【完結】私の地元の猫って…。

まりぃべる

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1. 電話

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私、猫山ねこやま かえで。32歳。

 大都市にある某大学に入学し、そのままそれなりに有名な企業に就職して、仕事でも着々と昇進し、大変ではあったがやりがいも感じ、私は順風満帆な生活を送っていた。

 けれど…。



「え?入院!?」



 仕事中、母からスマホに数十件の不在着信が入っていた。
やっと仕事のキリがつき、折り返し電話をすると、父が倒れたのだという。

 そして、両親で営んでいた喫茶店も暫く休業するのだと。


 私がいる部署では、もうすぐ大きなプロジェクトが控えている。
不謹慎ではあるが、こんな時に…と思ってしまった。




 スマホを開き、折り返し電話を掛けようと画面をタップした。



「そう…それで、父さんはどうなの?」



 すぐに電話に出た母さんは、少し涙声だった。母さんの声は、こんな低い声だっただろうか?気落ちしているのかもしれない。

「うん。うん…分かった。明日仕事終わったら三連休だから、そっち行くよ。うん?そんなすぐには…。分かった。うん、母さんも無理しないで。いい?気を確かに持ってね。じゃあね。」

(ふう…。)



 私は、この部署では、それなりの地位にいる。新プロジェクトは、今回初めて後輩がプロジェクトリーダーを務めているけれど、まだまだフォローしないと危なっかしい。


 母は、暫く休めないか、今すぐ帰って来れないかと聞いてきた。


(出来るわけないでしょ…。)


 父さんが心配なのは山々だが、仕事をすぐに放り投げていけるほど、簡単な話ではない。

 幸いにも、今日は木曜日。明日が終われば三連休。仕事も休日まで持ち越す内容はないから、一度帰ってみようと思った。
三連休なのに予定といえば、家で好きな動画配信をゆっくり見る事しかなかったのでどうとでも変更出来る。

 32歳という、いい年齢なのに三連休に予定が無いのは、いつもなら両親は会話をする時には二言目には『いい歳して。そろそろいい人いないの?』と言ってくるが、今回ばかりは何も言ってこなかった。


(そういえば、最近あまり帰って無かったな…。)


 忙しさにかまけて、ここ数年はあまり実家に帰っていなかった。帰っても、口うるさく私の同級生が子供を産んだ、だの、私の同級生が里帰りしてきただの言ってくるから面倒になって近寄りがたくなったのだ。


 私は一人っ子。だから余計に両親は心配なのかもしれない。


(でも、明日帰ってもそんな事言われないのね。)

 口うるさいと思っていた言葉が聞けなくなるのは、少し淋しいかもしれないと思いながら、仕事のフロアへ戻った。


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