【完結】私の地元の猫って…。

まりぃべる

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9. 会話

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「!?おい、楓…か?」


 階段を上って来た男性は、私を見てそう言った。誰かしら?


「えと…?そうですけど…。」

「なんだ!帰ってきたのか!?あー…すまん、おやじさんのあれでか?ん?おれだよ、俺、猫石樹!」

「えっ!」


 えー!!さっき氏神様と話してたばかりだからか意識しちゃうわ。


「忘れてる…?残念だ…。おやじさん、大丈夫か?」

「わ…忘れてなんかないよ!ただちょっと中学の頃と樹、全然面影がなくて…と、父さんはどうにか。もう少ししたら退院出来るって。」

「そっか!よかった!俺、そんなに変わった?確かに、高校でも野球やってたから体でかくなったかもな。」


 そう言った樹は口を大きく開けて笑った。その顔は中学時代の顔のままだった。


「びっくりした…ここにお参り?」

「あ…まあな。楓のおやじさん倒れたって聞いて、毎日祈りに来てたんだ。」


 そう言って、はにかむように笑って少し照れた感じの樹。


「そ、そう…わざわざありがとう。」


「いやぁ、でもよかったよ!退院出来るなら!…楓は、この3連休だけなのか?もうあっちに帰るのか?」

「うん…でも、なんか迷ってるの。」

「迷ってる?」

「なんか、今回の事でさ、仕事辞めてこっち帰ってきた方がいいのかなって。」

「そうか…なぁ、楓。久し振りに会っていきなりかと思うかもしれないけど、これはチャンスかと思うから言うよ。お前がずっと好きだった。付き合ってくれないか。」

 わ、わー!やば!氏神様に言われてはいたけれどまさかそんな…!


「迷ってるなら尚更チャンスかもしれないから。帰ってこいよ。それでさ、俺との時間、共有してよ。」


 少し照れたように鼻をぽりぽりと掻きながら、樹は言った。


「樹…ありがとう。私も、中学卒業して樹と話せなくなったの少し淋しく思ってたんだ。…ずっとってずっと?」

「よっしゃー!ああ、そうさ。俺もヘタレだったよな。あの時伝えていれば変わったかもしれないのに。いや、でも伝えていなかったからこそ、楓への想いが募り過ぎて溢れそうだったんだ。だから、嬉し過ぎるぜ!猫神様-!ありがとう-!!」

 樹は、話しているうちにテンションが上がったのか、本殿の方を向いて叫び出した。後ろを向くと、氏神様は寝そべってあくびをしていた。

「ふふふ。樹ったら。叫ばなくても…。」

「そりゃあ叫びたくもなるぜ!小学生の時は、皆親戚みたいなもんだったけどよ、中学1年の頃からちょっと気になりだしてもうかれこれ約20年さ!念願叶ったんだからな!」

 そう言った樹は、私をギュッと抱きしめた。温かい…。


 どれ位そうしていただろうか。


「ニャー」

 と鳴いた響きに私は、慌てて樹の腕の中から出てしまった。寂しくはあったけれど、恥ずかしさが今になって込み上げてきたから。
それに、氏神様に見られているんだったわ。


 氏神様は起き上がり、私の真横をわざわざ通って、山の方へと歩いて行った。



「ご、ごめん…急に。嫌だったか?」

「う…ううん。」

「そうか。俺、そろそろ帰らないと。あ、退院出来るお礼と、一応これからの事を祈っとなかいとな!送ってくよ。」


 樹が来たのは、こうなったのは氏神様のおかげなのかしら?牛乳、お供えしないといけないわね。
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