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20. 番外編 そして次代の子供達は
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男の子にしては長い銀色の髪を肩まで伸ばしたルジェクは、屋敷の庭を走り回っていた。庭といっても、七歳のルジェクにとったら広く、それでも弟達と遊ぶにはちょうどいい場所であった。
「ルジェク、待てよ!」
「ルジェク兄はやいよー。」
「待って-!」
その後を追いかけているのは、ルジェクと同じ七歳で金色の髪のモイミールと、銀色の髪のラディム、金色の髪オンドジェイだ。
「みんな!休憩しましょー?」
「わーい!母さま-!」
「レナータさま!ありがとうございます。」
少し小高くなった場所に四阿があり、そこにお茶の準備がされ、レナータは子供達を呼び寄せた。レナータには、七歳になるルジェクと、五歳になるラディムの男の子二人の子宝に恵まれた。そして今お腹も大きく膨らんでいる。
モイミールとオンドジェイは、国王となったカシュパル様と結婚した正妃アルビーナの息子達だ。モイミールはルジェクと同じ七歳、オンドジェイは四歳になる。
『王族にとったら、バルツァル領は鬼門』
そう言われていたのだが、歴史を振り返ってみるとどれも王族が強い私怨を持ってククレの湖へと訪れ、願いを込めていた。
だったら、私怨を持たせないように、特別な場所にしなければいいのではないかと辺境伯となったレオシュは考え、国王カシュパルに進言したのだ。カシュパルにも、義弟との間には大きな隔たりがあった事を悔やんでいた。自分の王太子教育が忙しいからと、かまってやれなかったのも一つの原因ではないのかと。
もっとも、今の息子達とは状況が違うのは承知だが、それでも兄弟の仲は良いに越した事は無い。
あの件の全ての元凶は、当時の国王ダリボルが婚約者がいるのにも関わらず妾を作ってしまった事にあるとも言えるがさすがに国の頂点となる国王に苦言を呈する事が出来る者は居なかった。
ダリボルは現在、王妃ズデンカに幾度となく冷たくあしらわれても、王都から少し離れた離宮で贖罪の意味も込めて、ズデンカの尻に敷かれながら生涯を共に過ごしている。
ズデンカも正妃の立場で、妾なんてとなんて舐めた真似をしてくれたんだと当時は腸が煮えくりかえるほどであった。が、国王の一夫多妻は他国でもままあるので全てを飲み込み腹を括ったのだ。
ズデンカもダリボルも、そしてカシュパルも。今回の膿を出し切ってくれた件は心から胸をなで下ろしており、バルツァル辺境伯には益々頭が下がるのであった。その為、その進言はありがたい言葉として受け入れたのだ。
王宮とは違い、伸び伸びと生活できるバルツァル領を、二人の王子はとても気に入っていた。また、同じような年頃の同性の子供がいるのもいい刺激になった。王宮では誰もが二人をチヤホヤする。けれど、ここはそうする人はいない。それが彼らには新鮮だった。
敢えて、ここでは二人を敬称を付けて呼ぶ人もいないのだ。
「ねぇ、レナータ様。ルジェクはどうして強いのですか?」
「強い?」
「はい。先ほどから僕全力で走ってもなかなか追いつけません。魔力無し、って言ったのに魔力使ってるのではないですか?」
「ルジェク兄は魔力使ってないよ!」
「そうは言ってもラディム、ルジェクの足が早すぎると思わない?」
「ふふふ。それはね、いつも警備団の人と一緒に走り回っているからですよ。体力がついているのです。〝鍛錬〟ですわ。」
「たんれん?」
「そうですよ、モイミール。強く、早くなりたいのであれば、そろそろ鍛錬しますか?」
「する!強くなる!なりたい!」
「なりたい-!」
「あらあら。オンドジェイはまだ早いかもしれないわ。でも…そうね。楽しみながら鍛錬、いいわね!」
「レナータ、四人の相手は大変じゃないか?」
「お父様!」
「お父さま!」
「レオシュ様」
「レオシュさま!」
「ええ、大丈夫よ、楽しいわ。
…ねぇ、レオシュ。モイミールもそろそろ、鍛錬したらどう?ここで走り回っているだけじゃつまらないかもしれないわ。」
「そうか…そうだなぁ。
よし!モイミールもオンドジェイも、魔力は少しあったよな。こっちへおいで。」
「「はい!」」
「よし!鍛錬にはいろいろと種類があるんだが…まず!俺を転ばせる事が出来るかな?モイミールとオンドジェイ二人でかかっておいで。」
「えー転ばす?」
「むりだよー。」
「魔力を使ってもいいぞ。」
「いいの?危なくない?」
「大丈夫。何かあったら俺が止めるから。」
「「よーし!」」
「えーずるい!お父様、後で僕ともやって!」
「ぼくもー!」
「分かったよ、順番な?」
ーーー
ーー
ー
今日も、バルツァル領では賑やかな声が響いている。
レナータは、バルツァル領の窮地に王都まで魔術師団の応援を呼びに行ったが、そこで素敵な人と運命の出会いを果たし、共にバルツァル領で生涯を過ごす事となる。
また、レナータがマルツェルと道中で会った事で悪事が露見し、プラハブルノ国の膿を出し切る事が出来た。
レナータは、今日も愛する人と、可愛い息子達と、全力で最大限の幸せな時を過ごしている。
☆★
これで、終わりです。
