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5. 月夜会
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「では、エミーリエ様。私は待機室に居りますから、何かございましたら近くにいる従僕や侍女に言付けなさって下さいね。いいですか、マナーはお教えしましたから、失礼の無きようどうぞ乗り切って下さいね。いつものようになされば、全く問題はございませんから。」
カリツは侍女の為、会場には一緒に入れない。私一人で行かないといけないのがとても心細いが、この雰囲気を堪能すると決めたのだから、一人でも行かないと。
扉を開け放たれた広いダンスホールは、その中央で音楽に合わせて踊っている人もいる。そのサイドにはテーブルが置かれ、軽食が置いてあるのだとか。壁際に沿って、イスが置いてありそこで食事を取ったり談笑したりする事も出来るようになっていた。
テラスから庭園へと外に出ると、そこがメイン会場で、足下には仄かに光る灯りが邪魔にならないよう、道を作るように置かれている。
テーブルが少し離れた位置に置いてあり、その上には飲み物や軽食が並んでいた。
ダンスホール以外にも、疲れてしまった人用に休憩できる部屋もあるらしいが、カリツには『決して、誘われても部屋には行きませんように!それから、暗い庭園で、一人になってはいけませんよ!』と何度も言われた。
けれど私、よく考えたら外にあまり出歩けなかったから友達どころか知り合いもいないのよね。だから、一人になるなと注意されても無理だわ。
私は、あまり目立たない所へ行こうと思い、庭園へ出る事にした。
本音を言うと、美味しそうな軽食を食べたかったが、それを取って食べている人が誰もいなかった為、目立ってしまうと思ったから。
(わぁ…!)
満月が、温かい光を放っていてとても綺麗。普段よりも二倍ほどの大きさになっていて、手が届きそうに思えた。
どこか、座れる場所はないかしら。そう思って席を探していると、後ろから声が掛かった。
「やぁ、君かい?なるほど…これは素晴らしいね。」
振り向くと、金髪で緑の瞳の、全身金色の正装をしている男性がいた。背は私より少し高いほど。
もしかして、この方がカッセル王子なのかしら?
私は、なんて返そうかと思ったけれど結局ぺこりとお辞儀をしただけに留めた。
だって、もしこの国の王子だったなら、声を掛けていいと許可を頂いていないし、そうでなくても自己紹介をされていないので無闇にこちらから名乗らない方がいいとカリツに言われていたから。
「これは逃したくないのだろうね。どうだい?こちらへ来てくれないか。」
どうしましょう?カリツは男性に誘われても付いて行くなと言っていたわ。
「ええと…ですが…。」
そう言って私は後ずさりをしてしまった。
「あはは。別に取って食おうってんじゃないよ。でもまぁ、確か君はこういう所は慣れていないのだよね、苦手かな?じゃあ少し奥の噴水で待っていて。大丈夫!…おい。」
「はっ。」
そう、金髪の男性が言うと、暗闇から剣を腰にぶら下げた近衛兵が一人出てきた。
「彼を君に付けるよ。だから、暗い所へ行っても大丈夫。奥の、噴水ね。」
カリツは侍女の為、会場には一緒に入れない。私一人で行かないといけないのがとても心細いが、この雰囲気を堪能すると決めたのだから、一人でも行かないと。
扉を開け放たれた広いダンスホールは、その中央で音楽に合わせて踊っている人もいる。そのサイドにはテーブルが置かれ、軽食が置いてあるのだとか。壁際に沿って、イスが置いてありそこで食事を取ったり談笑したりする事も出来るようになっていた。
テラスから庭園へと外に出ると、そこがメイン会場で、足下には仄かに光る灯りが邪魔にならないよう、道を作るように置かれている。
テーブルが少し離れた位置に置いてあり、その上には飲み物や軽食が並んでいた。
ダンスホール以外にも、疲れてしまった人用に休憩できる部屋もあるらしいが、カリツには『決して、誘われても部屋には行きませんように!それから、暗い庭園で、一人になってはいけませんよ!』と何度も言われた。
けれど私、よく考えたら外にあまり出歩けなかったから友達どころか知り合いもいないのよね。だから、一人になるなと注意されても無理だわ。
私は、あまり目立たない所へ行こうと思い、庭園へ出る事にした。
本音を言うと、美味しそうな軽食を食べたかったが、それを取って食べている人が誰もいなかった為、目立ってしまうと思ったから。
(わぁ…!)
満月が、温かい光を放っていてとても綺麗。普段よりも二倍ほどの大きさになっていて、手が届きそうに思えた。
どこか、座れる場所はないかしら。そう思って席を探していると、後ろから声が掛かった。
「やぁ、君かい?なるほど…これは素晴らしいね。」
振り向くと、金髪で緑の瞳の、全身金色の正装をしている男性がいた。背は私より少し高いほど。
もしかして、この方がカッセル王子なのかしら?
私は、なんて返そうかと思ったけれど結局ぺこりとお辞儀をしただけに留めた。
だって、もしこの国の王子だったなら、声を掛けていいと許可を頂いていないし、そうでなくても自己紹介をされていないので無闇にこちらから名乗らない方がいいとカリツに言われていたから。
「これは逃したくないのだろうね。どうだい?こちらへ来てくれないか。」
どうしましょう?カリツは男性に誘われても付いて行くなと言っていたわ。
「ええと…ですが…。」
そう言って私は後ずさりをしてしまった。
「あはは。別に取って食おうってんじゃないよ。でもまぁ、確か君はこういう所は慣れていないのだよね、苦手かな?じゃあ少し奥の噴水で待っていて。大丈夫!…おい。」
「はっ。」
そう、金髪の男性が言うと、暗闇から剣を腰にぶら下げた近衛兵が一人出てきた。
「彼を君に付けるよ。だから、暗い所へ行っても大丈夫。奥の、噴水ね。」
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