【完結】双子の入れ替わりなんて本当に出来るのかしら、と思ったら予想外の出来事となりました。

まりぃべる

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6. 王都での学び

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 翌日。


 シェスティンはまた、王都へと馬車で向かった。今日は、昨日会った子供達と話をするからだ。
今日はクッキーと僅かだがパンを持って出掛ける。

 昨日ディックは、探しに行ってすぐ、大通りを横道にそれ、先を進むと路地裏で見つけたらしく話を付ける事が出来たと言っていた。


「それにしても、アロルド様はよく許して下さいましたね。」

「そうね。私が学校へ通わない事を本当に良かったのかと聞かれたわ。でも、もしかしたら学校では教わらない事を私は王都で学ぶかもしれないのでしょう?だったら、行く価値はあるわよね?」

「そうですね。今日は、邪魔にならないように馬車はずいぶんと王都の外れに置きますから少し歩きます。そこでも、いろいろと感じる事が出来るでしょう。」

「ディックも付いて来てくれるのでしょう?」

「はい。彼は、路地裏に詳しいと言ってましたね。シェスティン様がそのような危ない場所へ迷い込まないように今日は、馬車を見張る使用人も一人増やしましたから、万全ですね。」


 馬車を見張る見習いを一人連れてきたので、ディックは馬車を見張らずにシェスティンと一緒に来てくれると言うわけだ。見習いであるから、馬車の操作はディックがしている。見習いも、御者席にディックと共に座っていた。




☆★

 馬車を往来の邪魔にならない、広い外れの場所に止め、馬には水を与えている使用人にゆっくりしていてねとシェスティンは伝え、コーラとディックと共に王都へと歩みを進めた。


「この辺りです。」

「ここ…?」

「昨日の場所とは違いますね。教会ですか?」


 ディックが待ち合わせに選んだのは、中心街より手前にある、小さな教会だった。


「あぁ。昨日のような往来の激しい場所は、話をするのには向かないからな。かといって、彼らをカフェなどの店に招き入れるのも居心地が悪いだろうし。こういう場所のが彼らには居心地がいいだろうからな。」


 教会の外には壁に沿ってベンチがあり、そこに昨日の男女が二人掛けのベンチに並んで座っていた。


「あ、あの子達ね。」

 シェスティンは気づき、そちらへと進むと座っていた彼らも気づいて、男の子の方が立ち上がった。

「こんにちは。来てくれてありがとう。今日はお話をしたかったの。よろしいかしら?」

「……ああ。」


 男の子は顔は不服そうにしながらも、昨日ディックがうまく言いくるめたのだろう。また、ベンチに座った。


「ありがとう。私はシェスティン。貴方達の名前は?」


 シェスティンは、ディックに道すがら教えられたように、言葉遣いも準備学校でならったような話し方ではなく、庶民が使ってもおかしくない話し方で優しく話し出した。


「…なんで言わないといけないんだ?やっぱり、軍に突き出すのか!?」


 男の子が顔を上げ、シェスティンを睨むようにそう言った。


「え!?違うわ。名前を呼び合った方が、仲良くなれそうだと思ったのよ。でも、名前を言いたくないのね?気付かなくてごめんなさい。
ええと…ではなんて呼ぼうかしらね…」

「…オッレ。」

「え?」

「オッレだよ。それでこっちが妹のアイナ。僕は八歳で、アイナは六歳だ。」

「名前ね?教えてくれてありがとう!じゃあ、オッレにアイナ。よろしくね!私は、七歳なの。同じくらいだったのね!
ねぇ、あの高台にある、四阿に行ってもいい?テーブルがありそうだもの。」

「いいよ。シェスティンが座れないからな。…あ、シェスティン様と呼ばないといけないのか?」

「いいえ。シェスティンでいいわよ。」


 そう言ったシェスティンはそのベンチから教会の奥へと少し登った先にある四阿に向かう。
 コーラが一足先に向かい、テーブルに敷物をしき、持ってきたクッキーをそれぞれ座る場所の前に置いた。


「食べながら話しましょう。長くはならないつもりだけれど。
あなた達は、孤児院に入っていないの?」


 昨日まで、シェスティンは孤児と言う意味を知らなかった。しかし、帰りの馬車の中でコーラに教わり、またそういう子供達の為に孤児院という、教会併設の施設がある事を知った。


「こじいん?なんだよそれ!?」

「え?えっと…じゃあどこに住んでいるの?」


 シェスティンは孤児院を知らないと言われ、自分で説明する事が躊躇われた。それに、孤児と言ったのは昨日の店員の憶測なだけで、もしかしたら違うのかもしれないと思った為に質問で返してしまう。
 アイナは早速、テーブルに置かれたクッキーをボリボリと食べていた。


「…路地裏だよ。家は、もうない。父さんが亡くなって、家を追い出されたんだ。」

「え!?そ、そんな事あるの?」

「あるさ!僕の父さんは国の為に頑張っていたんだぞ!軍隊に入っていたんだ!そりゃ、庶民の出ではあったからそんなに偉い地位にはなっていないけど、それでもそこそこ強かったんだ!それなのに、戦地に駆り出されて、呆気なく死んじまったんだ!!」

