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7. 父に会う
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月夜会での出来事は、夢のようだった。
月夜会は夜が深まるまで行われ、その後はたいてい王都にある宿屋や、別邸、近い人は自分の屋敷へと帰る。
私達は今朝泊まっていた宿に帰ろうと思っていた。が、何かあるといけないからと、ルドヴィーク様が高級宿に手配し直してくれたとカリツが言った。
そして、翌日、ルドヴィーク様がその宿に迎えに来てくれた。
なんと、お父様に直接挨拶したいからと言って下さった。
なのでうちの馬車は、空のまま一足先に帰ってもらって、それを伝えてもらう事とした。
うちの馬車もそんなに乗り心地は悪くはなかったのだけれど、ルドヴィーク様が乗って来られた馬車は外見は質素であったのに、中にクッションが幾つもあり、とても馬車に乗っているとは思えないほど居心地がよかった。
行きは、私とカリツで一緒に馬車に乗ってきたけれど、ルドヴィーク様と乗る事は畏れ多くて出来ないとカリツは従者が乗る席に座った。私は、むしろ一緒に乗って欲しかったのだけれど…。
だからせめて、カリツにもクッションを渡そうとしたけれど、従者用の席もそれなりにクッションが敷いてあったので大丈夫だとお断りされた。
「はぁ…やっと、エミーリエとゆっくり出来るね。やっとだ…。本当に嬉しいよ。」
ルドヴィーク様は私の隣に座り、そう言って頭を何度も何度も撫でてくれていた。
私は、ものすごく緊張していたけれど、同時にとても懐かしく、嬉しく感じてしまった為されるがままだった。
ソベレツ領の屋敷に着くと、お父様と、義理の弟であるダーヴィズが久し振りに帰って来ていた。いつくらいから会っていないか覚えていないくらいだ。
きっと、一足先に帰った御者が内容を執事に伝え、お父様がいる辺境の砦に伝えに行ってくれたのだろう。
南北に長いソベレツ領の、北の国境沿いには高く真っ直ぐ伸びた壁が作られていて、砦も幾つもその壁沿いにある。好戦的なセンプテン国が、幾度となく侵入しようとしてくるから、対策としてそれらを作ったらしい。
西隣のバウツェン国へ通じる国境沿いには壁なんてないから、センプテン国に近い方はいつも緊張感漂っているのだとか。
「ルドヴィーク様、これはこれは…!十数年振りですな。」
お父様が、ダーヴィズと共に玄関ホールで出迎えてくれた。
「キーベック辺境伯殿。いろいろと話したい事はありますが…よろしいでしょうか。」
「は、はい。よろしければ、応接室へ案内します。どうぞこちらへ。」
応接室へ付いて、ルドヴィーク様と私が奥のソファに、お父様と義弟のダーヴィズが扉に近いソファへと座り終わると早々にお父様が話し出した。
「ルドヴィーク様、それで…話とは一体…?」
「キーベック辺境伯殿。ユスティーナ様が亡くなられて以来ですね。あなたは、ユスティーナ様が亡くなって一月もしない内に、再婚なされた。」
「え?は、はい…エミーリエが淋しいと思ったからです。まだ、母親を必要とする四歳の年齢でしたから。」
「本当にそれだけですか?…まぁ、それはこの際どうでもいい。それ以来、エミーリエが蔑ろにされていた事はご存じでしたか?まさか、キーベック辺境伯殿も一緒になって…」
「ちょ、ちょっとお待ちください!蔑ろ?いや、私がセンプテン国への対応に忙しい最中、家の事を全てヨハナに任せておりまして、エミーリエにも良くしていると…!」
やっぱりお父様には全く伝わっていなかったのね…お父様にまで嫌われていたわけではなかっただけ、良かったと思いましょうか。けれど、もう少し気に掛けて下さると有り難かったのですけれど。
月夜会は夜が深まるまで行われ、その後はたいてい王都にある宿屋や、別邸、近い人は自分の屋敷へと帰る。
私達は今朝泊まっていた宿に帰ろうと思っていた。が、何かあるといけないからと、ルドヴィーク様が高級宿に手配し直してくれたとカリツが言った。
そして、翌日、ルドヴィーク様がその宿に迎えに来てくれた。
なんと、お父様に直接挨拶したいからと言って下さった。
なのでうちの馬車は、空のまま一足先に帰ってもらって、それを伝えてもらう事とした。
うちの馬車もそんなに乗り心地は悪くはなかったのだけれど、ルドヴィーク様が乗って来られた馬車は外見は質素であったのに、中にクッションが幾つもあり、とても馬車に乗っているとは思えないほど居心地がよかった。
行きは、私とカリツで一緒に馬車に乗ってきたけれど、ルドヴィーク様と乗る事は畏れ多くて出来ないとカリツは従者が乗る席に座った。私は、むしろ一緒に乗って欲しかったのだけれど…。
だからせめて、カリツにもクッションを渡そうとしたけれど、従者用の席もそれなりにクッションが敷いてあったので大丈夫だとお断りされた。
「はぁ…やっと、エミーリエとゆっくり出来るね。やっとだ…。本当に嬉しいよ。」
ルドヴィーク様は私の隣に座り、そう言って頭を何度も何度も撫でてくれていた。
私は、ものすごく緊張していたけれど、同時にとても懐かしく、嬉しく感じてしまった為されるがままだった。
ソベレツ領の屋敷に着くと、お父様と、義理の弟であるダーヴィズが久し振りに帰って来ていた。いつくらいから会っていないか覚えていないくらいだ。
きっと、一足先に帰った御者が内容を執事に伝え、お父様がいる辺境の砦に伝えに行ってくれたのだろう。
南北に長いソベレツ領の、北の国境沿いには高く真っ直ぐ伸びた壁が作られていて、砦も幾つもその壁沿いにある。好戦的なセンプテン国が、幾度となく侵入しようとしてくるから、対策としてそれらを作ったらしい。
西隣のバウツェン国へ通じる国境沿いには壁なんてないから、センプテン国に近い方はいつも緊張感漂っているのだとか。
「ルドヴィーク様、これはこれは…!十数年振りですな。」
お父様が、ダーヴィズと共に玄関ホールで出迎えてくれた。
「キーベック辺境伯殿。いろいろと話したい事はありますが…よろしいでしょうか。」
「は、はい。よろしければ、応接室へ案内します。どうぞこちらへ。」
応接室へ付いて、ルドヴィーク様と私が奥のソファに、お父様と義弟のダーヴィズが扉に近いソファへと座り終わると早々にお父様が話し出した。
「ルドヴィーク様、それで…話とは一体…?」
「キーベック辺境伯殿。ユスティーナ様が亡くなられて以来ですね。あなたは、ユスティーナ様が亡くなって一月もしない内に、再婚なされた。」
「え?は、はい…エミーリエが淋しいと思ったからです。まだ、母親を必要とする四歳の年齢でしたから。」
「本当にそれだけですか?…まぁ、それはこの際どうでもいい。それ以来、エミーリエが蔑ろにされていた事はご存じでしたか?まさか、キーベック辺境伯殿も一緒になって…」
「ちょ、ちょっとお待ちください!蔑ろ?いや、私がセンプテン国への対応に忙しい最中、家の事を全てヨハナに任せておりまして、エミーリエにも良くしていると…!」
やっぱりお父様には全く伝わっていなかったのね…お父様にまで嫌われていたわけではなかっただけ、良かったと思いましょうか。けれど、もう少し気に掛けて下さると有り難かったのですけれど。
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