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1 apéritifー食前酒ー
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「それで、この後はあんたが相手してくれるのか?」
いきなり尋ねられた内容に、エレノアは目を瞠った。
様々な種族が混在する大都市、リンドールでもエリート中のエリートが集う騎士団の副団長であるオオカミ族の男が、なぜかわざわざ人気のないエレノアを指名してきたからだ。
エレノアはプロの娼婦なので、相手をするのはもちろん問題ない。しかし今、この場にはエレノアよりもずっと美しくやり手の娼婦が何人もいるし、実際に先程まで男に手酌をしていたシーラは、エレノアが勤める娼館でも指折りの娼婦だ。愛想がよく妖艶なネコ族のシーラにかかれば、大抵の男はイチコロだと言うのに。
確かに妖精族のエレノアの羽はとても美しく、パッとしない容姿の中で唯一自慢できる部分ではある。
ただ、致命的に愛想がない。エレノアは、「塩対応」な娼婦として仲間内で噂になるほど無愛想だった。
しかし、そんなエレノアを好む常連客が片手で数えられるくらいにはいる。だから目の前の男も、もしかすると何か変わった性癖を持っているのかもしれない。
「嫌か?」
「いえ、私わたくしでよろしければお相手させて頂きますが……」
流石にプロとして、他の娼婦の方がおすすめですよ、などとは言えない。だが、後で文句を言われるのもあまり気分が良くないので、念のため確認しておくことにした。
「あの、本当に私わたくしでよろしいのですか?」
「あんたがいい」
真っ直ぐに目を見つめられて断言された。ただそれだけなのに、圧倒されそうになって小さく息を呑む。
男は騎士というだけあって、かなりガタイが良い。他種族と比べて小柄なエレノアからすると、目の前に筋肉の壁があるように見える。しかも、先の遠征で負ったという生々しい顔の傷のせいで、余計に厳つい見た目になってしまっている。
近寄り難い容姿ではあるが、男のような歴戦の騎士を好ましく思う娼婦もそこそこいて、現に今もエレノアを妬ましそうに見つめる視線が突き刺さっている。しかし男は他の娼婦からの秋波に気付いていないのか、どうでもいいと思っているのか、一心にエレノアを見つめ続けていた。
「……かしこまりました。お部屋にご案内致します」
(後で姐さんたちに嫌味言われそう……)
内心辟易したが、仕事は仕事。塩対応だと揶揄されてもエレノアは仕事で手を抜いているわけではないのだ。
エレノアの言葉に頷いた男を引き連れて宴の席を離れながら、エレノアは数少ない接客プランを頭の中で思い浮かべていた。
いきなり尋ねられた内容に、エレノアは目を瞠った。
様々な種族が混在する大都市、リンドールでもエリート中のエリートが集う騎士団の副団長であるオオカミ族の男が、なぜかわざわざ人気のないエレノアを指名してきたからだ。
エレノアはプロの娼婦なので、相手をするのはもちろん問題ない。しかし今、この場にはエレノアよりもずっと美しくやり手の娼婦が何人もいるし、実際に先程まで男に手酌をしていたシーラは、エレノアが勤める娼館でも指折りの娼婦だ。愛想がよく妖艶なネコ族のシーラにかかれば、大抵の男はイチコロだと言うのに。
確かに妖精族のエレノアの羽はとても美しく、パッとしない容姿の中で唯一自慢できる部分ではある。
ただ、致命的に愛想がない。エレノアは、「塩対応」な娼婦として仲間内で噂になるほど無愛想だった。
しかし、そんなエレノアを好む常連客が片手で数えられるくらいにはいる。だから目の前の男も、もしかすると何か変わった性癖を持っているのかもしれない。
「嫌か?」
「いえ、私わたくしでよろしければお相手させて頂きますが……」
流石にプロとして、他の娼婦の方がおすすめですよ、などとは言えない。だが、後で文句を言われるのもあまり気分が良くないので、念のため確認しておくことにした。
「あの、本当に私わたくしでよろしいのですか?」
「あんたがいい」
真っ直ぐに目を見つめられて断言された。ただそれだけなのに、圧倒されそうになって小さく息を呑む。
男は騎士というだけあって、かなりガタイが良い。他種族と比べて小柄なエレノアからすると、目の前に筋肉の壁があるように見える。しかも、先の遠征で負ったという生々しい顔の傷のせいで、余計に厳つい見た目になってしまっている。
近寄り難い容姿ではあるが、男のような歴戦の騎士を好ましく思う娼婦もそこそこいて、現に今もエレノアを妬ましそうに見つめる視線が突き刺さっている。しかし男は他の娼婦からの秋波に気付いていないのか、どうでもいいと思っているのか、一心にエレノアを見つめ続けていた。
「……かしこまりました。お部屋にご案内致します」
(後で姐さんたちに嫌味言われそう……)
内心辟易したが、仕事は仕事。塩対応だと揶揄されてもエレノアは仕事で手を抜いているわけではないのだ。
エレノアの言葉に頷いた男を引き連れて宴の席を離れながら、エレノアは数少ない接客プランを頭の中で思い浮かべていた。
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