Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

文字の大きさ
112 / 167
リンド法国編

0109 王都最大級の神殿

しおりを挟む
 ヒガシムラヤマ領再建の功労を称えられ、バレット国王より授かったジョアン・リーズ・ハラン邸を玲子と共に下見の為に王都の石畳を歩いている。

「どんなところかな?何でも貧乏貴族で質素な生活を送っていたと聞いていたんだけど。」
 俺は、期待を胸に心弾ませている玲子の横顔に話しかける。
 それにしても、この世界に来て5年以上経っているのに、玲子は何も変わらず綺麗だなと思ったりして・・・。
「そうね。2号店位の大きさ位あればいいのだけど。」
 レストランミツヤ2号店。舞踏会も出来るほどの大きさの屋敷を誇る店だ。それを基準にしているのは、感覚が麻痺しているのか?とも思ったりする。

「ここだ。着いたね。」俺たち二人は旧ジョアン邸に着いたのだが・・・。
 何この大きさ・・・。旧ジョアン邸は2号店をはるかにしのぐ大きさで、レストランミツヤを開店するとすれば最大級の広さを誇る。

「広すぎだろ?これって。何が貧乏貴族だ。アイツ、嘘ついていやっがったな!」
 俺はジョアンに一瞬、腹立たしさを覚えつつも、ふと疑問にも思った。
 何で、この邸宅を捨ててまでヒガシムラヤマ領にやって来たのか?金目当てで来たのではないと解っていても、疑いたくもなる。

 しかし、その疑いはすぐに晴れる事になる。

 ジョアン邸は、その広さと相まって質素な印象を受ける。
 庭には手入れをしなくてもいいように、植物なども植え付けられていない。

 俺と玲子は簡素ながらも綺麗な保管状態の庭を歩きながら入り口玄関へと移動する。その道中、何人かの使用人の姿を目にした。バレット王子が気を利かせているのか?

 大きな玄関扉を開けると、使用人十数名と執事らしき人物がいた。
「オウカ様ですか?」と執事風の男が声をかけてきた。
「ああ、そうだ。あなた達は?」
「我々は、ジョアン様に仕えていた者でございます。」
 執事風の男は頭を深々と下げ、それに合わせて使用人の者も頭を下げてきた。

「仕えていたとは、どういうことですか?」
 執事風の男は頭を上げることもなく「我々は、必ずオウカ様がこの屋敷を引き継いでくださるとのジョアン様の命を受け、今までこの邸宅を管理しておりました。」
 俺が必ずこの邸宅を引き継ぐ?どういう事だろう?もう少し突っ込んで聞いてみるとするか。
「俺がこの邸宅を引き継ぐとは一体、どういうことですか?」

 やっと、頭を上げた執事風の男は真っすぐに俺を見ながら淡々と話始めた。
「主様がヒガシムラヤマ領に行かれると決まった日に、オウカ様が王都にお帰りの際は是非、この邸宅を譲って下さるように王様にお願いをしたそうです。お金は主様の持つ資材を全て売り払って私たちの為と残して下さいました。足らない分は王様より援助を受けておりました。」

「・・・・。」

「オウカ様、我々の願いを聞き届けて頂けないでしょうか?」
 執事風の男と使用人風の人達全員が片膝をつきながら神妙な顔付きで言ってくる。
 俺達としては、願ったり叶ったりの願い出。断る理由もない。
「もちろんです。皆さんの事は俺達が面倒を見ますよ。これからもこの邸宅で働いてください。」俺は執事風の男の肩に手をやりながら、彼の願いを聞き届けると約束をした。






ー***-






「なぁ、バレット?」
 クロゲワギュウステーキを上手そうに口にしているバレットに俺は相談を持ちかけた。
「ジョアンの邸宅、あれって広すぎるだろう。俺にどうしろって言うんだよ?」
 するとバレットはナイフを皿に戻し
「何、サリーとの新居にすれば良いだけの話ではないか?オウカさんも晴れて、第一貴族になったのだ。これぐらいの邸宅は必要だろ?」当たり前の顔をしている。
「いいか?俺はサリーを含め嫁の数は151人いる。サリーだけを特別扱いをするつもりはない。それにベルサイユ宮殿にいる者全員は俺の家族だ。離れる訳も行かん。」

 バレットは肩を少し落とし、椅子に背を預け軽い笑みを浮かべながらステーキを見ている。
「オウカさんらしいね。」息をつきながら俺を見ている。
「じゃあ、神殿を作るのはどうかな?」
「神殿?王宮にあるだろ?」
「王宮にはあるのだけど、民の為の神殿はどれも小さいのですよ。ジョアン邸なら大人数の儀式なども出来るはずなんです。」
 確かにジョアン邸の広さなら王宮よりも広い神殿が出来るのは間違いなしだ。しかし、需要があるのか?
「そんなに広い所にみんなが集まるものなのかな?それぞれの神殿で十分だろ?」
「では、他の神殿を閉めてしまったらいいんじゃないか?」バレットは平然と言い放つ。

