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6. 再会
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噴水の所へと言われたので、少し迷いはしたけれど、近衛兵が付いてくれているというし、庭園の奥へも行ってみたいと思ったから、行ってみる事にした。
近衛兵は、私が進み出すと上手い具合に闇に隠れた。
テラスから見ると生け垣の手前には背の低い花が咲きほこっていた。
生け垣の向こうには、確かに左側は迷路のようにくねくねと、生け垣が短いもの、長いものと様々に並んでいた。
けれど、右側の生け垣は等間隔にならんでいて、そこを進んで行くと水の音が聞こえてきた。
(水の音だわ。それが噴水なのかしら?)
生け垣の切れ目を覗いて見ると、開けた所に楕円形の噴水があった。その周りには、噴水を望めるように少し離れた位置にベンチが等間隔に置いてあった。
手前のベンチには、人がいたため、反対側のベンチへ行ってみる。
(まぁ…!)
噴水は大きいので、歩きながら見てみると、噴水の飛沫が当たらない水面に月が映っていた。
(綺麗…。)
これが見れただけでも、今日来た甲斐があったわね。そう思いながら、ベンチに座り、上を見上げてまん丸の月や星空を眺めていた。
「ここに居たんだ。」
ふと、声が聞こえてきたので視線を戻すと、男性が一人、立っていた。逆光で顔は見にくいけれど、銀色の髪がキラキラと輝いていた。
「随分待たせてしまったけれど、会いに来たよ。そのドレス…暗い中でも一際光り輝いていてとても綺麗だね。君に素晴らしくよく似合っているよ。」
随分?そんなに私、待ったかしら?しかも、私は先ほど金髪の男性にここで待っていて、と言われたのではなかったかしら?
「すみません…人違いでは?」
私は、そう言葉を返した。
男性は数歩近づいてきて、ベンチの前に立った。すると、顔に光が当たり、端正な顔をしていることが分かった。
…でも、この顔、どこかで…。
「いやぁ、もう随分前だったから、忘れられちゃったかな。そうだったら、また一からやり直すよ。僕はルドヴィーク。君に本物の指輪を渡しに来たよ。ここに来るまで長く掛かってしまってごめん。」
本物の指輪?指輪って…まさか?
「…うちの屋敷に来たことあります?」
「そう!思い出してくれた?良かったー!どう?あの約束、まだ有効だったなら嵌めてみてくれないかな。」
「…!」
私は驚いてしまって、思わず手を口に持っていって押さえた。
「どうだろう…?」
「え、ええと、本当にいいのかしら。」
「もちろんだよ!この為に僕は、今までやって来たんだ!すぐに迎えに来れなくて、本当にごめん。でも君にやっと会えた…。さぁ、これはね、僕の国の宝石だよ。セレンディバイトというんだ。あまり、市場には出回ってはいないから珍しいんだよ。」
「まぁ…!そんな貴重なもの、いけませんわ!」
「いいや、だからこそ君にあげたいんだ、エミーリエ。」
「いえ…その…お恥ずかしながら私、何でも義母や義妹に取られてしまいますの。ですから…」
「あぁ、それなら大丈夫。カッセルが上手くやってくれるからさ。」
え!?カッセルってカッセル王子のこと!?
よ、呼び捨てられるほど仲がよろしいの!?…確かに、先ほどの金髪の男性はカッセル王子だとすれば、仲がよろしいからここにいたら彼に会えると言づけてくれたのよね?
「あぁ、まだいたね。なんだよ、まだ途中だったの?振られたなら、彼女も私の候補に入れちゃうよ?」
「や、止めろ!カッセルちょっと来るのが早すぎだろ?今、エミーリエに指輪を渡そうとしていたんだ。」
私が悩んでいたから気付かなかったけれど、いつもの間にか先ほどの金髪の男性も来て声を掛けてきた。
「いや、遠慮されていたじゃないか。どうなの?君、ルドヴィークから指輪もらわないの?いらないの?」
「え?いいえ、あの…。」
もらわないといらないって、両方断る言い方ですけれど…?
