6 / 29
6. 王都での学び
しおりを挟む
翌日。
シェスティンはまた、王都へと馬車で向かった。今日は、昨日会った子供達と話をするからだ。
今日はクッキーと僅かだがパンを持って出掛ける。
昨日ディックは、探しに行ってすぐ、大通りを横道にそれ、先を進むと路地裏で見つけたらしく話を付ける事が出来たと言っていた。
「それにしても、アロルド様はよく許して下さいましたね。」
「そうね。私が学校へ通わない事を本当に良かったのかと聞かれたわ。でも、もしかしたら学校では教わらない事を私は王都で学ぶかもしれないのでしょう?だったら、行く価値はあるわよね?」
「そうですね。今日は、邪魔にならないように馬車はずいぶんと王都の外れに置きますから少し歩きます。そこでも、いろいろと感じる事が出来るでしょう。」
「ディックも付いて来てくれるのでしょう?」
「はい。彼は、路地裏に詳しいと言ってましたね。シェスティン様がそのような危ない場所へ迷い込まないように今日は、馬車を見張る使用人も一人増やしましたから、万全ですね。」
馬車を見張る見習いを一人連れてきたので、ディックは馬車を見張らずにシェスティンと一緒に来てくれると言うわけだ。見習いであるから、馬車の操作はディックがしている。見習いも、御者席にディックと共に座っていた。
☆★
馬車を往来の邪魔にならない、広い外れの場所に止め、馬には水を与えている使用人にゆっくりしていてねとシェスティンは伝え、コーラとディックと共に王都へと歩みを進めた。
「この辺りです。」
「ここ…?」
「昨日の場所とは違いますね。教会ですか?」
ディックが待ち合わせに選んだのは、中心街より手前にある、小さな教会だった。
「あぁ。昨日のような往来の激しい場所は、話をするのには向かないからな。かといって、彼らをカフェなどの店に招き入れるのも居心地が悪いだろうし。こういう場所のが彼らには居心地がいいだろうからな。」
教会の外には壁に沿ってベンチがあり、そこに昨日の男女が二人掛けのベンチに並んで座っていた。
「あ、あの子達ね。」
シェスティンは気づき、そちらへと進むと座っていた彼らも気づいて、男の子の方が立ち上がった。
「こんにちは。来てくれてありがとう。今日はお話をしたかったの。よろしいかしら?」
「……ああ。」
男の子は顔は不服そうにしながらも、昨日ディックがうまく言いくるめたのだろう。また、ベンチに座った。
「ありがとう。私はシェスティン。貴方達の名前は?」
シェスティンは、ディックに道すがら教えられたように、言葉遣いも準備学校でならったような話し方ではなく、庶民が使ってもおかしくない話し方で優しく話し出した。
「…なんで言わないといけないんだ?やっぱり、軍に突き出すのか!?」
男の子が顔を上げ、シェスティンを睨むようにそう言った。
「え!?違うわ。名前を呼び合った方が、仲良くなれそうだと思ったのよ。でも、名前を言いたくないのね?気付かなくてごめんなさい。
ええと…ではなんて呼ぼうかしらね…」
「…オッレ。」
「え?」
「オッレだよ。それでこっちが妹のアイナ。僕は八歳で、アイナは六歳だ。」
「名前ね?教えてくれてありがとう!じゃあ、オッレにアイナ。よろしくね!私は、七歳なの。同じくらいだったのね!
