【完結】周りの友人達が結婚すると言って町を去って行く中、鉱山へ働くために町を出た令嬢は幸せを掴む

まりぃべる

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19. いつもと違う土の先に

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「おい、大丈夫か?……ってアレッシアじゃねぇか!?おい、アレッシア!アレッシア!!」


 そのような声が聞こえたアレッシアは体、主に背中が痛い事に気づいた。


「痛たたた…」


 体中が重く、目も開きにくかったがゆっくり開くと体を起こそうとしてそこが先ほどまでいた場所ではないようだと気づいたアレッシアは辺りを見渡した。


「え?」

「アレッシア、一体どうしたんだ!?上から降ってきて…泥だらけだけど、大丈夫なのか?」


 その声に振り向いたアレッシアは、ジャンパオロを先頭に、部屋の入り口から覗いている女の子が数人立っているのに気づいた。


「ジャンパオロさん?」

「アレッシア、とにかくその体中についた泥を落とした方が良い。気持ち悪いだろ?
おい、誰か料理長を呼んでくれ!それから、降ってきた泥を掻き出すのと、枯草を運ぶ為に、台車かバケツか、なんかその辺りのもんを持ってきてくれ!」


 ジャンパオロは振り返り後ろで覗いていた女の子たちに声を掛けると、一斉に走り出して居なくなった。


(泥?…あ。)


 アレッシアは、ジャンパオロにそう言われた為に自身を見ると、水を含んだ土が体中に纏わり付いていた。そして自分が乗っているものはどうやら枯草で、それに運良く乗った為にアレッシアは落ちて来ても酷い怪我は無かったのだと気づいた。

 アレッシアが見上げると、むき出しの土の天井はかなり上に、人が一人入れるくらいの大きさの穴が空いていた。
 かなり高い場所から落ちてきたのだと理解出来、アレッシアは自分でもとても驚いた。


(あんな高い所から落ちたのね。)


「どうやって落ちて来たんだ?けどよアレッシア、その枯草の上で良かったよな。そうじゃなかったらあの高さだ、大怪我じゃ済まないぜ。」


 そう改めて言われ、アレッシアはゾッとしながらジャンパオロへと返事をした。


「本当だわ…。
ジャンパオロさんこそ、どうしてここに?」

「あぁ、おれはこの辺りの仕事に変わったんだ。この部屋、というか空間は動物用の食料庫で、だから枯草があったんだ。
隣で作業してたら、大きな音がしたから見に来たんだ。そしたら天井に穴が空いていてアレッシアまでいて驚いたぜ!」


 そう言われ、アレッシアはこんな場所もあったんだと思った。動物の食料庫という事は飼育でもしているのかとそんな事を考える。


 すると、バタバタと音がして部屋へと人が数人、入ってきた。


「どうした?ジャンパオロ。って、誰だ?なんで泥だらけ…ん?もしかしてアレッシア様?」


 そう口を開いた男性は胸元から膝くらいまでの長さの前掛けをしている。アレッシアがどこかで見たことあるような顔だなと思い首を傾げていると、ジャンパオロがその人物へ言葉を返す。


「料理長、アレッシアの事知ってんのか?
どうやらあの上からアレッシアが降ってきたみたいだ。天井、穴が空いているんじゃねぇか?」

「ジャンパオロ、またそういう口の利き方して!ちゃんとしろって言ってんだろ!?
降ってきたって…アレッシア様大丈夫なのですか?」


 そう言って、料理長と言われた人物はアレッシアへと近づいてきて目線を合わせてそのように聞いてきた為にアレッシアは慌てて答える。


「え、ええ…でもなんだか泥まみれになってしまって…」

「どうしてまたアレッシア様が…!まぁ、今はそんな事はどうでもいいですね。アレッシア様、お体は大丈夫ですか。動けるなら風呂へ行かれますか?」

「はい、この枯草に助けられました。あのあなたは…?」

「あぁ、私はカジョと申します。いつもうちに買い物に来てくれていましたよね?母がアレッシア様が来るのを楽しみにしておりました。
別に料理が詳しいわけでも無いのに、いろいろとあってここでは料理長となってしまいましたがね。」

「え!?カジョ?えっと…あ!まさかドミンガさんとこの?ごめんなさい、気づかなくて……。」

「はい。いつもうちの野菜を喜んで買っていってくれて母はとても喜んでいました。私は配達ばかりで、アレッシア様とはそんなにお会いしておりませんでしたからね。気づかないのも無理はありません。」


 そう言われると、ドミンガの面影をカジョの中に見ることが出来たアレッシアはしかし、疑問を口にした。


「ドミンガさん、息子の音沙汰がないって嘆いていましたよ。」

「あー…そうですか。忘れてました。三カ月ほど前に金を稼ぎに鉱山へ来たのですがね、飯がお世辞にも美味いと言えたもんではなくて…野菜を活かさないただ切っただけ、焼いただけ、煮ただけの料理しかしてなかった料理人にちょっと文句言ったら、じゃあお前がやってみろと怒られまして。やってみせたらその料理人は辞めちゃいましてね。それ以来私が代理を務めてるんです。」

「良く言うよ、『野菜の旨みを引き出せない奴が料理人って名乗るんじゃねぇ!』って啖呵切ったのは誰だっけねー?」

「チュイ!」


 カジョの横に立っていた男性が口を出してきたが、その人物も見たことあるのような気がしたアレッシアは、チュイと言う名前も聞いたような…と思い口に出す。


「チュイさん…?」

「アレッシア様に名前を呼ばれるとは!ここに来て良かったかもしれません。
うちも、母がいつも喜んでいましたよ、僕は魚屋の息子のチュイです。」

「チュイ、変な事言わんでくれ!お前だって『魚の捌き方も知らねえ奴が料理人って偉そうにしてんな!』って言ったんだろう!」

「そりゃぁ、以前の料理長って奴は『とりあえず食わせてやる』って感じだったからな。それでも、魚の事は僕に任せてくれるようになって幾分か料理が美味くなっただろう。
でもカジョが以前の料理長と代わってくれたお陰で食事もずいぶんと美味しいものになったよな!」


 そう言って、チュイはカジョの肩に腕を回して肩を組んだ。


「まぁ、私らの食事を待っている人がいる事は確かですね。だから帰れないのですよ。チュイも私よりずいぶん前にここへ来たのに、三カ月を過ぎても居座っているのでしょう。」

「まぁね、お前だって僕の綺麗に捌いた魚があるから野菜が引き立つって言うじゃないか。
ま、母ちゃんには悪いが、確かに居心地はいいよな。作業員達は出した料理、ペロリと平らげてしまうんだから作り甲斐があるし。」

「チュイさん…エルカンナさんも三カ月で帰ってくると思ったのに、半年音沙汰ないからってひどく悲しんでいましたよ。」

「!そうか…悪いことをしたなぁ。手紙でも書いてみるか。…手紙て、出せるのか?」

「さぁ?でも私も、母に手紙を書いた方が良さそうですね。書けないのなら、どうにか楽しく生活していると知らせる方法を上に相談してみます。
我々はここで楽しく過ごしていましたが、親には心配を掛けていたなんて全く気づく事が出来ませんでした。
アレッシア様、教えていただきありがとうございます!」

「いいえ、そんな…。」

「なるほどな…。あ!そうだ早くアレッシアを風呂へ連れて行った方が良くねぇか?」


 話していると、聞いていたジャンパオロが頷きながらそう口を挟んだ。


「おお、そうでした!ではこちらへ…」


 そういうと、カジョがアレッシアへと手を伸ばし、アレッシアが立ち上がるのを助けると、風呂へと案内した。
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