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10. 決意
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あの後、結局送ってもらった。方向が同じだったというのもあるし、もう少し話したかったからだ。
夕飯になって、母に伝える事にした。
「ねぇ母さん。私、今すぐは無理だけど、プロジェクトが落ち着いたら、仕事辞めるよ。」
「どうしたのさ、急に。考えたの?」
「うん。で、こっち帰ってくる。」
「まぁ!そうなの?いいの?」
母さん…声がワントーン上がったね。分かりやすいなぁ。
「考えた結果かな。こっちの空気は美味しいし。」
「そうね。父さんも喜ぶわ。」
母さんは今にも鼻歌を歌い出しそうに、顔が綻んでいる。だから、なんとなく意地悪を言ってみた。
「母さんは喜んでくれないの?」
「え?私だって喜んでるわよ?」
まぁ、見たら分かるけど、父さんを理由にしているから一応言ってみたのよ。
「ふーん。ねぇ、あの神社…」
「あの神社?猫神様の神社?」
「うん、そう。参拝客少ないの?」
「うーん、どうなのかしらね。昔から多くは無かったんじゃない?」
そうか…。まぁ母さんも今まで働いていたから知らないか。
「もう少し、参拝客が来られる所にしたいな。」
「どうしちゃったの?…そういえば楓、あの神社でお猫様をお拾いになったわよねぇ。」
「うん。あんな静かな神社だったのかなって。」
「神社だから、静かでいいんじゃないの?まぁ、そう思うなら昔やっていたお祭りとか復活させてもいいんじゃない?」
「今やってないの?」
「人が集まらないからね。神事だけはやってるみたいよ。」
「ふーん。」
「そういえば、猫石さんとこの樹くんに相談してみたら?あの子、役場勤務でしょ?何かいい案教えてくれるかもよ。」
「うん…。さっき会った。」
「え?どこで?それでさっき、急いで出ていったの?」
「いや、それは違う!」
「んもー、隠さなくていいのに。」
母さんは途端にクスクス笑い出した。もう、それは違うのに!
「それは違うけど…偶然会って、付き合う事になった。」
「まぁ!」
「一応、報告だけ!だから、いろいろ言ってこないでね!」
「はいはい。よかったわねー。何も言いませんよ!じゃあいろいろと相談もしやすいわね!」
母さん、心無しかとても表情が明るくなったような…。
ーーーー
そして私は、三カ月後に仕事を、円満退社した。
プロジェクトも、後輩が思ったよりもしっかりと取り仕切っていた。これなら私がいなくても大丈夫ねと思ったから。
「ここでいいかな?」
「もうちょい右。おう、そんくらいかな。」
あれから、神社だけでは難しいかもしれないから【町おこしプロジェクト】を樹に相談し、神社だけではなく、町全体に観光客が来て収益が行き渡るように考えた。
神社には、分かりやすく猫の看板を設置。【猫が集会する神社】と書いて、猫の可愛いイラストも書いてある。
駅前の元旅館や元ホテル街に住み着いていた猫様にこちらに来てもらって。
もちろん、氏神様に相談し、お願いした。
彼らの中には、どうやら氏神様より少し位が低い神様も普通の猫に混じっているようで、演じてくれている猫たちもいるようだ。
人懐っこい猫を演じたり、素っ気ない態度を演じたり。…普通の猫かそうでないかなんて見分けは全くつかないけれど。
猫が集まってひなたぼっこなどをしているのは、集会を開いているように見えるので、そんな名前にしたのだ。
そんな場面などをSNSにアップしていると少しずつこの神社にまで足を運んでくれる観光客が増えてきた。
今までは、少しいった先の神社に神事をやる時だけ神主さんをお願いしていたらしいけど、常駐神主さんが来てくれる事になり、御札や御守りなんかも売れているみたい。
神社以外では、【町のお出かけスポット】を母さん監修のもと、地図にして作って店や旅館やホテルなど至る所に置いた。
「楓のおかげじゃ。」
氏神様がほくほく顔で言ってくれる。
「あわよくばもう少し牛乳をくれる頻度を増やしてくれるといいのだが。」
牛乳を飲みながら愚痴っている。
「樹もようやっとるな。」
「はい!ありがとうございます!!」
今や樹は氏神様の舎弟みたいになっているわ。
私の地元の実家の近くにいた猫は、氏神様でした。それも、牛乳が好きな、ちょっぴりお茶目な氏神様。
