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7. 出発
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「怖い?さぁ、ゆっくり手を伸ばして下さい。頸筋か横から触れるんです。そうそう、ゆっくりとね。」
こんな大きな馬、触れるかしらと思ったけれど、ルドと呼ばれた人が私に触れ方を教えてくれる。
馬は、気持ち良さそうにブルブルと言っているので一気に可愛いと思った。
「フフフ。気持ち良いの?私を乗せてくれる?毛並みも綺麗ね。」
そう声を掛けると、私の方へと首を曲げてつぶらな瞳で見つめてくる。
「いいと言っていますよ。」
少し笑いながら、ルドも頸筋を撫でながらそう言ってくれたので嬉しくなった。
「そう?良かった!」
私はそう答えて、ルドの方を見て笑いかけた。
「もう、まだですか?こちらは準備終わりましたよ!」
と、アルヤン副隊長に言われて振り向くと、すでに馬の背に乗った、インサとアルヤン副隊長が見下ろしている。
インサが前でアルヤン副隊長が後ろだった。
先ほど、全員で十人の軍服を着た隊員達にこれからよろしくお願いします、と挨拶した私は、再び馬の前へと恐る恐る行ったの。そしたら、ルドが話し掛けてくれ、馬を触れることになったのよね。
でも、その間にインサもアルヤン副隊長も、他の人達も馬に乗っていたのね。
「あ!ごめんなさい!」
私がそう言うと、
「仕方ないだろう?落馬すると馬が暫く怖くなるっていうじゃないか。慣らしていたんだ。」
と、ルドが庇ったように言ってくれた。
「ああそうですか。でも、そろそろ出ないと本当にやばいですよ。」
「分かったよ。ああ、アルヤンは口うるさい母親のようだな。」
「は!?」
ルドはそういうと笑いながら、私に『失礼します』と声を掛け、少し持ち上げてくれて、馬の背に乗せてくれた。
「わっ…!」
景色が変わる。ここの馬は足が長いからか眺めがとても良かった。
「いよっと。大丈夫ですか?」
ルドも素早く私の後ろに乗って私にそう言うと、
「よし、じゃあ行くぞ。ついてこい。」
と、後ろを向いて他の人達にも言い、出発した。
☆★
見渡す限りの平原。
右側には、円柱の高い塔が見える。あれが見張りの塔なのだろうか。ところどころ、黒く動いているのが見える。警備隊が見張りをしているのだろうか。
先ほど部屋で身支度を整えている時インサに、〝エルヴィーラ様〟の話を聞いていた。
それによると〝エルヴィーラ様〟は鎧を着た警備隊に紛れて幼い頃からこの地を走り回り、大きくなってからは高い塔に入り浸り、見張りをしていたのだとか。一度敵襲や、野生の獣が現れると立ち所に出て行って事態を治めてきてしまうのだとか。
高い塔は、見張り台でもあるし小さな要塞みたいになっているらしく、そこで生活出来るそう。
「男…確かに男性であればどんなにか幸せであったのかもしれませんね。嫡男であるオスヴィン様を支え、ここで一緒に住まわれていたのかもしれません。ですが、いつの間にか庭師のニバルトと…確かに訓練が休みの日は屋敷に帰ってくると、よく、庭にいらしたけれど。」
インサはそう言っていた。
私はそれを聞き、きっと彼女も日々の大変さから癒しを求めていたのかもしれないと漠然と思った。
☆★
「ルド様は、お上手なのですね。」
馬を進み始めて、操るのが上手いと思った。
私を包み込むように腕を回して馬の顔に付けられた手綱を持ち、私の体が揺れて傾くと素早く支えてくれる。
二人の距離が近く、体が触れる度に恥ずかしい気もして、その度に顔に熱が集まるのだけれど、きっと馬に二人で乗る時は仕方ないのだと考えないようにした。
「ん?何が…です?と言うか、ルドとお呼び下さい。」
「え?でも…」
後ろを振り向くと、思ったよりも距離が近く、背の高さが違うから顔の距離までは遠いと思ったのに、ルド様が腰を屈めていて私の顔のすぐ横に顔があった。
なので驚いて、すぐに前を向き直し、
「ご、ごめんなさい!」
と慌てて言った。すると、ルド様は、クスリと耳元で笑う声が聞こえ、
「私がいいと言うのですから、いいのですよ。」
と言った。
「あなたに褒められるなんてね。」
「え?」
「あ、いいえ。なんだか、噂で聞いていた雰囲気などとは随分違うようで。もっと荒々しいと聞いておりました。」
「荒々しい…?」
「失礼でしたか?でも今は褒めているのですよ。なんせ、小国の辺境には、銀獅子がいると言われていたのですから。」
銀獅子!?