 他の神殿を閉める?そんな事をしたら、みんな困るだろうし、サリーナへの冒涜とも捉えられかねん。
「ちょっと待ってくれ。サリーナに確認を取る。」急いでサリーナに連絡をする。


「サリーナ?確認したいことがあるんだけど。」
「何だ?改まって。」

 俺は事のいきさつについて包み隠さずにサリーナに話をした。
「いいんじゃないか?」意外に簡単に答えが返って来る。
「本当にいいのか?神殿を潰すって事はお前への冒涜にならないか?」
「冒涜?何を言っている。わらわはそんな細かいことは気にしない。それよりも気になるのがそれぞれの神殿に置かれている「不細工な女神像」が設置されていることだ。あれこそ、わらわに対する冒涜であろう?」
「どうしても、気になるというのなら。」一呼吸置き、サリーナは続けて言った。
「他の神殿は間引くと言う感じで減らしていき、最終的に全部なくすか、正しいわらわの像を建立することだな。」
「それでいいのか?サリーナがいいと言うのならそうするが。」
「ただし、条件がある。」電話の向こうでもサリーナが真剣だと言うのが解る。
「オウカよ、そこにバレットはいるのだろ?スピーカをオンにしてくれ。」

「・・・私は女神クリス・サリーナです。」
 その声にバレットは口にしていたステーキを吐き出し、敬服をした。
「王都で一番広い神殿を作ると言う提案は非常に良いことだと思います。」
「ただし、その神殿にはゼノン・カレラ最高司祭を常駐させなさい。いいですね。」
「王都の民、全員に私の祝福を授けましょう。」
 サリーナの言葉にバレットは更に頭を下げ、ハハッ!と答えた。

 レストランミツヤにゼノン司祭を呼んで事のいきさつを話してみると、司祭は王都最大の神殿が出来る事、自分が任せられることに興奮し、すぐに受け入れた。

 その後が大忙し。俺はベル商会に機材の大量発注をしたり改築の為の設計図をゼノン司祭と話し合ったり、ドワーフには新たにサリーナの像を作る指示を出した。
 ドワーフから大きな女神像を作れば良いのか?と聞かれたのだが、サリーナに確認を取ると、これを拒否。アイツ背丈とかにもこだわりがあるのか?そう思ったりもする。

 王宮からは、ゼノン司祭筆頭に神官全員が引っ越し。総勢30名。それでもジョアン邸は部屋が余るので、改めて邸宅の広さを感じてしまう。

 元々ジョアン邸にいた執事たちは、そのまま神殿の管理と神官たちの世話をしてもらうと言う風になった。

 殺風景な庭園に木々や草花を植え、華やかさも取り戻した。
 気になる運営費に関してだが、王宮と俺とでの折半、その代わりレストランミツヤの税金の徴収額を減らすという事で決着も着いた。

 宮殿の運営方法に関しては、出来るだけいつでも開けておきたいとのゼノン司祭たっての希望が上がった。
 ゼノン司祭が言うには、一人でも多くの人達に寄り添いたいとの事。お祭りや結婚式にも携わりたいと言う地域密着型の神殿を目指すという事であった。

その考えにサリーナも大いに賛同し、特別に命名権を授けると言った。ん?
「なあ、ゼノン司祭に命名権を与えるって、俺と同じように女性は嫁になるんじゃないのか?」
「いや、ゼノンには男女子供、関係なく名前を与える権限を与えたぞ。」
「それじゃ、名付けられた人達には何も起こらないという事か?」
「ああ、わらわの加護と祝福を受けるだけだ。」
「ちょっと待て。何で俺には副作用があって、ゼノン司祭にはないんだ?」
「そりゃ、そうだ。ゼノンは聖職者で、オウカは勇者だからな!その違いよ!」
「これからも、眷属と嫁を増やして行けばよい。」
「何だよ、それ・・・。」

「オウカよ。これが本来の正しい神殿の在り方なんだよ。良くここまで世界を変えてくれた。感謝する。」
「解った、解った。じゃあな。」スマホを切った。

 準備をしていると一ヶ月という時間は早いもので、いよいよ神殿のお披露目会。
バレット国王率いる王国の貴族全員が参列した。

 一番、喜んでいるのはジョアン。まさか自分の邸宅が神殿になるとは思ってもいなかったので、こんなに嬉しい事はないと涙を流していた。

 バレット国王が「この神殿をヤヌス中央神殿と名称する!」と宣言をして式典は終了した。

 どうやら、中央神殿に行けば本物の女神像が拝める、名前ももらえるらしいと王都全土に噂が広まり、中央神殿は、毎日が大盛況。ゼノン司祭率いる神官全員が忙しい日々を過ごしていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...