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9. 野営
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ここを野営地とするとルドが言い、他の人達も各々準備をしだした。
ここは、木々が開けた場所で、周りもよく見渡せる。
デューレンケルン辺境伯の屋敷を出た当初は平原を進んでいたが、いつの間にか森の中を進んでいた。
そして話している間にいつの間にか国境を越え、どうやらアーネムヘルム帝国へ入国したようだった。けれど、壁があるわけでもないから、どこが国境だったのかはっきりとは分からなかった。
「エルヴィーラは…そこで待っていて下さい。」
そう言われ、インサと敷物に座って彼らが手際よく天幕や簡易的なかまどを準備されるのを見ていると、インサが声を掛けてきた。
「エルヴィーラ様…どうですか?先ほどは大丈夫でしたか?」
「え?何が?」
「いえ…ルド様とお話されていた様子でしたから。」
「あぁ、ボロを出していないかって事?多分大丈夫だと思うわ。今の皇帝陛下が、なぜ皇帝になったのかを聞いたの。お家騒動だったのね。」
「いえ、そういうわけでは…ええと?お家騒動?」
「あ…。」
「もしかしたら、私に話していいか迷われていますか?確かに、私はエルヴィーラ様が結婚式をされたらドルトムンボン国へと帰る人間ですからね。機密事項など詳しくは言わなくて宜しいですよ。そうですね…では一般的にどう公表されているか、お話しますね。」
「インサ…ありがとう。ええ、お願い。」
インサが教えてくれた事によると。
先代のディーデリック皇帝と、長男マルニクス様とその恋人のプリスカ様が相次いで流行病で亡くなった為に、急遽第二皇子のルドフィカス様が皇帝と成られたのだそう。
(本当に、実際とは異なりなるべく良くない部分は言わないよう公表したのね。)
先ほど、ルドが説明してくれなかったら、私もこれをインサに聞こうとは思わなかったし、聞けて良かった。ルドから聞いた真実はかなり悲しかったけれど。
愛する人との結婚を認めてもらいたかったのね。
だけど、だからってそれで自身の父を討つなんて、なんて気性が激しいのかしら!?
私は、そういう人には近づきたくないと思ってしまったが、その弟に嫁ぐわけで、大丈夫なのかと少し不安になってしまった。先ほどのルドからの話を聞くに、皇帝陛下には可哀想という思いしか沸かなかったけれど、兄とも同じ血が流れているのだから。
でも、兄弟で性格が違うというのは良くあるし…。
ただ、アロイサも言っていた。怒らせるとどうなるのか分からないと。不安が悶々と押し寄せてきた所で、ブルブルと頭を振って考えを変えようとした。
「ねぇ、デューレンケルン辺境伯領は、アーネムヘルム帝国から幾度となく攻め入られていたの?」
「それも聞かれたのですか?そうですね、知っておいた方がいいでしょう。
私は侍女ですから実際に現地で見たわけではないので、エルヴィーラ様やヘルフリート様や他の使用人、警備隊から聞いた話を総合的にまとめて話します。
デューレンケルン辺境伯領は、アーネムヘルム帝国から見ると東隣にあり、帝国からみるとドルトムンボン国はとても小さな国です。なので、属国としたかったのでしょう。七、八年程前から侵攻してきました。しかも、アーネムヘルム帝国側から来るのに帝国軍の軍服とは色が違うと言っておりまして、どうやらマルニクス様が独断で軍を率いて攻め入っていたらしいのです。けれど、エルヴィーラ様率いる我が警備隊も、其処らの軍隊には負けませんから、完膚無きまでに打ちのめしていたそうですよ。戦っている様は惚れ惚れするそうです。本来、獰猛な野生動物が人間に危害を加えないように戦っている警備隊ですから、我が警備隊はなかなか強いみたいですね。」
「そうだったのね。」
エルヴィーラ様も大変だったのね。
インサにいろいろと聞いている内に、いつの間にか野営地が出来たらしく、ルドに呼ばれたの。
「さぁ、出来ましたよ。こちらへ来て下さい。」
そう言われ、即席のかまどの近くへ行くと、ちょうど動物を解体している所だった。
「ひ…!」
私は思わず顔を背けてしまった。今しがた捕らえてきたようで、その動物は血まみれだったのよ。びっくりしたわ!