「そんな…!」

「確かに国は、殉職だとかなんか言って賞状みたいなもんと、退職金だか香典だとか言ってお金をくれたけど、そんなの葬式を上げたらほとんど残らなくて…。
挙げ句、暮らしていた軍のアパートは追い出されちゃうし…母さんは仕事に就いたけど、体壊して死んじまったんだ!
あとはばあちゃんがいるけど、ばあちゃんは腰が痛いと言っているから働くなんて大変だし、だからといって僕らだって暮らしていかなきゃなんないから、路地裏で生活しているんだよ!」

「そうだったの…。じゃあ尚更、申請をしたら孤児院とかに入れるのではないの?」

「ばあちゃんはそういうとこ入ったら家族バラバラになっちまうって言うんだ。ばあちゃんはそこ、入れないんだろ?」

「そうなの…?」

「今はばあちゃんと一緒に暮らしてはいるけど、こんなぼろぼろの僕を雇ってくれる所なんてないんだ……。
盗みなんてやってはいけない事だって分かってるさ!でもやらなきゃ生きていけないんだ!お前らみたいに、食べる物に苦労していない奴には分からないかもしれないけどよ!」


 そう言われたシェスティンは酷く胸に衝撃が走った。


(確かにそうだわ…私は、食べ物に困ってなんかない。だから、きれい事しか言えないわ。盗みなんてダメ、とか、仕事をすればいいのにとか思ってしまったし。)


「…ごめんなさい。悔しい気持ちを話してくれてありがとう。
昨日の店には、少しお願いしておいたから、店への呼び込みとか、荷物運びとかすれば食べ物を分けてくれると思うわよ。」

「…それでも、いつも雇ってくれるわけではないだろう?」

「それは…」


 あの店員がどのように思っているかが分からない為、シェスティンは迂闊な事が言えなかった。


「…すまん。熱くなりすぎた。
これでも、父さんは軍隊だったから、庶民にしては裕福だったんだ。だからばあちゃんもきっと、いつか前みたいな暮らしが出来ると思っている。でも、父さんみたいに安定した金を稼げなければ、無理な事ぐらい僕にだって分かるさ…。」


「ねぇ、コーラ。どうにかならないの?」

「そうですね…オッレとアイナが孤児院に行って、そこでおばあさまが働くとしたらもしくは家族一緒にいけるとは思いますが、働くのが難しいとなると…。現状、働かなければ暮らしていけないのは、この国の問題ではあるのです。」

「働く、なんて…。わかった。聞かせてくれてありがとう。いつかこの問題を解決できるように、どうにか考えてみるわ。今日すぐには何も出来なくて申し訳ないのだけれど…。」

「まぁ、今すぐどうこう出来るとは思ってないよ。菓子、ありがとう。アイナが僕の分まで食べそうだ。そろそろいいかな?ばあちゃんにも食べさせてやりたいから。」

「おばあちゃんが家を追い出されてすぐに働けばよかったのよ。いつも自慢してる若い頃に得た知識でも使って。」


 今まで黙々と焼き菓子を食べていたアイナは鬱陶しそうにそう言った。


「アイナ、そんな事言うなよ!フレンスブルグ語を覚えてるからって、海を越えた先の言葉を使いたい人なんていないだろうし、刺繍だって針に糸が通せないとか言ってやれないっていうから仕方ないだろ!」

「え!フレンスブルグ語!?」

「ん?そうだよ。シェスティン知ってる?海を越えた向こうにある国なんだってさ。でも、そんなの誰が必要だって言うんだって話!」


(フレンスブルグ語は、私が知りたいと思っていた国の言葉だわ!)


「シェスティン様。何を考えていらっしゃるかは分かりませんが、そろそろ帰られると言っているのですよ。さぁ、こちらをお渡しするのでしょう?」


 今まで少し後ろに下がって控えていたコーラが、そう言って袋をシェスティンへと渡す。


「あ、そうね。
待って!これ、持って行って?」

「施しか?」

「違うわ!今日話しをしてくれたよ。友達でもそういうの、あるでしょ?」

「お礼…ありがとう。助かる。」


 シェスティンは持ってきたパンをオッレに渡した。アイナはパンを見てまた目の色を変えたけれど、オッレに促されしぶしぶ立ち上がり、帰って行った。


「ねぇ、聞いた?コーラ。」

「聞きました。…いえ、聞いておりません。」

「もう!どっちなのよ!ねぇ、先生を見つけたわ!リュックセレ国の西側にある海を渡った先にあるフレンスブルグ国の言葉を話せるのですって!うちに来てもらいましょうよ!」

「さすがに、屋敷に入れるのは無理だろうな。」


 同じく後ろで控えていたディックが話に入ってくる。


「え、だめ?」

「そうだな…万が一アロルド様が許したとしても、カイサ様がどう言ってくるか…。」

「シェスティン様の通学を阻止してまで、ドレスや宝石代を浮かせたのに、どうして余分な出費をと言い出し兼ねません。」

「そうかしら?だって貴族は、お金がある分、無い人に施しをするのが嗜みなのでしょう?お母様もきっと、良いって言われると思うわ。」

「いえ!では、分かりましたから私どもが報告致します。ですのでそれまでは、動かないでいて下さい。」

「そうだな、シェスティン様、おれらに任せてくれ。」

「そう?じゃあお願いするわ。よろしくね。」


 そうして、三人は帰る為に馬車の方へと歩いて行った。

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