【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる

文字の大きさ
6 / 17

6. 再会

しおりを挟む
 噴水の所へと言われたので、少し迷いはしたけれど、近衛兵が付いてくれているというし、庭園の奥へも行ってみたいと思ったから、行ってみる事にした。

 近衛兵は、私が進み出すと上手い具合に闇に隠れた。

 テラスから見ると生け垣の手前には背の低い花が咲きほこっていた。
生け垣の向こうには、確かに左側は迷路のようにくねくねと、生け垣が短いもの、長いものと様々に並んでいた。
けれど、右側の生け垣は等間隔にならんでいて、そこを進んで行くと水の音が聞こえてきた。


(水の音だわ。それが噴水なのかしら?)


 生け垣の切れ目を覗いて見ると、開けた所に楕円形の噴水があった。その周りには、噴水を望めるように少し離れた位置にベンチが等間隔に置いてあった。

 手前のベンチには、人がいたため、反対側のベンチへ行ってみる。


(まぁ…!)

 噴水は大きいので、歩きながら見てみると、噴水の飛沫が当たらない水面に月が映っていた。

(綺麗…。)

 これが見れただけでも、今日来た甲斐があったわね。そう思いながら、ベンチに座り、上を見上げてまん丸の月や星空を眺めていた。


「ここに居たんだ。」

 ふと、声が聞こえてきたので視線を戻すと、男性が一人、立っていた。逆光で顔は見にくいけれど、銀色の髪がキラキラと輝いていた。

「随分待たせてしまったけれど、会いに来たよ。そのドレス…暗い中でも一際光り輝いていてとても綺麗だね。君に素晴らしくよく似合っているよ。」

 随分?そんなに私、待ったかしら?しかも、私は先ほど金髪の男性にここで待っていて、と言われたのではなかったかしら?

「すみません…人違いでは?」

 私は、そう言葉を返した。

 男性は数歩近づいてきて、ベンチの前に立った。すると、顔に光が当たり、端正な顔をしていることが分かった。

 …でも、この顔、どこかで…。

「いやぁ、もう随分前だったから、忘れられちゃったかな。そうだったら、また一からやり直すよ。僕はルドヴィーク。君に本物の指輪を渡しに来たよ。ここに来るまで長く掛かってしまってごめん。」

 本物の指輪?指輪って…まさか?

「…うちの屋敷に来たことあります?」

「そう!思い出してくれた?良かったー!どう?あの約束、まだ有効だったなら嵌めてみてくれないかな。」

「…!」

 私は驚いてしまって、思わず手を口に持っていって押さえた。

「どうだろう…?」

「え、ええと、本当にいいのかしら。」

「もちろんだよ!この為に僕は、今までやって来たんだ!すぐに迎えに来れなくて、本当にごめん。でも君にやっと会えた…。さぁ、これはね、僕の国の宝石だよ。セレンディバイトというんだ。あまり、市場には出回ってはいないから珍しいんだよ。」

「まぁ…!そんな貴重なもの、いけませんわ!」

「いいや、だからこそ君にあげたいんだ、エミーリエ。」

「いえ…その…お恥ずかしながら私、何でも義母や義妹に取られてしまいますの。ですから…」

「あぁ、それなら大丈夫。カッセルが上手くやってくれるからさ。」

 え!?カッセルってカッセル王子のこと!?

 よ、呼び捨てられるほど仲がよろしいの!?…確かに、先ほどの金髪の男性はカッセル王子だとすれば、仲がよろしいからここにいたら彼に会えると言づけてくれたのよね?



「あぁ、まだいたね。なんだよ、まだ途中だったの?振られたなら、彼女も私の候補に入れちゃうよ?」

「や、止めろ!カッセルちょっと来るのが早すぎだろ?今、エミーリエに指輪を渡そうとしていたんだ。」

 私が悩んでいたから気付かなかったけれど、いつもの間にか先ほどの金髪の男性も来て声を掛けてきた。

「いや、遠慮されていたじゃないか。どうなの?君、ルドヴィークから指輪もらわないの?いらないの?」

「え?いいえ、あの…。」

 もらわないといらないって、両方断る言い方ですけれど…?
カッセル王子はそう言いながらルドヴィーク様を見てニヤニヤとしていたから、揶揄いながら仰っているのかしら。

「カッセル、彼女は、義母や義妹に取られないか心配らしいんだ。」

「あぁ、なんだその事?心配いらないよ。私がいい案を思い付いたからね。明日には分かるから言うけどね、今日選んだとされる婚約者候補達を、王宮に暫く滞在させる事にするんだ。君の義妹も名前を入れておいた。ま、儚い夢を見せて期待させて、どん底まで落としてやるよ。だから、安心してルドヴィークの指輪を受け取ってやってよ。」

 …なんだか、凄い話を聞いたわ。そして、随分と不穏な事を言われた気がしましたけれど、気のせいかしら…。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい

キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。 妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。 そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。 だけどそれは、彼女の求めた展開だった。

【完結】離縁されるお母様を幸せにする方法

山葵
恋愛
僕は愛するお母様の為に頑張るんだ!

貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。 ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。 その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。 婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。 婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。 だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~

キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。 事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。 イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。 当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。 どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。 そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。 報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。 こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。

短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました

朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。 ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す── 「また、大切な人に置いていかれた」 残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。 これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...