【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる

文字の大きさ
5 / 17

5. 月夜会

しおりを挟む
「では、エミーリエ様。私は待機室に居りますから、何かございましたら近くにいる従僕や侍女に言付けなさって下さいね。いいですか、マナーはお教えしましたから、失礼の無きようどうぞ乗り切って下さいね。いつものようになされば、全く問題はございませんから。」

 カリツは侍女の為、会場には一緒に入れない。私一人で行かないといけないのがとても心細いが、この雰囲気を堪能すると決めたのだから、一人でも行かないと。

 扉を開け放たれた広いダンスホールは、その中央で音楽に合わせて踊っている人もいる。そのサイドにはテーブルが置かれ、軽食が置いてあるのだとか。壁際に沿って、イスが置いてありそこで食事を取ったり談笑したりする事も出来るようになっていた。

 テラスから庭園へと外に出ると、そこがメイン会場で、足下には仄かに光る灯りが邪魔にならないよう、道を作るように置かれている。
テーブルが少し離れた位置に置いてあり、その上には飲み物や軽食が並んでいた。

 ダンスホール以外にも、疲れてしまった人用に休憩できる部屋もあるらしいが、カリツには『決して、誘われても部屋には行きませんように!それから、暗い庭園で、一人になってはいけませんよ!』と何度も言われた。
けれど私、よく考えたら外にあまり出歩けなかったから友達どころか知り合いもいないのよね。だから、一人になるなと注意されても無理だわ。


 私は、あまり目立たない所へ行こうと思い、庭園へ出る事にした。
本音を言うと、美味しそうな軽食を食べたかったが、それを取って食べている人が誰もいなかった為、目立ってしまうと思ったから。


(わぁ…!)


 満月が、温かい光を放っていてとても綺麗。普段よりも二倍ほどの大きさになっていて、手が届きそうに思えた。

 どこか、座れる場所はないかしら。そう思って席を探していると、後ろから声が掛かった。

「やぁ、君かい?なるほど…これは素晴らしいね。」

 振り向くと、金髪で緑の瞳の、全身金色の正装をしている男性がいた。背は私より少し高いほど。
もしかして、この方がカッセル王子なのかしら?

 私は、なんて返そうかと思ったけれど結局ぺこりとお辞儀をしただけに留めた。
だって、もしこの国の王子カッセル王子だったなら、声を掛けていいと許可を頂いていないし、そうでなくても自己紹介をされていないので無闇にこちらから名乗らない方がいいとカリツに言われていたから。

「これは逃したくないのだろうね。どうだい?こちらへ来てくれないか。」

 どうしましょう?カリツは男性に誘われても付いて行くなと言っていたわ。

「ええと…ですが…。」

 そう言って私は後ずさりをしてしまった。

「あはは。別に取って食おうってんじゃないよ。でもまぁ、確か君はこういう所は慣れていないのだよね、苦手かな?じゃあ少し奥の噴水で待っていて。大丈夫!…おい。」

「はっ。」

 そう、金髪の男性が言うと、暗闇から剣を腰にぶら下げた近衛兵が一人出てきた。

「彼を君に付けるよ。だから、暗い所へ行っても大丈夫。奥の、噴水ね。」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい

キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。 妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。 そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。 だけどそれは、彼女の求めた展開だった。

貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。 ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。 その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。 婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。 婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。 だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。

妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます

キョウキョウ
恋愛
 回復魔法を得意としている、姉妹の貴族令嬢が居た。  姉のマリアンヌと、妹のルイーゼ。  マクシミリアン王子は、姉のマリアンヌと婚約関係を結んでおり、妹のルイーゼとも面識があった。  ある日、妹のルイーゼが回復魔法で怪我人を治療している場面に遭遇したマクシミリアン王子。それを見て、姉のマリアンヌよりも能力が高いと思った彼は、今の婚約関係を破棄しようと思い立った。  優秀な妹の方が、婚約者に相応しいと考えたから。自分のパートナーは優秀な人物であるべきだと、そう思っていた。  マクシミリアン王子は、大きな勘違いをしていた。見た目が派手な魔法を扱っていたから、ルイーゼの事を優秀な魔法使いだと思い込んでいたのだ。それに比べて、マリアンヌの魔法は地味だった。  しかし実際は、マリアンヌの回復魔法のほうが効果が高い。それは、見た目では分からない実力。回復魔法についての知識がなければ、分からないこと。ルイーゼよりもマリアンヌに任せたほうが確実で、完璧に治る。  だが、それを知らないマクシミリアン王子は、マリアンヌではなくルイーゼを選んだ。  婚約を破棄されたマリアンヌは、もっと魔法の腕を磨くため修行の旅に出ることにした。国を離れて、まだ見ぬ世界へ飛び込んでいく。  マリアンヌが居なくなってから、マクシミリアン王子は後悔することになる。その事実に気付くのは、マリアンヌが居なくなってしばらく経ってから。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

婚約破棄を言い渡された側なのに、俺たち...やり直せないか...だと?やり直せません。残念でした〜

神々廻
恋愛
私は才色兼備と謳われ、完璧な令嬢....そう言われていた。 しかし、初恋の婚約者からは婚約破棄を言い渡される そして、数年後に貴族の通う学園で"元"婚約者と再会したら..... 「俺たち....やり直せないか?」 お前から振った癖になに言ってんの?やり直せる訳無いだろ

【完結】離縁されるお母様を幸せにする方法

山葵
恋愛
僕は愛するお母様の為に頑張るんだ!

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私

青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。 中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。

処理中です...