ばぁちゃんとポチャタとわたし

まりぃべる

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本当は

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「待たせたな。ん?どうした?顔が悪いぞ。」
ちょっと…顔が悪いって失礼じゃない?顔色じゃなくて?
「失礼ね!」
「ハハッ。で?何かあったか?」
何だろ…源太なんで分かったのよ。
「海ってさ、なんか考え事するのにもってこいなんだよ。波が、嫌な事全部持っていってくれるんだぜ。」
そう言って、源太も海を見つめた。

「源太も嫌な事あったの?」
「あれ?気づかない?まぁ、誰もわざわざ言わないか。俺ん家のじぃちゃんも亡くなってるんだぜ。」
「えっ?」
そうだったんだ…。源太の家は、山田商店で昔からこの村に一つだけのよろず屋で、おじいさんもそれはもう働き者だった。ビール瓶が入ったケースも積んで運んでいたり。米も俵で運んだり。そんなおじいさんに、源太も小さな頃はちょろちょろとくっついてよく手伝っていたっけ。

「ごめん…知らなかった。いつ?」
「んー、俺が高校3年の冬かな。そん時、俺大学行こうかとしてたんだぜ。でも、じぃちゃんが死んで、父ちゃんだけじゃ村のみんなに荷物届けられないって思ってさ。大学行くの止めたんだ。」
「そうだったんだ…。」
「今は、これが性に合ってるんだと思うけどよ。大学行って都会で就職してたらって思う時もある。だから、香澄は好きな事しろよ。広告代理店に就職してたんだろ?」
「え?なんで知って…」
「お前ん所の父ちゃんが、正月だったか盆だったか。帰ってきた時飲んで嬉しそうにしゃべってたらしいぞ。大学入学した時もだぞ。香澄が夢を叶えた!うちの娘は最高だ!って。」
「えー?父さんそんな事言わないでしょ。私が行きたいって言っても、ふーんで終わったのよ。大学も就職も。」
父さんも母さんも、仕事ばっかりで私にあまりかまってくれなかった。だから小さい頃はここに来るとじぃちゃんもばぁちゃんも、この村の人たちみんな温かくていいなと思ってたんだ。

「そんな事ないだろ。報告して、本当に大学入学したり就職も行きたい所に行ったもんだから、うちの娘は最高だ!って自慢してたんだろ。うちの親父とは、酒飲むといつもすげー騒いでっぞ。」
「そ、そうだったの…家ではめっちゃ静かなんだけど。」
「俺んちの親父とは同級生だから、胸の内さらけ出してんじゃねぇの?」
「…そっか。喜んでくれてたんだ。」
「当たり前だろ。自慢の娘らしいぞ。」
「仕事止めたって言っても、ふーんとしか言ってくれなかったのよ。」
「ああ。その頃か?親父に電話掛けてきたぞ。どうすれば、香澄が元気になるか心配してたんだと。だから親父が、こっちにこれば?って誘ったらしいぞ。まぁ、どう連れ出そうか迷ってたら、お前の、おじぃちゃんが亡くなったもんで口実が出来たって言ってたみたいだけど。」
そうだったんだ…。心配してたの…分かりにく!
「お前がここに残るって言ったのも、元気になるかなと思ったんだろ。香澄をよろしくって俺にまで頭下げてったぞ。」
えー何それ…!
「だから、顔見に来てくれてたの?」
「言われたからじゃないぞ。俺だって心配してんだ!なんて言ったらいいのか自分でもよくわかんねぇ。けど、香澄がつまんねぇ顔してるのが嫌なんだ。お前はもっと笑えるやつだろ!」
「えーなにそれ。」
笑えるやつって…。でもそう言われて思わず笑えてきてしまった。

「そうそう。そんな笑顔だよ。それがお前には一番似合う!広告代理店、戻りたいんじゃないのか?」
「え?聞いてたの?」
「何をだ?お前の父さんからだよ、都会の家に上司から電話があったらしいぞ。辞める原因まで聞いた。上司が、お前の両親に、謝ってたらしいぞ。いい上司だな。てか、お前を悪く言った先輩、殴ってやりてぇよ!」
「源太…ありがと!」
へー、うちの上司、両親まで言ったんだ。

「お前が思ってるより、心配してるやつはたくさんいるんだぞ!自分を見失っても、また見つけ出せ!じゃ、今からデートしようぜ!もう少し先に、アウトレットモールが出来たんだと。おばぁちゃんに昼ごはんと珍しいスイーツ買ってこうぜ!」
源太…ありがとう。昔からズケズケと言ってくるからムカついたりしてたけど、今はとても心に刺さったよ。温かい気持ちになった。背中を押してくれてありがとう。そして、いろいろ教えてくれてありがとう!私、両親に愛されてるのか不安になった事もあったけど、ちゃんと心配されてたのね。
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