【完結】いつも微笑んでいる侯爵様とニコリともしない伯爵令嬢のお話

まりぃべる

文字の大きさ
23 / 31

23. 侯爵家への挨拶

しおりを挟む
 裸馬競争があった次の日。


 ヴァルフレードから呼ばれた為にアンドレイニ侯爵家へ訪問した。


 今日も、ベルガモットの香り漂う裏庭の四阿で、紅茶を飲むアルフォンシーナであった。


「お疲れではありませんか?」

「あぁ。昨日はあの後も、テレンツィオ王子には悔しがられたし、夕食会に参加しなければならなくて大変だったよ。でも、アルフォンシーナに会いたかったからね。昨日も、アルフォンシーナの元へ駆けつけて馬に乗せて王都中に見せつけたかったよ。」

「まぁ!何を見せつけるのです?されなくて良かったわ。
テレンツィオ王子、見学するのではなくて、参加されたのですね。」

「あぁ。俺も驚いたよ。前日に言われたみたいでね。バジーリオ伯爵も、『怪我をしても知りませんから。どうしても出場するのであれば我が国は一切、関係ないと一筆書いていただきますぞ。』と言っていたな。」

「それでよく、走れましたね。慣れていらしたのですか?サムエレ義兄様も、振り落とされないようにするのが精一杯だと言われていましたよ。」

「どうやら、フィラハ国は馬に似た、でもまったく別の動物に乗って移動するみたいでね。慣れていたようだよ。ただ、それは背中にこぶがあり、座りやすいみたいで勝手が違うと言われていたな。
…ま、他の男の話はここでお終いにしよう。」

「そうですわね。ヴァルフレード、お疲れ様でした。まさか、一位だったなんて驚きましたわ。途中で、落馬したという声も聞きましたから、血の気が引きましたわ。」

「あぁ…彼は国防軍の中堅だよ。だから、驕りもあったのかもしれないな。事もあろうに、内側から抜きに掛かろうとして、馬が足を引っ掛けてしまったみたいでね。でも、鍛えていただけはあって命に別状はなかったのは幸いだったな。」

「そうでしたの。その方の怪我が酷く無くて幸いですわね。
ヴァルフレードにも怪我も無く、本当に良かったですわ。」

「じゃあ、俺に褒美をくれるかい?」

「え?ご褒美?なにかしら。私にあげられるもの?」

「あぁ。アルフォンシーナしか俺に与えられないよ。」

「ええ。なぁに?」



「ヴァルフレード様。ボニート様がお帰りになりました。」


 話していると、従僕のカルミネの元へ別の使用人が来て耳打ちし、カルミネがそのように伝えた。


「そう。残念だな…いや思ったより早い。じゃあ、そちらへ行くよ。」


 別の使用人は会釈をすると伝える為か去って行った。


「ヴァルフレード?」

「ごめんよ、父が帰って来たみたいだ。一緒に会ってもらってもいいかな?」

「え?はい、分かりました。」

「ごめん。今日はアルフォンシーナとゆっくりしようと思ったんだけれどね。褒美はまた、いただこうかな。」

「ええ。分かったわ。」


 ヴァルフレードは、アルフォンシーナを伴って屋敷へと入っていく。




「失礼します。」

「あぁ、入り給え。」


 談話室へと入ったヴァルフレードは、アルフォンシーナへ振り返ると優しく微笑んでエスコートして、ソファへと促し隣同士で座った。

 正面にはボニートと、ヴァルフレードの母カルーラが座っていた。


「アルフォンシーナ嬢、来てもらって済まないね。どうしてもカルーラが挨拶をしたいと言ったからね。顔合わせをする事にしてしまったよ。でもこれで、結婚へ向けて話を進めていけるから。女性同士で話す事も必要だろうからね。カルーラ、挨拶を。」

「ええ。
アルフォンシーナちゃん、ごめんなさいね、せっかくヴァルフレードとの愛の語らいの時に時間を作ってもらって。これでも、我慢していたのですけれどね。
…あぁ、こんなに大きく美しくなって。あの頃は本当に、可愛らしかったわよねぇ。」


 と、ハンカチ片手に涙ながらに挨拶をしてくれるカルーラに、そう言えば、朧気ながらこの優しい雰囲気を覚えていると思った。


「いえ…アルフォンシーナです。これからもよろしくお願い致します。あの、イヤリングありがとうございました!」

「いいのよ。あれは一足先ではあるけれどアルフォンシーナちゃんのですからね!これからどんどん、分けていくから、好きに使ってちょうだい。」

「はい。ありがとうございます。」

「譲り受けたドレスもあるから、今度一緒に見てちょうだいね。」

「はい!」


「ヴァルフレード、よくやったな。私の代わりに首位を取るとは。一日早く帰って来れば見れたのに残念だ。これでも早く帰ってきたのだがな。」

「はい。アルフォンシーナの為に絶対に勝とうと思いましたから。
いや、それよりも充分早いですよね?かなり飛ばして帰ってきましたよね?」

「まぁな。結局、皆疲れたようであるから、一度家や寮へ帰したわ。」

「それはそうでしょう。ゆっくり休息も必要です。」

「ははは。軟弱過ぎるわ!
アルフォンシーナ嬢、少々、愛が重すぎるかもしれんが、君を想う気持ちは誰にも負けないと思うんだよ。ヴァルフレードを嫌がらないでくれると助かるよ。」

「いえ、そんな…!良くしてもらっていますから。」

「そう言ってくれるとありがたい。代々うちの家系は体はごつい分、女性を大切にするから、心配しないでくれ。」

「はい。ありがとうございます。」

「もうそろそろ、いいでしょうか。父上も、ゆっくり休みたいでしょうし。」


 と、ヴァルフレードがボニートへ割って入る。


「ははは。分かった分かった!二人の時間を邪魔して悪かったよ。ようやくアルフォンシーナ嬢が振り向いてくれたんだものな。」

「ええ、だから一緒に過ごして来ますから!さぁ、アルフォンシーナ、行こう。」

「は、はい。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」

「ええ、いつでも遊びに来てちょうだいね!」

「こちらこそよろしく頼むよ。」


 ヴァルフレードは、アルフォンシーナをエスコートして先ほどの場所へと戻る。また二人きりで楽しく語らう為に、急ぐ足を抑えながら向かっていった。



しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。

勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~

藤 ゆみ子
恋愛
 グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。  それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。  二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。  けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。  親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。  だが、それはティアの大きな勘違いだった。  シオンは、ティアを溺愛していた。  溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。  そしてシオンもまた、勘違いをしていた。  ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。  絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。  紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。    そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ

鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。 平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」 婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。 彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。 二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。 ……はずなのに。 邸内で起きる不可解な襲撃。 操られた侍女が放つ言葉。 浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。 「白の娘よ。いずれ迎えに行く」 影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。 守るために剣を握る公爵。 守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。 契約から始まったはずの二人の関係は、 いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。 「君を奪わせはしない」 「わたくしも……あなたを守りたいのです」 これは―― 白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、 覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。 ---

何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました

海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」 「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。 姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。 しかし、実際は違う。 私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。 つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。 その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。 今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。 「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」 「ティアナ、いつまでも愛しているよ」 「君は私の秘密など知らなくていい」 何故、急に私を愛するのですか? 【登場人物】 ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。 ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。 リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。 ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?

処理中です...