お酒の力で推しを誘惑してました

AIM

文字の大きさ
7 / 7

気づいてないのはお前だけ

しおりを挟む
「んで? 上手くいったのかよ」

 キッチンに水を取りに行ったら、シェアハウスのメンバーの一人、俊輔がいた。俺を見てニヤニヤしながら聞いてくる。
 明花里は全く気づいていないようだが、昨晩二人っきりで過ごせたのは、こいつと他のメンバーに協力してもらったからだ。明花里以外はみんな俺の気持ちに気づいていて、散々発破をかけられていた。
 だから、こいつのにやけた顔がうざいと思ってもあまり邪険にはできない。かと言って愛想良くしようとは微塵も思わないので、ああ、とだけ返しておく。

「何だよー相変わらず反応薄いな、お前は! 上手くいったんならもっと喜べよ!」
「……喜んでる」
「ハハッ、何だよその顔! 全然嬉しそうに見えねー」

 そう言いながら肩を組まれて、自分でも眉間の皺が深くなるのがわかる。
 シェアハウスに住み始めた当初から、俺はこいつのやたらと多いボディタッチが苦手だ。だけど悪いやつじゃないし、何となく憎めないところがあるからなぁなぁにしている。
 今回のことだって、なかなか一歩踏み出せない俺の背中を押してくれたから、やっと明花里と恋人になれた。直接言うつもりはないが、こいつの気遣いには感謝している。

「んで? 愛しの明花里ちゃんはどうしたのよ?」
「俺の部屋で寝てる」
「はぁ!? もうそこまでいったのかよ!」
「そんなにビックリすることないだろ」
「いやだって、あれだけ片想い拗らせてたお前がそんな積極的に……」
「うるさい」

 明花里から誘われたようなものだとは言わない。こいつのことだ、きっと面白おかしくからかってくるに違いない。

「へー? ふーん?」

 ほら、この顔。何か面白いことはないか探っている顔だ。

「そういや、レティカさんと会ったぞ。上手くいったか知りたがってた」

 そうだ、レティカにも散々世話になったな。女性の扱いに疎い俺にアドバイスしてくれたお陰で上手く行ったと言っても過言ではない。後で礼をしておこう。
 そう言えば、明花里は俺とレティカがお似合いとか何とか言ってたな……全く。俺がどれだけ明花里のことを好きか知らずに無邪気な顔で聞いてくるから、さっきは貪るように抱いてしまった。すぐに乱れて喘ぐ明花里、エロかったな……。

「あ、お前今エロいこと考えてるだろ?」
「チッ」
「あー図星だー! へー明花里ちゃんって実はすごいんだ? いてッ!」

 俊輔の下世話な言葉を聞いて、思わず腕を捻り上げていた。

「明花里で妄想するな」
「ちょっ、痛いって! 悪かった、悪かったから!」

 ほんとこいつは油断も隙もない。気分が悪い。早く明花里のところへ戻ろう。

「あ、部屋に戻んの? 他の奴ら、夕方くらいには戻ってくるから気をつけなねー」

 ヒラヒラと手を振りながら、俊輔が去っていく。もしかしなくても、もう少し俺に時間をくれるらしい。

「ありがとな」

 俊輔が玄関扉を閉めるのを見届けて、俺は小さく呟いた。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...