「どうされました?バイゾンは苦手です?」
それは、バイゾンと呼ばれる四本足の動物のようで、頭に大きな角が二本耳の横に生えていた。
そ、そうか…きっと豪傑と言われていた〝エルヴィーラ様〟なら目を逸らしたりしないわよね。
解体現場は目の端に追いやって見ないようにして、気にしてない風を装ってそちらを見て返事を返した。
「い、いえ…ちょっと驚いたので。獲って来られたの?」
「はい。ちょっと奥へ行ったらいましたから。現地調達すれば、荷物も減りますからね。あ、火を絶やさなければ寄って来ないので、大丈夫ですよ。って、知っていますよね。」
そうルドに言われてしまった。
きっと、〝エルヴィーラ様〟は野営も日常茶飯事だったのかもしれないわ…この先、私本当にやっていけるのかしら。
ここは、木々が開けた場所で、周りもよく見渡せる。
デューレンケルン辺境伯の屋敷を出た当初は平原を進んでいたが、いつの間にか森の中を進んでいた。
そして話している間にいつの間にか国境を越え、どうやらアーネムヘルム帝国へ入国したようだった。けれど、壁があるわけでもないから、どこが国境だったのかはっきりとは分からなかった。
「エルヴィーラは…そこで待っていて下さい。」
そう言われ、インサと敷物に座って彼らが手際よく天幕や簡易的なかまどを準備されるのを見ていると、インサが声を掛けてきた。
「エルヴィーラ様…どうですか?先ほどは大丈夫でしたか?」
「え?何が?」
「いえ…ルド様とお話されていた様子でしたから。」
「あぁ、ボロを出していないかって事?多分大丈夫だと思うわ。今の皇帝陛下が、なぜ皇帝になったのかを聞いたの。お家騒動だったのね。」
「いえ、そういうわけでは…ええと?お家騒動?」
「あ…。」
「もしかしたら、私に話していいか迷われていますか?確かに、私はエルヴィーラ様が結婚式をされたらドルトムンボン国へと帰る人間ですからね。機密事項など詳しくは言わなくて宜しいですよ。そうですね…では一般的にどう公表されているか、お話しますね。」
「インサ…ありがとう。ええ、お願い。」
インサが教えてくれた事によると。
先代のディーデリック皇帝と、長男マルニクス様とその恋人のプリスカ様が相次いで流行病で亡くなった為に、急遽第二皇子のルドフィカス様が皇帝と成られたのだそう。
(本当に、実際とは異なりなるべく良くない部分は言わないよう公表したのね。)
先ほど、ルドが説明してくれなかったら、私もこれをインサに聞こうとは思わなかったし、聞けて良かった。ルドから聞いた真実はかなり悲しかったけれど。
愛する人との結婚を認めてもらいたかったのね。
だけど、だからってそれで自身の父を討つなんて、なんて気性が激しいのかしら!?
私は、そういう人には近づきたくないと思ってしまったが、その弟に嫁ぐわけで、大丈夫なのかと少し不安になってしまった。先ほどのルドからの話を聞くに、皇帝陛下には可哀想という思いしか沸かなかったけれど、兄とも同じ血が流れているのだから。
でも、兄弟で性格が違うというのは良くあるし…。
ただ、アロイサも言っていた。怒らせるとどうなるのか分からないと。不安が悶々と押し寄せてきた所で、ブルブルと頭を振って考えを変えようとした。
「ねぇ、デューレンケルン辺境伯領は、アーネムヘルム帝国から幾度となく攻め入られていたの?」
「それも聞かれたのですか?そうですね、知っておいた方がいいでしょう。
私は侍女ですから実際に現地で見たわけではないので、エルヴィーラ様やヘルフリート様や他の使用人、警備隊から聞いた話を総合的にまとめて話します。
デューレンケルン辺境伯領は、アーネムヘルム帝国から見ると東隣にあり、帝国からみるとドルトムンボン国はとても小さな国です。なので、属国としたかったのでしょう。七、八年程前から侵攻してきました。しかも、アーネムヘルム帝国側から来るのに帝国軍の軍服とは色が違うと言っておりまして、どうやらマルニクス様が独断で軍を率いて攻め入っていたらしいのです。けれど、エルヴィーラ様率いる我が警備隊も、其処らの軍隊には負けませんから、完膚無きまでに打ちのめしていたそうですよ。戦っている様は惚れ惚れするそうです。本来、獰猛な野生動物が人間に危害を加えないように戦っている警備隊ですから、我が警備隊はなかなか強いみたいですね。」
「そうだったのね。」
エルヴィーラ様も大変だったのね。
インサにいろいろと聞いている内に、いつの間にか野営地が出来たらしく、ルドに呼ばれたの。
「さぁ、出来ましたよ。こちらへ来て下さい。」
そう言われ、即席のかまどの近くへ行くと、ちょうど動物を解体している所だった。
「ひ…!」
私は思わず顔を背けてしまった。今しがた捕らえてきたようで、その動物は血まみれだったのよ。びっくりしたわ!
「どうされました?バイゾンは苦手です?」
それは、バイゾンと呼ばれる四本足の動物のようで、頭に大きな角が二本耳の横に生えていた。
そ、そうか…きっと豪傑と言われていた〝エルヴィーラ様〟なら目を逸らしたりしないわよね。
解体現場は目の端に追いやって見ないようにして、気にしてない風を装ってそちらを見て返事を返した。
「い、いえ…ちょっと驚いたので。獲って来られたの?」
「はい。ちょっと奥へ行ったらいましたから。現地調達すれば、荷物も減りますからね。あ、火を絶やさなければ寄って来ないので、大丈夫ですよ。って、知っていますよね。」
そうルドに言われてしまった。
きっと、〝エルヴィーラ様〟は野営も日常茶飯事だったのかもしれないわ…この先、私本当にやっていけるのかしら。
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