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ポチャタの仕事
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「ワンワン!ワンワンワンワン!」
朝、ようやく外が明るくなってきた頃、家の外で、犬の鳴き声が聞こえて目を覚ました。
「ワンワン!ワン!」
さっきよりは吠える数が少なくなったような気がするけど、気になってトイレに近い裏口から外に出てみる。と、家の近くの畑で、ポチャタが吠えていた。そして、私が近づいたのが分かったのかポチャタがこっちをちらりと見た。吠えた先には、なんと猪だった!でも猪はポチャタに吠えられ、山へ歩いていく。私の足音が聞こえたのか、そのまま早足になり、猪はまた山へ消えて行った。
「ポチャタ!また追い返してくれたの?すごいよー!!ありがとうね!ばぁちゃんの畑守ってくれて。喜ぶよ。」
そう声を掛けると、ポチャタは吠えるのを止め、またすたすたと歩いていった。
「ポチャタ、あとで朝ご飯に、ご褒美にいいものあげるから来てね!」
ポチャタは振り返ったけど、すぐまた前を向いて歩いて行ってしまった。いつもどこへ行くんだろう。気づいたら家の近くにいるんだよね。昨日も夜、寝る前にトイレへ行ったら、外で伸び伸びと寝ていたもの。
目が覚めてしまったから、私はそのまま朝ご飯の準備をする事にした。
ばぁちゃんは、今日は起きてくるのが遅かった。私がガチャガチャと台所で準備をしていても物音一つ聞こえなかった。あらかた朝ご飯が出来上がって、あとはよそうだけという頃になって、ばぁちゃんの部屋に声を掛けて入る。
「ばぁちゃん、入るよ-。おはよう。私お腹すいちゃったから朝ご飯作っちゃったよ。」
そう声を掛けてから、襖を開けて部屋に入っても布団の中にいた。
「ばぁちゃん?まだ寝てる?私先にご飯食べていい?」
「うーん。もう朝かい?ごめんね、気づかなかったわ。先に食べていていいよ。」
そう言って、ばぁちゃんは寝返りを打って私の方に顔を向けた。
「分かった。起こしてごめんね、まだ寝ててね。」
「いや、私も起きるよ。先に食べておいで。」
と言って、ばぁちゃんは布団から起き出した。
私は、ばぁちゃんが遅く起きるなんて珍しいなと思った。確かに今日は、私はポチャタの鳴き声に起こされたけど、それもばぁちゃんは聞こえなかったのか寝ていたみたいだし。いつも、太陽が顔を出し始める前から起きて、畑に水やりしたり、朝ご飯作ったりいろいろとやっているのに。それとも、私は社会人になってからこっちに来てなかったし、ここ二年程はこんな感じなのかな?
朝ご飯を食べると、ばぁちゃんは畑を見回ると言ったので、一緒に歩く。さっき食べている時に、ポチャタが猪を追い払った話をしたらすごく喜んでいた。そして、【あの子は、じぃさんかしらねぇ。優しいわぁ。】と言い出たからびっくりした。確かに、じぃちゃんが亡くなってからポチャタはここに顔を出したみたいだけど…偶然でしょ。ばぁちゃんはやっぱり淋しいのかな。
「ポチャタはいないねぇ。」
ばぁちゃんが淋しそうに言うから、
「多分、私達と同じように見回ってくれてるんだよ。」
って私は言った。
「そうねぇ。そうかもしれないねぇ。」
昼ご飯を食べている時に、車の音がしたから私が外に見に行くと、源太が車から降りて来ていた。
「よう!」
「源太!どうしたの?」
「昨日、食料庫勝手に見せてもらってよ。乾麺とか持ってきてやったぞ。あんまり無かったろ。」
「あ、ありがとう!ちょっとまって。お金持ってくる!」
「いいよ。その代わり、たまに昼ご飯はここで食べさせてくれよ。どうだ?」
「えっでもそれ結構あるよね?」
「だってまだ香澄いるんだろ?」
「まぁそうだけど…。じゃぁばぁちゃんに聞いてみよ?」
「サンキュー。ってか、おばぁちゃんどうだ?」
「ん-、今朝は起きるの遅かったんだよね。たまたまかもだけど。昔は日の出より先に起きて水やりとか朝ご飯の準備とかいろいろとやってた気がするんだけどさ。」
「そうか。まぁ、俺もおばぁちゃんの事は昼間しか知らないからなぁ。最近は何時に起きてたんだろうな。案外香澄がいない時は遅かったかもしんないぞ。けどまぁ何かあったら、連絡してこいよ。まだ番号変わってないだろ?」
と、源太はスマホを出してきた。
「うん、ありがとう。ずっと一緒のやつ。」
「まぁ、一応女二人だしよ、何かあったら夜でもいいから電話してこい。」
た、確かに…。でも源太ってこんな頼もしい奴だったっけ?
