【完結】花に祈る少女

まりぃべる

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18. テレサの提案

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「イロナ様。
テレサから、自分も外へ出たいと言われました。読み書きも出来るようになっておりますし、その…」



 スティーナは、テレサと話してから次にイロナに会った日、休憩の時にそう話し出した。
けれど、その後なんと続ければいいか迷ってしまう。

 スティーナは、イロナが師となって五年が経った。様々な事を教えてもらってきたが、いつまでイロナが師となってくれるのか心配になったのだ。もしかしたら、テレサに教える事で、自分にはもう教えに来てくれないかもしれないと思ったのだ。


「なるほどねぇ。まぁ、そうねぇ…じゃあ、一度会ってみようかしら。
スティーナ、ところでどうしてそんな顔をしているんだい?」

「え?」

「あぁ…私はスティーナになんて言ってきたか覚えているかしら?
スティーナの味方だと言ったわよね。
私はスティーナを孫のように思っているのよ。だから、スティーナと私の関係は全くもって変わらないから安心しなさい。」

「…はい。」


 スティーナは、イロナがそう言ってくれて心から安心した。
七歳からイロナの元でいろいろと教えてもらっていた為、とても信頼しているから、そのように改めて言ってもらえた事でこれからも変わらないのだと安心出来たのだ。





☆★

「お連れしました。」


 イロナに言われたヤーナが、テレサを連れて部屋に戻ってきた。


「…先生、お呼びですか。」


 テレサはイロナを何と呼んだらいいかと迷い、部屋に入ってすぐにそのように声を掛けた。


「なるほど…。
テレサ、こちらへ座りなさい。」

「はい。」


 イロナは、テレサが部屋に入ってきてからソファに座るまでをジッと見つめている。どのように成長したのかを感じ取っているのだ。


 本来であれば、イロナは花祈りの事を教える師としてオーグレン家へと派遣されている。だから、を教えていれば文句は言われる事もない。

 だがイロナは、オーグレン家にやってきた時、母親の姿を見かけなかった。挨拶をされるかと思ったのに、何も無かったのだ。
そこでもしかしたら自分と親なのかもしれないと考え、だったら弟子であるスティーナの力になりたいと思ったのだ。自分もかつての師にしてもらったように。


 本来花祈りの師は、弟子に対して教え方は様々だ。
毎日ずっと傍にいて教え、何年かしたら離れ、後は自分でやってみなさいと定期的に確認をする者もいれば、十八歳になるまで定期的に教える者もいる。
 イロナは、スティーナへの想いは師弟以上で孫のように大切に思っているので、長く関係を続けていこうとは思っている。花祈りの事はあらかた教える事が出来たのでこれからあとはいろいろな世界を肌で感じさせようと思い初めている。だから、スティーナと共に社会勉強をさせようか、イロナは少し迷いながら見ているのだ。


(ふむ…だいぶ言葉遣いは学ぶようになったのね。所作も、まだまだだけれど昔に比べたら御の字だわ。)


 イロナは、そう思った。


「テレサは、何がしたいのかしら?自分の口から正直に言ってみなさい。」

「…お姉さまみたいに、いろいろと出掛けたりしたいです。」

「…そう。
スティーナは、ただ遊びに出掛けているわけではないのよ。」

「それでも!…家にずっといるよりは、いいと思います。」

「なるほどね。ここでは、何をして過ごしているのかしら?」

「本を読んだり…あとは、刺繍をしたりしてます!」

「あら。偉くなったわね。
そういえばテレサ、花祈りはしていないのかい?」

「!…今は、たまにしています。」


 テレサは、そういえば幼い頃はやっていたけれど、ので最近はそのような事をしていなかった。だが、聞かれた為に怒られてはたまらないと見栄を張ったのだ。


「なるほどねぇ…。じゃあ帰っていろいろと考えてみましょう。
あぁ、そうそう。足し引きも、やっているのかしら?」

「…す、少しは…。」

「そう。じゃあもう少しそちらも頑張りなさい。テレサ、もう下がっていいわ。」

「は、はい。よろしくお願いします。」


 もう終わりなのかと言う気持ちと、数年前に勉強をしなさいと言ってきた苦手なイロナから離れられるという気持ちが混ざりながらテレサは頭を下げ、部屋を出て行った。


 スティーナは、どうなるのだろうと口を出さずに見ていた。
テレサが部屋を出て行くとイロナはスティーナへと視線を合わせる。


「スティーナの優しい気持ちを受け取ったわ。テレサの事は、少し考えてみるから時間をちょうだい。いいかしら?」


 そう言って、イロナは安心させるようにスティーナへと優しく微笑んだのだった。


「ありがとうございます!」


 スティーナは、どうなるか分からないけれどきっとイロナならどうにかしてくれる、と信頼している為、テレサの希望も前進するかもしれないと嬉しく思った。
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