ねぇ、あの高台にある、四阿に行ってもいい?テーブルがありそうだもの。」
「いいよ。シェスティンが座れないからな。…あ、シェスティン様と呼ばないといけないのか?」
「いいえ。シェスティンでいいわよ。」
そう言ったシェスティンはそのベンチから教会の奥へと少し登った先にある四阿に向かう。
コーラが一足先に向かい、テーブルに敷物をしき、持ってきたクッキーをそれぞれ座る場所の前に置いた。
「食べながら話しましょう。長くはならないつもりだけれど。
あなた達は、孤児院に入っていないの?」
昨日まで、シェスティンは孤児と言う意味を知らなかった。しかし、帰りの馬車の中でコーラに教わり、またそういう子供達の為に孤児院という、教会併設の施設がある事を知った。
「こじいん?なんだよそれ!?」
「え?えっと…じゃあどこに住んでいるの?」
シェスティンは孤児院を知らないと言われ、自分で説明する事が躊躇われた。それに、孤児と言ったのは昨日の店員の憶測なだけで、もしかしたら違うのかもしれないと思った為に質問で返してしまう。
アイナは早速、テーブルに置かれたクッキーをボリボリと食べていた。
「…路地裏だよ。家は、もうない。父さんが亡くなって、家を追い出されたんだ。」
「え!?そ、そんな事あるの?」
「あるさ!僕の父さんは国の為に頑張っていたんだぞ!軍隊に入っていたんだ!そりゃ、庶民の出ではあったからそんなに偉い地位にはなっていないけど、それでもそこそこ強かったんだ!それなのに、戦地に駆り出されて、呆気なく死んじまったんだ!!」
「そんな…!」
「確かに国は、殉職だとかなんか言って賞状みたいなもんと、退職金だか香典だとか言ってお金をくれたけど、そんなの葬式を上げたらほとんど残らなくて…。
挙げ句、暮らしていた軍のアパートは追い出されちゃうし…母さんは仕事に就いたけど、体壊して死んじまったんだ!
あとはばあちゃんがいるけど、ばあちゃんは腰が痛いと言っているから働くなんて大変だし、だからといって僕らだって暮らしていかなきゃなんないから、仕方なく路地裏で生活しているんだよ!」
「そうだったの…。じゃあ尚更、申請をしたら孤児院とかに入れるのではないの?」
「ばあちゃんはそういうとこ入ったら家族バラバラになっちまうって言うんだ。ばあちゃんはそこ、入れないんだろ?」
「そうなの…?」
「今はばあちゃんと一緒に暮らしてはいるけど、こんなぼろぼろの僕を雇ってくれる所なんてないんだ……。
盗みなんてやってはいけない事だって分かってるさ!でもやらなきゃ生きていけないんだ!お前らみたいに、食べる物に苦労していない奴には分からないかもしれないけどよ!」
そう言われたシェスティンは酷く胸に衝撃が走った。
(確かにそうだわ…私は、食べ物に困ってなんかない。だから、きれい事しか言えないわ。盗みなんてダメ、とか、仕事をすればいいのにとか思ってしまったし。)
「…ごめんなさい。悔しい気持ちを話してくれてありがとう。
昨日の店には、少しお願いしておいたから、店への呼び込みとか、荷物運びとかすれば食べ物を分けてくれると思うわよ。」
「…それでも、いつも雇ってくれるわけではないだろう?」
「それは…」
あの店員がどのように思っているかが分からない為、シェスティンは迂闊な事が言えなかった。
「…すまん。熱くなりすぎた。
これでも、父さんは軍隊だったから、庶民にしては裕福だったんだ。だからばあちゃんもきっと、いつか前みたいな暮らしが出来ると思っている。でも、父さんみたいに安定した金を稼げなければ、無理な事ぐらい僕にだって分かるさ…。」
「ねぇ、コーラ。どうにかならないの?」
「そうですね…オッレとアイナが孤児院に行って、そこでおばあさまが働くとしたらもしくは家族一緒にいけるとは思いますが、働くのが難しいとなると…。現状、働かなければ暮らしていけないのは、この国の問題ではあるのです。」
「働く、なんて…。わかった。聞かせてくれてありがとう。いつかこの問題を解決できるように、どうにか考えてみるわ。今日すぐには何も出来なくて申し訳ないのだけれど…。」
「まぁ、今すぐどうこう出来るとは思ってないよ。菓子、ありがとう。アイナが僕の分まで食べそうだ。そろそろいいかな?ばあちゃんにも食べさせてやりたいから。」
「おばあちゃんが家を追い出されてすぐに働けばよかったのよ。いつも自慢してる若い頃に得た知識でも使って。」
今まで黙々と焼き菓子を食べていたアイナは鬱陶しそうにそう言った。
「アイナ、そんな事言うなよ!フレンスブルグ語を覚えてるからって、海を越えた先の言葉を使いたい人なんていないだろうし、刺繍だって針に糸が通せないとか言ってやれないっていうから仕方ないだろ!」
「え!フレンスブルグ語!?」
「ん?そうだよ。シェスティン知ってる?海を越えた向こうにある国なんだってさ。でも、そんなの誰が必要だって言うんだって話!」
(フレンスブルグ語は、私が知りたいと思っていた国の言葉だわ!)
