お酒の力で推しを誘惑してました

AIM

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気づいてないのはお前だけ

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「んで? 上手くいったのかよ」

 キッチンに水を取りに行ったら、シェアハウスのメンバーの一人、俊輔がいた。俺を見てニヤニヤしながら聞いてくる。
 明花里は全く気づいていないようだが、昨晩二人っきりで過ごせたのは、こいつと他のメンバーに協力してもらったからだ。明花里以外はみんな俺の気持ちに気づいていて、散々発破をかけられていた。
 だから、こいつのにやけた顔がうざいと思ってもあまり邪険にはできない。かと言って愛想良くしようとは微塵も思わないので、ああ、とだけ返しておく。

「何だよー相変わらず反応薄いな、お前は! 上手くいったんならもっと喜べよ!」
「……喜んでる」
「ハハッ、何だよその顔! 全然嬉しそうに見えねー」

 そう言いながら肩を組まれて、自分でも眉間の皺が深くなるのがわかる。
 シェアハウスに住み始めた当初から、俺はこいつのやたらと多いボディタッチが苦手だ。だけど悪いやつじゃないし、何となく憎めないところがあるからなぁなぁにしている。
 今回のことだって、なかなか一歩踏み出せない俺の背中を押してくれたから、やっと明花里と恋人になれた。直接言うつもりはないが、こいつの気遣いには感謝している。

「んで? 愛しの明花里ちゃんはどうしたのよ?」
「俺の部屋で寝てる」
「はぁ!? もうそこまでいったのかよ!」
「そんなにビックリすることないだろ」
「いやだって、あれだけ片想い拗らせてたお前がそんな積極的に……」
「うるさい」

 明花里から誘われたようなものだとは言わない。こいつのことだ、きっと面白おかしくからかってくるに違いない。

「へー? ふーん?」

 ほら、この顔。何か面白いことはないか探っている顔だ。

「そういや、レティカさんと会ったぞ。上手くいったか知りたがってた」

 そうだ、レティカにも散々世話になったな。女性の扱いに疎い俺にアドバイスしてくれたお陰で上手く行ったと言っても過言ではない。後で礼をしておこう。
 そう言えば、明花里は俺とレティカがお似合いとか何とか言ってたな……全く。俺がどれだけ明花里のことを好きか知らずに無邪気な顔で聞いてくるから、さっきは貪るように抱いてしまった。すぐに乱れて喘ぐ明花里、エロかったな……。

「あ、お前今エロいこと考えてるだろ?」
「チッ」
「あー図星だー! へー明花里ちゃんって実はすごいんだ? いてッ!」

 俊輔の下世話な言葉を聞いて、思わず腕を捻り上げていた。

「明花里で妄想するな」
「ちょっ、痛いって! 悪かった、悪かったから!」

 ほんとこいつは油断も隙もない。気分が悪い。早く明花里のところへ戻ろう。

「あ、部屋に戻んの? 他の奴ら、夕方くらいには戻ってくるから気をつけなねー」

 ヒラヒラと手を振りながら、俊輔が去っていく。もしかしなくても、もう少し俺に時間をくれるらしい。

「ありがとな」

 俊輔が玄関扉を閉めるのを見届けて、俺は小さく呟いた。


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