読んで下さった方、しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、本当にありがとうございました。励みになりました。
「ルジェク、待てよ!」
「ルジェク兄はやいよー。」
「待って-!」
その後を追いかけているのは、ルジェクと同じ七歳で金色の髪のモイミールと、銀色の髪のラディム、金色の髪オンドジェイだ。
「みんな!休憩しましょー?」
「わーい!母さま-!」
「レナータさま!ありがとうございます。」
少し小高くなった場所に四阿があり、そこにお茶の準備がされ、レナータは子供達を呼び寄せた。レナータには、七歳になるルジェクと、五歳になるラディムの男の子二人の子宝に恵まれた。そして今お腹も大きく膨らんでいる。
モイミールとオンドジェイは、国王となったカシュパル様と結婚した正妃アルビーナの息子達だ。モイミールはルジェクと同じ七歳、オンドジェイは四歳になる。
『王族にとったら、バルツァル領は鬼門』
そう言われていたのだが、歴史を振り返ってみるとどれも王族が強い私怨を持ってククレの湖へと訪れ、願いを込めていた。
だったら、私怨を持たせないように、特別な場所にしなければいいのではないかと辺境伯となったレオシュは考え、国王カシュパルに進言したのだ。カシュパルにも、義弟との間には大きな隔たりがあった事を悔やんでいた。自分の王太子教育が忙しいからと、かまってやれなかったのも一つの原因ではないのかと。
もっとも、今の息子達とは状況が違うのは承知だが、それでも兄弟の仲は良いに越した事は無い。
あの件の全ての元凶は、当時の国王ダリボルが婚約者がいるのにも関わらず妾を作ってしまった事にあるとも言えるがさすがに国の頂点となる国王に苦言を呈する事が出来る者は居なかった。
ダリボルは現在、王妃ズデンカに幾度となく冷たくあしらわれても、王都から少し離れた離宮で贖罪の意味も込めて、ズデンカの尻に敷かれながら生涯を共に過ごしている。
ズデンカも正妃の立場で、妾なんてとなんて舐めた真似をしてくれたんだと当時は腸が煮えくりかえるほどであった。が、国王の一夫多妻は他国でもままあるので全てを飲み込み腹を括ったのだ。
ズデンカもダリボルも、そしてカシュパルも。今回の膿を出し切ってくれた件は心から胸をなで下ろしており、バルツァル辺境伯には益々頭が下がるのであった。その為、その進言はありがたい言葉として受け入れたのだ。
王宮とは違い、伸び伸びと生活できるバルツァル領を、二人の王子はとても気に入っていた。また、同じような年頃の同性の子供がいるのもいい刺激になった。王宮では誰もが二人をチヤホヤする。けれど、ここはそうする人はいない。それが彼らには新鮮だった。
敢えて、ここでは二人を敬称を付けて呼ぶ人もいないのだ。
「ねぇ、レナータ様。ルジェクはどうして強いのですか?」
「強い?」
「はい。先ほどから僕全力で走ってもなかなか追いつけません。魔力無し、って言ったのに魔力使ってるのではないですか?」
「ルジェク兄は魔力使ってないよ!」
「そうは言ってもラディム、ルジェクの足が早すぎると思わない?」
「ふふふ。それはね、いつも警備団の人と一緒に走り回っているからですよ。体力がついているのです。〝鍛錬〟ですわ。」
「たんれん?」
「そうですよ、モイミール。強く、早くなりたいのであれば、そろそろ鍛錬しますか?」
「する!強くなる!なりたい!」
「なりたい-!」
「あらあら。オンドジェイはまだ早いかもしれないわ。でも…そうね。楽しみながら鍛錬、いいわね!」
「レナータ、四人の相手は大変じゃないか?」
「お父様!」
「お父さま!」
「レオシュ様」
「レオシュさま!」
「ええ、大丈夫よ、楽しいわ。
…ねぇ、レオシュ。モイミールもそろそろ、鍛錬したらどう?ここで走り回っているだけじゃつまらないかもしれないわ。」
「そうか…そうだなぁ。
よし!モイミールもオンドジェイも、魔力は少しあったよな。こっちへおいで。」
「「はい!」」
「よし!鍛錬にはいろいろと種類があるんだが…まず!俺を転ばせる事が出来るかな?モイミールとオンドジェイ二人でかかっておいで。」
「えー転ばす?」
「むりだよー。」
「魔力を使ってもいいぞ。」
「いいの?危なくない?」
「大丈夫。何かあったら俺が止めるから。」
「「よーし!」」
「えーずるい!お父様、後で僕ともやって!」
「ぼくもー!」
「分かったよ、順番な?」
ーーー
ーー
ー
今日も、バルツァル領では賑やかな声が響いている。
レナータは、バルツァル領の窮地に王都まで魔術師団の応援を呼びに行ったが、そこで素敵な人と運命の出会いを果たし、共にバルツァル領で生涯を過ごす事となる。
また、レナータがマルツェルと道中で会った事で悪事が露見し、プラハブルノ国の膿を出し切る事が出来た。
レナータは、今日も愛する人と、可愛い息子達と、全力で最大限の幸せな時を過ごしている。
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おこ様、ありがとうございます!
嬉しい言葉を掛けていただきありがとうございますo(*´︶`*)o
最後まで読んで下さいましてありがとうございました)^o^(