「シェスティン様。何を考えていらっしゃるかは分かりませんが、そろそろ帰られると言っているのですよ。さぁ、こちらをお渡しするのでしょう?」
今まで少し後ろに下がって控えていたコーラが、そう言って袋をシェスティンへと渡す。
「あ、そうね。
待って!これ、持って行って?」
「施しか?」
「違うわ!今日話しをしてくれたお礼よ。友達でもそういうの、あるでしょ?」
「お礼…ありがとう。助かる。」
シェスティンは持ってきたパンをオッレに渡した。アイナはパンを見てまた目の色を変えたけれど、オッレに促されしぶしぶ立ち上がり、帰って行った。
「ねぇ、聞いた?コーラ。」
「聞きました。…いえ、聞いておりません。」
「もう!どっちなのよ!ねぇ、先生を見つけたわ!リュックセレ国の西側にある海を渡った先にあるフレンスブルグ国の言葉を話せるのですって!うちに来てもらいましょうよ!」
「さすがに、屋敷に入れるのは無理だろうな。」
同じく後ろで控えていたディックが話に入ってくる。
「え、だめ?」
「そうだな…万が一アロルド様が許したとしても、カイサ様がどう言ってくるか…。」
「シェスティン様の通学を阻止してまで、ドレスや宝石代を浮かせたのに、どうして余分な出費をと言い出し兼ねません。」
「そうかしら?だって貴族は、お金がある分、無い人に施しをするのが嗜みなのでしょう?お母様もきっと、良いって言われると思うわ。」
「いえ!では、分かりましたから私どもが報告致します。ですのでそれまでは、動かないでいて下さい。」
「そうだな、シェスティン様、おれらに任せてくれ。」
「そう?じゃあお願いするわ。よろしくね。」
そうして、三人は帰る為に馬車の方へと歩いて行った。
シェスティンはまた、王都へと馬車で向かった。今日は、昨日会った子供達と話をするからだ。
今日はクッキーと僅かだがパンを持って出掛ける。
昨日ディックは、探しに行ってすぐ、大通りを横道にそれ、先を進むと路地裏で見つけたらしく話を付ける事が出来たと言っていた。
「それにしても、アロルド様はよく許して下さいましたね。」
「そうね。私が学校へ通わない事を本当に良かったのかと聞かれたわ。でも、もしかしたら学校では教わらない事を私は王都で学ぶかもしれないのでしょう?だったら、行く価値はあるわよね?」
「そうですね。今日は、邪魔にならないように馬車はずいぶんと王都の外れに置きますから少し歩きます。そこでも、いろいろと感じる事が出来るでしょう。」
「ディックも付いて来てくれるのでしょう?」
「はい。彼は、路地裏に詳しいと言ってましたね。シェスティン様がそのような危ない場所へ迷い込まないように今日は、馬車を見張る使用人も一人増やしましたから、万全ですね。」
馬車を見張る見習いを一人連れてきたので、ディックは馬車を見張らずにシェスティンと一緒に来てくれると言うわけだ。見習いであるから、馬車の操作はディックがしている。見習いも、御者席にディックと共に座っていた。
☆★
馬車を往来の邪魔にならない、広い外れの場所に止め、馬には水を与えている使用人にゆっくりしていてねとシェスティンは伝え、コーラとディックと共に王都へと歩みを進めた。
「この辺りです。」
「ここ…?」
「昨日の場所とは違いますね。教会ですか?」
ディックが待ち合わせに選んだのは、中心街より手前にある、小さな教会だった。
「あぁ。昨日のような往来の激しい場所は、話をするのには向かないからな。かといって、彼らをカフェなどの店に招き入れるのも居心地が悪いだろうし。こういう場所のが彼らには居心地がいいだろうからな。」
教会の外には壁に沿ってベンチがあり、そこに昨日の男女が二人掛けのベンチに並んで座っていた。
「あ、あの子達ね。」
シェスティンは気づき、そちらへと進むと座っていた彼らも気づいて、男の子の方が立ち上がった。
「こんにちは。来てくれてありがとう。今日はお話をしたかったの。よろしいかしら?」
「……ああ。」
男の子は顔は不服そうにしながらも、昨日ディックがうまく言いくるめたのだろう。また、ベンチに座った。
「ありがとう。私はシェスティン。貴方達の名前は?」
シェスティンは、ディックに道すがら教えられたように、言葉遣いも準備学校でならったような話し方ではなく、庶民が使ってもおかしくない話し方で優しく話し出した。
「…なんで言わないといけないんだ?やっぱり、軍に突き出すのか!?」
男の子が顔を上げ、シェスティンを睨むようにそう言った。
「え!?違うわ。名前を呼び合った方が、仲良くなれそうだと思ったのよ。でも、名前を言いたくないのね?気付かなくてごめんなさい。
ええと…ではなんて呼ぼうかしらね…」
「…オッレ。」
「え?」
「オッレだよ。それでこっちが妹のアイナ。僕は八歳で、アイナは六歳だ。」
「名前ね?教えてくれてありがとう!じゃあ、オッレにアイナ。よろしくね!私は、七歳なの。同じくらいだったのね!
