Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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リンド法国編

0110 オムライス専門店ミツヤ

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 ヤヌス中央神殿のお披露目も終わり、ベルサイユ宮殿に戻る途中に廃屋があるのを見つけた。
 大きさはレストランミツヤ1号店よりも一回り大きいぐらいの感じで、ここならば3号店をオープンさせるに持ってこいの場所・大きさと玲子が言った。

 この廃屋は内紛のあった後に誰も手を付けなかった所で、所有者もいないのだと言う。
玲子は即座に買い、工事に入ったのだが・・・。





「う~ん、どうしよう・・・。」玲子がため息交じりに呟いている。
「玲子、また悩んでいるのか?」俺は玲子の為にと紅茶をテーブルに置きながら話しかけてみる。
「3号店をオープンしようと思っているのだけど、どんな店にしようか考えているのよね。」
 レストランミツヤの売り上げは上々、3号店を作る事が目標にあった。しかし、玲子は何を売り出せばいいのかを考えていなかった・・・。不覚と頭を抱えている。

 桜花は笑いながら「いい提案があるぞ。」と悩んでいる玲子に言う。
「どんな提案?」俯いていた玲子はバッと頭を上げた。
「1号店は庶民的、2号店はパーティー向きなんだから、3号店は専門店だよ。」
「専門店って、どんな?まさか日本料理じゃないでしょう?」
「実はこの事も見越してヒガシムラヤマ領で鶏とたまごを大量生産出来る準備をしているんだ。」
 鶏?たまご?玲子はまだ解っていないようだ。
「それにトマトも大量生産の体制を取っている。」
 やっと、玲子も解ったようで「オムライス!オムライス専門店を作るの?」
「ああ、コメも作ってるからオムライスにぴったりだろ?」
「さすが、桜花さん!」





「・・・とまあ、こんな料理を作って欲しいんだ。」
 そう言われ、一瞬悩んだ顔をしたのは、調理担当の「コック」である。
「なるほど・・・。やってみます。」

 最初は、コメが赤いと言う所の問題を解決する所である。
 まずは、トマトと一緒にコメを炊いてみた。がうっすらと色が着く程度で、教えて貰った物とはほど遠い。

 次に炊きあがったコメと一緒にトマトを炒めてみる。これも失敗。
 どうしたものかと考えながら、久しぶりにピザでも作ろうかと準備をしている時だった。

 ピザソースで行けるのでは?

 炊きあがったコメをピザソースで炒めてみる。しっかりとコメが赤色になっている。
 これだ!と試食をしてみると、酸味が強いただの赤いコメ・・・。しかし、この路線で間違いはないのだろう。後は香辛料の問題だ。

 まずは酸味を飛ばす方法。これはあらかじめピザソースを炒めることで解消した。
 次にコクを出さなければならない。コックはあれやこれやと色々な香辛料を試してみては失敗を繰り返した。

 最終的にたどり着いたのはオムライス専用のソースを別に作る事。
 トマトを潰して煮込んでいく。さらにスパイスを足して行くとどろどろになったトマトソースの出来上がりになった。所謂ケチャップだ。

 ソースが出来上がり、コメと一緒に炒め、塩コショウ・・・。うん、中々の仕上がり。
なのだが、オウカからはまだまだと言われたのと同時にアドバイスも貰った。

 オウカのアドバイスもあり、オムライス専用ソースは出来上がったのだが、次は炒めたコメをたまごでくるむという技術。これが結構、難しい。

 何度も失敗をするし、理想はたまごはとろとろしていなくてはならないとのリクエストがあるので、余り火を通せない。素早く出来ないといけないのだ。





ー***-





 コックがオムライスと格闘している頃、俺はラミア族の洞窟に来ていた。

「これはこれは、オウカ殿。今日はどうされましたかな?」
 出迎えてくれるのは、ラミア族の族長、サーペントである。
「こんにちは。また、冷たい鉱石を貰いに来たのですが。」
「どうぞ、好きなだけ持って行ってください。」

 鉱石を持ち帰る理由は「冷蔵庫」を作るためだ。
 オムライスには鶏肉を使う。常温で保管など出来るはずもない。
 1号店、2号店はどうしているのかと言うと、氷魔法で凍らせ、その都度、解凍をしているのだとか。
 それでは、味の質が落ちるというもの。これを機会に全店、冷蔵庫を導入しようと思ったのだ。

 仕組みは簡単。ドワーフに冷蔵庫自体を鉄とこの冷たい鉱石を使って作って貰うだけ。
 冷蔵庫の開発に時間は掛かったけど、それは仕方ない。美味さを追及するには妥協は許されない。

 ベル商会にも、巨大な冷蔵庫?と言うか倉庫を作ってもらった。
 いくらレストランに冷蔵庫を設置しても、大元が常温保管では意味がない。
 冷蔵倉庫設置を見たベルさんが、家庭用も作れば売れるのでは?と言ったが、それは先の話。あれもこれもと手を広げるつもりはない。

 そうこうしていると3か月経っていた。

 今日はオムライスの試食会。
 俺や玲子、リリアなど調理担当の者が座るテーブルにオムライスが置かれていた。
 見た目は上出来のオムライス。黄色いたまごに赤いケチャップが乗っている。
 スプーンを入れてみる。トロっとしたたまごが赤いコメを包み、良い感じに仕上がっている。
 皆で、一口。うん。美味い。日本での専門店程ではないが、及第点だろう。
「リリア、どう思う?」技術的な事はリリアに一任している。
「そうですね。美味しいのですが、ソースに粘りがあれば、もっと美味しくなると思います。」
「そうか。では、技術的な所は二人で開発をしてくれ。」

「実は、あと2種類作って見たのですが・・・。」とコックが言いながら、運んできた。
 ひとつは、ブラウンソースがかかったオムライス。もう一つはホワイトシチューがかかった物だ。

「おお、これは美味そうだ。」と口に運ぶ。美味い!
「これは美味いね!」
「ええ、美味しいです!」と皆が大絶賛。コックも胸を撫でおろしている。
「細かい調整は必要かもしれないけど、これは研究熱心なコックのことだから、大丈夫だろう。来月には3号店、オープンだな!」

 オムライス専門店ミツヤオープン初日。
 まだ開店していないのに、店の外にはお客さんが並んでいる。
 オムライスと言う知らない料理・・・。
 しかし、「ミツヤ」という看板が客の期待度を上げているようだ。

 開店と同時に満席状態。みんなが「オムライスとはどんな料理?」給仕のスタッフは説明で大忙し。
 客の注文も面白い。
 色を名前にして、「オムライス赤!」「オムライス茶色!」「オムライス白!」と言った具合である。

 おかげさまで、売り切れ御免。数時間で閉店となった。

 その日の夕方。
 扉をノックする人がいる。
「今日は、閉店ですよ。」と俺は声をかけると
「オウカさん、オムライス食べさせてよ!」とバレットの声が聞こえた。


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