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15. 何度目かの校外授業

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 それからも、バレエの公演を鑑賞したり、オーケストラの演奏を聴いたり、校外授業は毎回シェスティンが出席していた。
 その度に、ビルギッタとも話し、そして男の子も話し掛けてくれた。

 彼は、金色でサラサラの髪をしていてランナルと呼ばれていた。ランナルとは、この国の王太子の名前である事をシェスティンは知っていたので、それを口にすると、意外な答えが返ってきた。


「確かにランナルとは、この国の王太子の名前だ。けれど、その名前と同じ名前の人って結構いるよね。」


 だから困っちゃうのさ、と笑っていた彼に、王太子なのかそうではないのかはっきりとした答えをもらえなかった為にシェスティンは迷ってしまった。
きっと、毎日学校に通っていれば彼が王太子なのかそうでないのかなんて、すぐに分かったのだ。
だが、ここは教室ではないし、シェスティンはフレドリカとして来ている。その為、改めてそれ以上聞く事はしなかった。


(ビルギッタもランナルに対してそんなに畏まって話しているわけではないもの。どちらにせよ私も、同級生として話せば間違いないって事ね、きっと!)


 シェスティンはランナルに対しても始め、名前が分かった時にランナル、と口にした。だが、ランナルもそれを断った。


「ビルギッタが名前で呼ばれているのだし、俺にもそう呼んでよ。同じ学友なのだし、ね?」


 そう言われたら、シェスティンも新たに友人が出来て嬉しいと思った為に断る理由も特にないから了承した。すると不覚にもとても眩しい笑顔を返してくれたランナルに、シェスティンは顔を少しだけ赤くした。


(やだわ…顔が整っている人が微笑むと、胸がドキリと騒ぐのね。初めて知ったわ。)


 顔だけではなく所作も、普段触れあってきた野暮な庶民とは違って美しい為、そう思うのだとシェスティンは改めて思う。


(手の動きや言葉遣いも、細かな点まで品があるわ。それとも、貴族の男性は皆こうなのかしら?
フレドリカに話し掛けてくれる男性はランナルしかいないから、他の人と比べようがないのだけれど。)




 シェスティンは、ビルギッタとランナルと過ごした後は数日、二人の事を思い出していた。楽しく過ごした分、少し淋しくなるのだ。


(私も基礎学校に通えていたなら、友人と過ごす時間もあったのかしら。)


 ビルギッタとの会話は主に、その日の校外授業の内容ではあるけれど、それでも好みが似ている為か会話には常に花が咲いていた。
 ランナルとも、校外授業の内容が会話の主体である。たまに他のものに誘われたりもするけれど、その度にビルギッタが揶揄う為に社交辞令なのかがシェスティンには分からなかった。


(どちらにせよ、二人はフレドリカとして接してくれているのよね。シェスティンを誘っているのではないのだわ。それを思うと悲しいものがあるのだけれど……。)


 二人と打ち解けていく度に、騙しているような気になり、申し訳ないと帰り際に心の中で謝っているシェスティンであった。
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