私は今日もせっせと、樹と一緒に神社に牛乳を運ぶーーー。
☆★☆★
これにて終わりです。
読んでくれましてありがとうございました。
夕飯になって、母に伝える事にした。
「ねぇ母さん。私、今すぐは無理だけど、プロジェクトが落ち着いたら、仕事辞めるよ。」
「どうしたのさ、急に。考えたの?」
「うん。で、こっち帰ってくる。」
「まぁ!そうなの?いいの?」
母さん…声がワントーン上がったね。分かりやすいなぁ。
「考えた結果かな。こっちの空気は美味しいし。」
「そうね。父さんも喜ぶわ。」
母さんは今にも鼻歌を歌い出しそうに、顔が綻んでいる。だから、なんとなく意地悪を言ってみた。
「母さんは喜んでくれないの?」
「え?私だって喜んでるわよ?」
まぁ、見たら分かるけど、父さんを理由にしているから一応言ってみたのよ。
「ふーん。ねぇ、あの神社…」
「あの神社?猫神様の神社?」
「うん、そう。参拝客少ないの?」
「うーん、どうなのかしらね。昔から多くは無かったんじゃない?」
そうか…。まぁ母さんも今まで働いていたから知らないか。
「もう少し、参拝客が来られる所にしたいな。」
「どうしちゃったの?…そういえば楓、あの神社でお猫様をお拾いになったわよねぇ。」
「うん。あんな静かな神社だったのかなって。」
「神社だから、静かでいいんじゃないの?まぁ、そう思うなら昔やっていたお祭りとか復活させてもいいんじゃない?」
「今やってないの?」
「人が集まらないからね。神事だけはやってるみたいよ。」
「ふーん。」
「そういえば、猫石さんとこの樹くんに相談してみたら?あの子、役場勤務でしょ?何かいい案教えてくれるかもよ。」
「うん…。さっき会った。」
「え?どこで?それでさっき、急いで出ていったの?」
「いや、それは違う!」
「んもー、隠さなくていいのに。」
母さんは途端にクスクス笑い出した。もう、それは違うのに!
「それは違うけど…偶然会って、付き合う事になった。」
「まぁ!」
「一応、報告だけ!だから、いろいろ言ってこないでね!」
「はいはい。よかったわねー。何も言いませんよ!じゃあいろいろと相談もしやすいわね!」
母さん、心無しかとても表情が明るくなったような…。
ーーーー
そして私は、三カ月後に仕事を、円満退社した。
プロジェクトも、後輩が思ったよりもしっかりと取り仕切っていた。これなら私がいなくても大丈夫ねと思ったから。
「ここでいいかな?」
「もうちょい右。おう、そんくらいかな。」
あれから、神社だけでは難しいかもしれないから【町おこしプロジェクト】を樹に相談し、神社だけではなく、町全体に観光客が来て収益が行き渡るように考えた。
神社には、分かりやすく猫の看板を設置。【猫が集会する神社】と書いて、猫の可愛いイラストも書いてある。
駅前の元旅館や元ホテル街に住み着いていた猫様にこちらに来てもらって。
もちろん、氏神様に相談し、お願いした。
彼らの中には、どうやら氏神様より少し位が低い神様も普通の猫に混じっているようで、演じてくれている猫たちもいるようだ。
人懐っこい猫を演じたり、素っ気ない態度を演じたり。…普通の猫かそうでないかなんて見分けは全くつかないけれど。
猫が集まってひなたぼっこなどをしているのは、集会を開いているように見えるので、そんな名前にしたのだ。
そんな場面などをSNSにアップしていると少しずつこの神社にまで足を運んでくれる観光客が増えてきた。
今までは、少しいった先の神社に神事をやる時だけ神主さんをお願いしていたらしいけど、常駐神主さんが来てくれる事になり、御札や御守りなんかも売れているみたい。
神社以外では、【町のお出かけスポット】を母さん監修のもと、地図にして作って店や旅館やホテルなど至る所に置いた。
「楓のおかげじゃ。」
氏神様がほくほく顔で言ってくれる。
「あわよくばもう少し牛乳をくれる頻度を増やしてくれるといいのだが。」
牛乳を飲みながら愚痴っている。
「樹もようやっとるな。」
「はい!ありがとうございます!!」
今や樹は氏神様の舎弟みたいになっているわ。
私の地元の実家の近くにいた猫は、氏神様でした。それも、牛乳が好きな、ちょっぴりお茶目な氏神様。
私は今日もせっせと、樹と一緒に神社に牛乳を運ぶーーー。
☆★☆★
これにて終わりです。
読んでくれましてありがとうございました。
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