カッセル王子はそう言いながらルドヴィーク様を見てニヤニヤとしていたから、揶揄いながら仰っているのかしら。
「カッセル、彼女は、義母や義妹に取られないか心配らしいんだ。」
「あぁ、なんだその事?心配いらないよ。私がいい案を思い付いたからね。明日には分かるから言うけどね、今日選んだとされる婚約者候補達を、王宮に暫く滞在させる事にするんだ。君の義妹も名前を入れておいた。ま、儚い夢を見せて期待させて、どん底まで落としてやるよ。だから、安心してルドヴィークの指輪を受け取ってやってよ。」
…なんだか、凄い話を聞いたわ。そして、随分と不穏な事を言われた気がしましたけれど、気のせいかしら…。
近衛兵は、私が進み出すと上手い具合に闇に隠れた。
テラスから見ると生け垣の手前には背の低い花が咲きほこっていた。
生け垣の向こうには、確かに左側は迷路のようにくねくねと、生け垣が短いもの、長いものと様々に並んでいた。
けれど、右側の生け垣は等間隔にならんでいて、そこを進んで行くと水の音が聞こえてきた。
(水の音だわ。それが噴水なのかしら?)
生け垣の切れ目を覗いて見ると、開けた所に楕円形の噴水があった。その周りには、噴水を望めるように少し離れた位置にベンチが等間隔に置いてあった。
手前のベンチには、人がいたため、反対側のベンチへ行ってみる。
(まぁ…!)
噴水は大きいので、歩きながら見てみると、噴水の飛沫が当たらない水面に月が映っていた。
(綺麗…。)
これが見れただけでも、今日来た甲斐があったわね。そう思いながら、ベンチに座り、上を見上げてまん丸の月や星空を眺めていた。
「ここに居たんだ。」
ふと、声が聞こえてきたので視線を戻すと、男性が一人、立っていた。逆光で顔は見にくいけれど、銀色の髪がキラキラと輝いていた。
「随分待たせてしまったけれど、会いに来たよ。そのドレス…暗い中でも一際光り輝いていてとても綺麗だね。君に素晴らしくよく似合っているよ。」
随分?そんなに私、待ったかしら?しかも、私は先ほど金髪の男性にここで待っていて、と言われたのではなかったかしら?
「すみません…人違いでは?」
私は、そう言葉を返した。
男性は数歩近づいてきて、ベンチの前に立った。すると、顔に光が当たり、端正な顔をしていることが分かった。
…でも、この顔、どこかで…。
「いやぁ、もう随分前だったから、忘れられちゃったかな。そうだったら、また一からやり直すよ。僕はルドヴィーク。君に本物の指輪を渡しに来たよ。ここに来るまで長く掛かってしまってごめん。」
本物の指輪?指輪って…まさか?
「…うちの屋敷に来たことあります?」
「そう!思い出してくれた?良かったー!どう?あの約束、まだ有効だったなら嵌めてみてくれないかな。」
「…!」
私は驚いてしまって、思わず手を口に持っていって押さえた。
「どうだろう…?」
「え、ええと、本当にいいのかしら。」
「もちろんだよ!この為に僕は、今までやって来たんだ!すぐに迎えに来れなくて、本当にごめん。でも君にやっと会えた…。さぁ、これはね、僕の国の宝石だよ。セレンディバイトというんだ。あまり、市場には出回ってはいないから珍しいんだよ。」
「まぁ…!そんな貴重なもの、いけませんわ!」
「いいや、だからこそ君にあげたいんだ、エミーリエ。」
「いえ…その…お恥ずかしながら私、何でも義母や義妹に取られてしまいますの。ですから…」
「あぁ、それなら大丈夫。カッセルが上手くやってくれるからさ。」
え!?カッセルってカッセル王子のこと!?
よ、呼び捨てられるほど仲がよろしいの!?…確かに、先ほどの金髪の男性はカッセル王子だとすれば、仲がよろしいからここにいたら彼に会えると言づけてくれたのよね?
「あぁ、まだいたね。なんだよ、まだ途中だったの?振られたなら、彼女も私の候補に入れちゃうよ?」
「や、止めろ!カッセルちょっと来るのが早すぎだろ?今、エミーリエに指輪を渡そうとしていたんだ。」
私が悩んでいたから気付かなかったけれど、いつもの間にか先ほどの金髪の男性も来て声を掛けてきた。
「いや、遠慮されていたじゃないか。どうなの?君、ルドヴィークから指輪もらわないの?いらないの?」
「え?いいえ、あの…。」
もらわないといらないって、両方断る言い方ですけれど…?
カッセル王子はそう言いながらルドヴィーク様を見てニヤニヤとしていたから、揶揄いながら仰っているのかしら。
「カッセル、彼女は、義母や義妹に取られないか心配らしいんだ。」
「あぁ、なんだその事?心配いらないよ。私がいい案を思い付いたからね。明日には分かるから言うけどね、今日選んだとされる婚約者候補達を、王宮に暫く滞在させる事にするんだ。君の義妹も名前を入れておいた。ま、儚い夢を見せて期待させて、どん底まで落としてやるよ。だから、安心してルドヴィークの指輪を受け取ってやってよ。」
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