ねぇ、あの高台にある、四阿に行ってもいい?テーブルがありそうだもの。」
「いいよ。シェスティンが座れないからな。…あ、シェスティン様と呼ばないといけないのか?」
「いいえ。シェスティンでいいわよ。」
そう言ったシェスティンはそのベンチから教会の奥へと少し登った先にある四阿に向かう。
コーラが一足先に向かい、テーブルに敷物をしき、持ってきたクッキーをそれぞれ座る場所の前に置いた。
「食べながら話しましょう。長くはならないつもりだけれど。
あなた達は、孤児院に入っていないの?」
昨日まで、シェスティンは孤児と言う意味を知らなかった。しかし、帰りの馬車の中でコーラに教わり、またそういう子供達の為に孤児院という、教会併設の施設がある事を知った。
「こじいん?なんだよそれ!?」
「え?えっと…じゃあどこに住んでいるの?」
シェスティンは孤児院を知らないと言われ、自分で説明する事が躊躇われた。それに、孤児と言ったのは昨日の店員の憶測なだけで、もしかしたら違うのかもしれないと思った為に質問で返してしまう。
アイナは早速、テーブルに置かれたクッキーをボリボリと食べていた。
「…路地裏だよ。家は、もうない。父さんが亡くなって、家を追い出されたんだ。」
「え!?そ、そんな事あるの?」
「あるさ!僕の父さんは国の為に頑張っていたんだぞ!軍隊に入っていたんだ!そりゃ、庶民の出ではあったからそんなに偉い地位にはなっていないけど、それでもそこそこ強かったんだ!それなのに、戦地に駆り出されて、呆気なく死んじまったんだ!!」
「そんな…!」
「確かに国は、殉職だとかなんか言って賞状みたいなもんと、退職金だか香典だとか言ってお金をくれたけど、そんなの葬式を上げたらほとんど残らなくて…。
挙げ句、暮らしていた軍のアパートは追い出されちゃうし…母さんは仕事に就いたけど、体壊して死んじまったんだ!
あとはばあちゃんがいるけど、ばあちゃんは腰が痛いと言っているから働くなんて大変だし、だからといって僕らだって暮らしていかなきゃなんないから、仕方なく路地裏で生活しているんだよ!」
「そうだったの…。じゃあ尚更、申請をしたら孤児院とかに入れるのではないの?」
「ばあちゃんはそういうとこ入ったら家族バラバラになっちまうって言うんだ。ばあちゃんはそこ、入れないんだろ?」
「そうなの…?」
「今はばあちゃんと一緒に暮らしてはいるけど、こんなぼろぼろの僕を雇ってくれる所なんてないんだ……。
盗みなんてやってはいけない事だって分かってるさ!でもやらなきゃ生きていけないんだ!お前らみたいに、食べる物に苦労していない奴には分からないかもしれないけどよ!」
そう言われたシェスティンは酷く胸に衝撃が走った。
(確かにそうだわ…私は、食べ物に困ってなんかない。だから、きれい事しか言えないわ。盗みなんてダメ、とか、仕事をすればいいのにとか思ってしまったし。)
「…ごめんなさい。悔しい気持ちを話してくれてありがとう。
昨日の店には、少しお願いしておいたから、店への呼び込みとか、荷物運びとかすれば食べ物を分けてくれると思うわよ。」
「…それでも、いつも雇ってくれるわけではないだろう?」
「それは…」
あの店員がどのように思っているかが分からない為、シェスティンは迂闊な事が言えなかった。
「…すまん。熱くなりすぎた。
これでも、父さんは軍隊だったから、庶民にしては裕福だったんだ。だからばあちゃんもきっと、いつか前みたいな暮らしが出来ると思っている。でも、父さんみたいに安定した金を稼げなければ、無理な事ぐらい僕にだって分かるさ…。」
「ねぇ、コーラ。どうにかならないの?」
「そうですね…オッレとアイナが孤児院に行って、そこでおばあさまが働くとしたらもしくは家族一緒にいけるとは思いますが、働くのが難しいとなると…。現状、働かなければ暮らしていけないのは、この国の問題ではあるのです。」