「まぁ、だからこそあなたに白羽の矢を立てられたわけですね。」
「えと…?」
「あぁ。もしや聞いていないのです?もしくは、記憶が抜け落ちているのかな。我が国の皇帝と、…失礼。なんとお呼びすれば?」
「ふふ。私の事はどうぞ、エルヴィーラと。」
「では、この道中ではエルヴィーラと呼ばせてもらっても?」
「はい。」
「では。エルヴィーラと皇帝の婚姻を結んだ理由、説明して差し上げます。」
そう言うとルドは、話し出した。
こんな大きな馬、触れるかしらと思ったけれど、ルドと呼ばれた人が私に触れ方を教えてくれる。
馬は、気持ち良さそうにブルブルと言っているので一気に可愛いと思った。
「フフフ。気持ち良いの?私を乗せてくれる?毛並みも綺麗ね。」
そう声を掛けると、私の方へと首を曲げてつぶらな瞳で見つめてくる。
「いいと言っていますよ。」
少し笑いながら、ルドも頸筋を撫でながらそう言ってくれたので嬉しくなった。
「そう?良かった!」
私はそう答えて、ルドの方を見て笑いかけた。
「もう、まだですか?こちらは準備終わりましたよ!」
と、アルヤン副隊長に言われて振り向くと、すでに馬の背に乗った、インサとアルヤン副隊長が見下ろしている。
インサが前でアルヤン副隊長が後ろだった。
先ほど、全員で十人の軍服を着た隊員達にこれからよろしくお願いします、と挨拶した私は、再び馬の前へと恐る恐る行ったの。そしたら、ルドが話し掛けてくれ、馬を触れることになったのよね。
でも、その間にインサもアルヤン副隊長も、他の人達も馬に乗っていたのね。
「あ!ごめんなさい!」
私がそう言うと、
「仕方ないだろう?落馬すると馬が暫く怖くなるっていうじゃないか。慣らしていたんだ。」
と、ルドが庇ったように言ってくれた。
「ああそうですか。でも、そろそろ出ないと本当にやばいですよ。」
「分かったよ。ああ、アルヤンは口うるさい母親のようだな。」
「は!?」
ルドはそういうと笑いながら、私に『失礼します』と声を掛け、少し持ち上げてくれて、馬の背に乗せてくれた。
「わっ…!」
景色が変わる。ここの馬は足が長いからか眺めがとても良かった。
「いよっと。大丈夫ですか?」
ルドも素早く私の後ろに乗って私にそう言うと、
「よし、じゃあ行くぞ。ついてこい。」
と、後ろを向いて他の人達にも言い、出発した。
☆★
見渡す限りの平原。
右側には、円柱の高い塔が見える。あれが見張りの塔なのだろうか。ところどころ、黒く動いているのが見える。警備隊が見張りをしているのだろうか。
先ほど部屋で身支度を整えている時インサに、〝エルヴィーラ様〟の話を聞いていた。
それによると〝エルヴィーラ様〟は鎧を着た警備隊に紛れて幼い頃からこの地を走り回り、大きくなってからは高い塔に入り浸り、見張りをしていたのだとか。一度敵襲や、野生の獣が現れると立ち所に出て行って事態を治めてきてしまうのだとか。
高い塔は、見張り台でもあるし小さな要塞みたいになっているらしく、そこで生活出来るそう。
「男…確かに男性であればどんなにか幸せであったのかもしれませんね。嫡男であるオスヴィン様を支え、ここで一緒に住まわれていたのかもしれません。ですが、いつの間にか庭師のニバルトと…確かに訓練が休みの日は屋敷に帰ってくると、よく、庭にいらしたけれど。」
インサはそう言っていた。
私はそれを聞き、きっと彼女も日々の大変さから癒しを求めていたのかもしれないと漠然と思った。
☆★
「ルド様は、お上手なのですね。」
馬を進み始めて、操るのが上手いと思った。
私を包み込むように腕を回して馬の顔に付けられた手綱を持ち、私の体が揺れて傾くと素早く支えてくれる。
二人の距離が近く、体が触れる度に恥ずかしい気もして、その度に顔に熱が集まるのだけれど、きっと馬に二人で乗る時は仕方ないのだと考えないようにした。
「ん?何が…です?と言うか、ルドとお呼び下さい。」
「え?でも…」
後ろを振り向くと、思ったよりも距離が近く、背の高さが違うから顔の距離までは遠いと思ったのに、ルド様が腰を屈めていて私の顔のすぐ横に顔があった。
なので驚いて、すぐに前を向き直し、
「ご、ごめんなさい!」
と慌てて言った。すると、ルド様は、クスリと耳元で笑う声が聞こえ、
「私がいいと言うのですから、いいのですよ。」
と言った。
「あなたに褒められるなんてね。」
「え?」
「あ、いいえ。なんだか、噂で聞いていた雰囲気などとは随分違うようで。もっと荒々しいと聞いておりました。」
「荒々しい…?」
「失礼でしたか?でも今は褒めているのですよ。なんせ、小国の辺境には、銀獅子がいると言われていたのですから。」
銀獅子!?
「まぁ、だからこそあなたに白羽の矢を立てられたわけですね。」
「えと…?」
「あぁ。もしや聞いていないのです?もしくは、記憶が抜け落ちているのかな。我が国の皇帝と、…失礼。なんとお呼びすれば?」
「ふふ。私の事はどうぞ、エルヴィーラと。」
「では、この道中ではエルヴィーラと呼ばせてもらっても?」
「はい。」
「では。エルヴィーラと皇帝の婚姻を結んだ理由、説明して差し上げます。」
そう言うとルドは、話し出した。
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