「ありがとう。そういえば今朝、猪が出たよ。」
「はぁ?大丈夫だったか?怪我ないか?」
「うん、ポチャタがね、追い払ってくれたの。」
「へー。やるじゃんあいつ。」
「それで、ばぁちゃん、ポチャタがじぃちゃんかもって言い出して…。」
「そうか。まぁ、言いたくもなるんじゃないか?こんな山ん中で、今は香澄が居てもその内帰っちまったらって淋しいんだろ。」
「うん…。」
「あ、悪い。今食事中だったか?ばぁちゃんが心配するよな。家入っていいか?」
源太ってば、最後に会ったのは高校生だったっけ?私大学生の時は忙しくて来なかったもんな。いつの間にかちゃんと気ぃ遣える大人になってる気がする。
朝、ようやく外が明るくなってきた頃、家の外で、犬の鳴き声が聞こえて目を覚ました。
「ワンワン!ワン!」
さっきよりは吠える数が少なくなったような気がするけど、気になってトイレに近い裏口から外に出てみる。と、家の近くの畑で、ポチャタが吠えていた。そして、私が近づいたのが分かったのかポチャタがこっちをちらりと見た。吠えた先には、なんと猪だった!でも猪はポチャタに吠えられ、山へ歩いていく。私の足音が聞こえたのか、そのまま早足になり、猪はまた山へ消えて行った。
「ポチャタ!また追い返してくれたの?すごいよー!!ありがとうね!ばぁちゃんの畑守ってくれて。喜ぶよ。」
そう声を掛けると、ポチャタは吠えるのを止め、またすたすたと歩いていった。
「ポチャタ、あとで朝ご飯に、ご褒美にいいものあげるから来てね!」
ポチャタは振り返ったけど、すぐまた前を向いて歩いて行ってしまった。いつもどこへ行くんだろう。気づいたら家の近くにいるんだよね。昨日も夜、寝る前にトイレへ行ったら、外で伸び伸びと寝ていたもの。
目が覚めてしまったから、私はそのまま朝ご飯の準備をする事にした。
ばぁちゃんは、今日は起きてくるのが遅かった。私がガチャガチャと台所で準備をしていても物音一つ聞こえなかった。あらかた朝ご飯が出来上がって、あとはよそうだけという頃になって、ばぁちゃんの部屋に声を掛けて入る。
「ばぁちゃん、入るよ-。おはよう。私お腹すいちゃったから朝ご飯作っちゃったよ。」
そう声を掛けてから、襖を開けて部屋に入っても布団の中にいた。
「ばぁちゃん?まだ寝てる?私先にご飯食べていい?」
「うーん。もう朝かい?ごめんね、気づかなかったわ。先に食べていていいよ。」
そう言って、ばぁちゃんは寝返りを打って私の方に顔を向けた。
「分かった。起こしてごめんね、まだ寝ててね。」
「いや、私も起きるよ。先に食べておいで。」
と言って、ばぁちゃんは布団から起き出した。
私は、ばぁちゃんが遅く起きるなんて珍しいなと思った。確かに今日は、私はポチャタの鳴き声に起こされたけど、それもばぁちゃんは聞こえなかったのか寝ていたみたいだし。いつも、太陽が顔を出し始める前から起きて、畑に水やりしたり、朝ご飯作ったりいろいろとやっているのに。それとも、私は社会人になってからこっちに来てなかったし、ここ二年程はこんな感じなのかな?
朝ご飯を食べると、ばぁちゃんは畑を見回ると言ったので、一緒に歩く。さっき食べている時に、ポチャタが猪を追い払った話をしたらすごく喜んでいた。そして、【あの子は、じぃさんかしらねぇ。優しいわぁ。】と言い出たからびっくりした。確かに、じぃちゃんが亡くなってからポチャタはここに顔を出したみたいだけど…偶然でしょ。ばぁちゃんはやっぱり淋しいのかな。
「ポチャタはいないねぇ。」
ばぁちゃんが淋しそうに言うから、
「多分、私達と同じように見回ってくれてるんだよ。」
って私は言った。
「そうねぇ。そうかもしれないねぇ。」
昼ご飯を食べている時に、車の音がしたから私が外に見に行くと、源太が車から降りて来ていた。
「よう!」
「源太!どうしたの?」
「昨日、食料庫勝手に見せてもらってよ。乾麺とか持ってきてやったぞ。あんまり無かったろ。」
「あ、ありがとう!ちょっとまって。お金持ってくる!」
「いいよ。その代わり、たまに昼ご飯はここで食べさせてくれよ。どうだ?」
「えっでもそれ結構あるよね?」
「だってまだ香澄いるんだろ?」
「まぁそうだけど…。じゃぁばぁちゃんに聞いてみよ?」
「サンキュー。ってか、おばぁちゃんどうだ?」
「ん-、今朝は起きるの遅かったんだよね。たまたまかもだけど。昔は日の出より先に起きて水やりとか朝ご飯の準備とかいろいろとやってた気がするんだけどさ。」
「そうか。まぁ、俺もおばぁちゃんの事は昼間しか知らないからなぁ。最近は何時に起きてたんだろうな。案外香澄がいない時は遅かったかもしんないぞ。けどまぁ何かあったら、連絡してこいよ。まだ番号変わってないだろ?」
と、源太はスマホを出してきた。
「うん、ありがとう。ずっと一緒のやつ。」
「まぁ、一応女二人だしよ、何かあったら夜でもいいから電話してこい。」
た、確かに…。でも源太ってこんな頼もしい奴だったっけ?
「ありがとう。そういえば今朝、猪が出たよ。」
「はぁ?大丈夫だったか?怪我ないか?」
「うん、ポチャタがね、追い払ってくれたの。」
「へー。やるじゃんあいつ。」
「それで、ばぁちゃん、ポチャタがじぃちゃんかもって言い出して…。」
「そうか。まぁ、言いたくもなるんじゃないか?こんな山ん中で、今は香澄が居てもその内帰っちまったらって淋しいんだろ。」
「うん…。」
「あ、悪い。今食事中だったか?ばぁちゃんが心配するよな。家入っていいか?」
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