「働く、なんて…。わかった。聞かせてくれてありがとう。いつかこの問題を解決できるように、どうにか考えてみるわ。今日すぐには何も出来なくて申し訳ないのだけれど…。」
「まぁ、今すぐどうこう出来るとは思ってないよ。菓子、ありがとう。アイナが僕の分まで食べそうだ。そろそろいいかな?ばあちゃんにも食べさせてやりたいから。」
「おばあちゃんが家を追い出されてすぐに働けばよかったのよ。いつも自慢してる若い頃に得た知識でも使って。」
今まで黙々と焼き菓子を食べていたアイナは鬱陶しそうにそう言った。
「アイナ、そんな事言うなよ!フレンスブルグ語を覚えてるからって、海を越えた先の言葉を使いたい人なんていないだろうし、刺繍だって針に糸が通せないとか言ってやれないっていうから仕方ないだろ!」
「え!フレンスブルグ語!?」
「ん?そうだよ。シェスティン知ってる?海を越えた向こうにある国なんだってさ。でも、そんなの誰が必要だって言うんだって話!」
(フレンスブルグ語は、私が知りたいと思っていた国の言葉だわ!)
「シェスティン様。何を考えていらっしゃるかは分かりませんが、そろそろ帰られると言っているのですよ。さぁ、こちらをお渡しするのでしょう?」
今まで少し後ろに下がって控えていたコーラが、そう言って袋をシェスティンへと渡す。
「あ、そうね。
待って!これ、持って行って?」
「施しか?」
「違うわ!今日話しをしてくれたお礼よ。友達でもそういうの、あるでしょ?」
「お礼…ありがとう。助かる。」
シェスティンは持ってきたパンをオッレに渡した。アイナはパンを見てまた目の色を変えたけれど、オッレに促されしぶしぶ立ち上がり、帰って行った。
「ねぇ、聞いた?コーラ。」
「聞きました。…いえ、聞いておりません。」
「もう!どっちなのよ!ねぇ、先生を見つけたわ!リュックセレ国の西側にある海を渡った先にあるフレンスブルグ国の言葉を話せるのですって!うちに来てもらいましょうよ!」
「さすがに、屋敷に入れるのは無理だろうな。」
同じく後ろで控えていたディックが話に入ってくる。
「え、だめ?」
「そうだな…万が一アロルド様が許したとしても、カイサ様がどう言ってくるか…。」
「シェスティン様の通学を阻止してまで、ドレスや宝石代を浮かせたのに、どうして余分な出費をと言い出し兼ねません。」
「そうかしら?だって貴族は、お金がある分、無い人に施しをするのが嗜みなのでしょう?お母様もきっと、良いって言われると思うわ。」
「いえ!では、分かりましたから私どもが報告致します。ですのでそれまでは、動かないでいて下さい。」
「そうだな、シェスティン様、おれらに任せてくれ。」
「そう?じゃあお願いするわ。よろしくね。」
そうして、三人は帰る為に馬車の方へと歩いて行った。
4
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
冷酷な旦那様が記憶喪失になったら溺愛モードに入りましたが、愛される覚えはありません!
香月文香
恋愛
家族から虐げられていた男爵令嬢のリゼル・マギナは、ある事情によりグレン・コーネスト伯爵のもとへと嫁入りすることになる。
しかし初夜当日、グレンから『お前を愛することはない』と宣言され、リゼルは放置されることに。
愛はないものの穏やかに過ごしていたある日、グレンは事故によって記憶を失ってしまう。
すると冷たかったはずのグレンはリゼルを溺愛し始めて――!?
けれどもリゼルは知っている。自分が愛されるのは、ただ彼が記憶を失っているからだと。
記憶が戻れば、リゼルが愛されることなどないのだと。
(――それでも、私は)
これは、失われた記憶を取り戻すまでの物語。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる