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22. 侯爵令息とのお見合い

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「フレドリカ、アールベック侯爵家の息子を知っているか?ロルフと言うのだが。」

「!え、ええ。もちろんよ。どうして?」



 その日の夕食。
 アロルドはフレドリカへとそう話した。


「結婚の申し出が来ている。どうだ?相手は侯爵家だし、申し分ない。承諾していいか?どうしてもフレドリカが嫌なら…」

「あなた!すごいじゃないの!!受けるべきよ!ロルフって、昨日フレドリカと話がしたいと言った子でしょう?
やったわね!上手いこといったのね!?」

「お母様、失礼よ!
お父様、嫌だなんて思っておりませんわ!で、ですから、お受け致しますわ!」

「うむ。
カイサ、相手は侯爵家のご子息だ。ちゃんと敬称を付けなさい。」

「そ、そうね。」

「ロルフ様ったら!」


 ウフフフと、フレドリカは思い出しているのかニヤニヤとしている。
 シェスティンは、ビルギッタが言ったように本当に結婚するのだと思った。


(ロルフ様、すごいわね。もう話をお父様にするなんて仕事が早いわ!フレドリカの事がよっぽど好きなのね。)


「受けていいならフレドリカ、ロルフ様が明日来るそうだよ。いいかい?」

「え?明日!?」

「あちらは侯爵家だからね。お忙しいのだろう。まぁ、早いに越したことはないな。」

「あなた!でも準備が!」

「どんな準備だ?」

「ドレスが間に合わないわよ!」

「…カイサ。服はあるものにしなさい。あまり派手過ぎてはいけないよ。たくさんあるだろう?フレドリカも。いいね?」

「はーい!じゃああとでドレスの確認をしなくっちゃ!」


 フレドリカは鼻歌を歌いながら食事を再開した。






☆★

 次の日。

 オールストレーム家は朝からバタバタとしていた。


「コーラ、私は行かなくていいのよね?」

「はい。アロルド様は部屋にいるようにと。」

「そう。じゃあ先日書籍店で買った本でも読んでいましょうか。」





ーーー
ーー


 昼過ぎ。
 アールベック家が到着した。ロルフと、その父で現侯爵のベングトだ。


「今日は、ご足労掛けまして申し訳ありません。」

「とんでもない。我が息子がオールストレーム家のお嬢さんを是非にと懇願してくるものだから、それはもうどんな娘さんかと早く会ってみたくて気が急いておりました。」

「それはありがたいお言葉です。ですが…ロルフ殿、果たして、本当にフレドリカで宜しいのですか?うちは二人娘がおりますので、念のため確認をと思いまして。」

「ええ、もちろんですよ。基礎学校でのフレドリカ嬢のお姿に惚れ込んだ訳ですから間違えるはずもありません。」

「そうでしたか…本当に、ありがたい限りです。」


コンコンコン


「フレドリカ様をお連れ致しました。」

「入って参れ。」


 侍女のロリがそのように言うと、アロルドの許可が得た為に扉を開ける。フレドリカは、少しだけ大人しい色の、濃い緑色のワンピースを着ていた。


「あぁ、美しい…。」


 見目麗しいロルフに言われ、フレドリカは気分が高揚しつつも、お辞儀をしてアロルドを見る。


「こちらに座りなさい。」

「はい。失礼致します。」


 フレドリカも一応は学校で挨拶の仕方を習っている。なので精一杯思い出しながら、ぎこちないながらに作法をしていた。


「フレドリカ、こちらベングト=アールベック侯爵だよ。」

「はい。私はフレドリカと申します。よろしくお願いします。」

「なるほど。可愛らしいお嬢さんだ。」

「だろう?では早速、よろしくお願いします、父上。」


 挨拶も早々に、お互いの結婚についてロルフはベングトに急かすように促した。


「全く…。
アロルド殿。そちらにとったら急だと思うのだが、なにぶんうちは侯爵家でね。いろいろと覚えてもらいたい事がたくさんあるのだ。
昨日、本人には承諾を得たとロルフから聞いているのだが、アロルド殿、できればなるべく早くうちに滞在して、学んでもらいたいのだが。」

「滞在ですか?そうしますと、学校はどうなるのですか。」


 アロルドは、話が来た時から何となくは感じていたが侯爵家はすぐ行動にうつすようなので、果たして大丈夫なのかと確認をする。滞在したあと、やはりダメだと突き返されてはフレドリカに傷が付くようなものだと心配していたのだ。


 アロルドにとって、降って沸いたような話。

 娘達の結婚は、卒業してから考えればいいかと思っていた。それも、フレドリカは侍女のロリや侍従のエッベに聞いた限りでは子であり、成績もギリギリなので、貰い手が無いかもしれないと思っていたのだ。


(昨日、会場で話を聞いた時には驚いたが、本当に貰ってくれるのだろうか。)


 アロルドは、ありがたい話ではあるがヒヤヒヤとしているのだ。しかも、ロルフはかなり食い気味に、急いで結婚したい様子。果たして、侯爵夫人になる為の学びをフレドリカがしっかりこなす事を出来るのか不安だった。


「辞めますわ。」

「辞める!?」

「ええ、お父様。だって、いつか私は侯爵夫人になるのでしょう?それまでには、いろいろと覚えないとならないのですって。卒業してすぐに結婚する為には、それまでに覚えるべき事を覚えていなければならないのですって。だから、なるべく早くロルフ様のお屋敷に一緒に住まわせてもらって、そこで勉強していく方が、効率がいいそうなの。そうですわよね、ロルフ様?」

「あぁ。
フレドリカ嬢には昨日そう話したのです。どうでしょうか、アロルド伯爵。お許し頂けませんか。」

「う、うむ…。」


(フレドリカは、学ぶべきものがある事を理解しているのだな。そして、ロルフ殿も。
共に学校で生活しているのだし、フレドリカの事は理解した上でこの話を持ってきたのだろう。それであれば…。)


「大事な娘さんをこちらに来て頂くのですから、支度金は上乗せさせていただきますよ。とはいえ、身一つで来て頂いても結構な話なのですがね。フレドリカ嬢には、ロルフがいろいろとプレゼントしたいそうなので。」

「はい。出来れば日用品から普段使いなど生活に必要な物全て、僕が用意したものを使ってくれると嬉しいなと思っておりまして。」

「…!まぁ!そんな!ロルフ様ってば!お父様、聞きまして?どう?ねぇ、今すぐにでも行きたいわ!」

「ま、待ちなさい!さすがに今すぐには先方にも失礼だよ。
しかし、あの、正直に申しますと、少々出来がよろしくないのですが、本当にフレドリカで宜しいのですか?」


 アロルドはこんなありがたい話は二度と無いだろうと結論づけたが、やはり念のため確認をしてみる。


「はい。彼女以外あり得ません。」

「だ、そうだ。うちは、今日一緒に帰っても何ら問題はないよ。どうだろうか。」


 アロルドは今度こそ頷き、こちらこそ不出来な娘ではありますがどうぞよろしくお願いします、と丁寧に頭を下げた。
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