナの背丈よりも縦に倍以上はある大きな門で、両開きになっており、今は昼だからなのか開かれていた。
(人はいないのかしら?んー、見当たらないから、しょうが無いわよね。建物まで進ませてもらいまーす。)
「お邪魔します。」
キョロキョロと見渡すが、門の辺りに人は見当たらなかったので、そのように小さな声を出し、さらに先へ進んでいく。門の前には少し先にこれまた大きな二階建ての建物があり、それが領主様の家なのだろうと思ったのだ。
(よし!)
玄関の所まで来て、エレナは、一呼吸すると扉を叩いた。
「すみません、お話よろしいでしょうか。」
…………
のどかで、鳥の声の囀りが聞こえるばかりであった。
「すみませーん!聞こえますかー!?
少しお話よろしいでしょうか-!!」
先ほどよりも強く扉を叩き、そして大きく声を張り上げてエレナは言って再び待った。
程なくして扉が開き、出てきたのはエレナよりも頭一つ分ほど背の低い、男の子であった。
「どちら様でしょうか。」
彼は、扉を少し開けエレナの顔をジロリと見上げて応対する。見た目は十歳になるかならない位だろうとエレナは思うが、言葉遣いは丁寧でその為大人びて見えて、そのせいで年齢不詳に感じた。
(領主様の子供なのかしら?でも、こういうお金持ちそうな家って、お手伝いさんとかいるのよね。だったら…お手伝いさん?こんな小さな子が!?
そもそも子供なのかなぁ?子供にしては言葉遣いが丁寧なのよね。)
「…あの、どちら様でしょうか?」
エレナは考え込んでいた為に、一度目の問いに返事をしなかった。なのでもう一度問いかけられ慌ててエレナは答えた。
「あ、ごめんなさい!
私、エレナと申します。領主様にお話をしたくて来たのですが、いらっしゃいます?」
「面会のご予定はありますか?」
「え?ないわ。」
「では、お引き取り願います。」
「…え?面会の予定がないと会えないって事?では今、予約すれば明日来たら会えるって事かしら?」
「いいえ。お引き取り願います。」
「困ったわね…大事なお話があったのよ。では、どうすれば会えるの?」
「会えません。そんな事で気を惹いても無駄です。お引き取り下さい。」
そう淡々と事務的に言って彼は扉を閉めようとしたので慌ててエレナは、口にした。
「あ、待って!気をひくってなに?私は一言文句を言いに来ただけよ?別に危害を加えようだなんて思ってないわ!
それとも、ここの領主様は住民の悲しい思いがあっても、その聞く耳を持っていないって事!?」
エレナがそう叫ぶと、閉まりそうだった扉はギリギリで止まり、小さな声で少しお待ち下さいと聞こえてまたゆっくりと閉まった。
(ちょっときつく言ってしまったかな?でも、取り付く島もなかったのだもの、仕方ないわよね?
小さな少年が応対してくれたから、接客で培った丁寧語も話さなかったけれど良いわよね?
でも、少年じゃなかったら?
…いきなり、牢屋にぶち込まれないわよね?)
エレナは、この待つ間に今さらながらドキドキソワソワとしていた。
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