Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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リンド法国編

0111 ナツ

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「はぁ~・・・。」ため息を漏らしているのは、またまた玲子である。
 レストランミツヤが3店舗になったのは良い事なのだが、問題が生じたのだ。
 店長がいない・・・。

 現在の所、3号店は桜花が仕切っているけど、いつまでもそのままではいけない。
 桜花さんには、主人としてドンと構えて欲しいし、今は何もないけど、必ず、勇者としての仕事も出てくるだろう。

 3号店が忙しいので、今は桜花さんがいない。誰かに相談できればいいのだけれど・・・。

「そうだ、リョウタさんに聞いてみるか?」と玲子はスマホを取った。

「もしもし、リョウタさん?玲子です。」
「お久しぶりですね!レイコ様!」
「実は相談したいことがあって・・・。」
「何でしょうか?」
「実は・・・。」

「そういう事なら、いい人材がいますよ。」
「本当ですか?」
「ええ、すぐに送りましょう。宮殿でよろしいですか?」
「はい。お願いします!」

 スマホを切るやいなや、魔法陣が現れた。
 光の中から出てきたのは、留袖にたすきのいで立ちの少し小柄な女性。
「お久しぶりですわ!」と開口一番、玲子に挨拶をした。
「ええっと、どこかでお会いしましたっけ?」玲子は頭を傾げる。
「私ですよ。冒険者ギルドの受付嬢です!」
「あっ!」

 旧魔王国に行った時に、玲子自身は冒険者ギルドには立ち寄ってはいないのだが、嫌がる桜花さんを捕まえて魔王城に連れて行った女性だ。

「この度は、私を指名してくださり、ありがとうございました。」
 その女性は、深々と頭を下げる。
 指名?私が?リョウタさんにお願いしただけだけど・・・。
「どうして、私が指名した事になるのですか?」と直球で聞いてみる。変に回りくどい聞き方よりも、この方が後腐れないしね。
「国王様直々にレイコ様が困ってるから力を貸してやってくれと言われたんです!これはレイコ様直々のご指名と同じです!」
 その女性はリョウタさんからの指名が、よほど嬉しかったのだろう、満面の笑みを浮かべている。

「そうなんですね。こちらも手を貸して下さるとは有りがたいです。それで、お名前はなんと呼べばいいのでしょう?」
「私の事はナツと呼んでください!」
 話しているうちに自然な流れで、面接のようになって行った。

「ナツさんは、受付嬢をしているとかですが、そちらは大丈夫なのですか?」
「はい!さっき辞めてきました!」

 思い切りがいいと云うのか、何と云うのかヤル気マンマンな人だな。

「お金の計算は出来ますか?」
「勿論できます!と言いたい所ですが、王都のお金と二ホン国のお金は違いますので。教えてくだされば、大丈夫です!」
「接客は・・・受付嬢ですものね。そこは大丈夫ですよね?」
「ええ、愚か者がいれば、私の魔法で精神崩壊させてみますわ!」

 魔法で精神崩壊?この人は何を言っているのだろう・・・。

「あの、お店に来るのはお客さんで、冒険者ではないので精神崩壊はさせなくてもいいですよ。」
「いいんですか?なんなら精神操作で、お金を沢山支払う様にも出来ますが。」
「そんな事、しなくってもいいんですー!」

 やばい。この人、やばい!

「ただいま~。」桜花が帰って来た。

「オウカ様!お久しぶりです!」ナツが元気に挨拶をする。
「お久しぶり・・・ゲッ!ドS受付嬢!」桜花がたじろぐ。
「桜花さん、この人はナツさん。3号店の店長にするから、後はよろしくね。」
 私には、もう無理!桜花さんに丸投げをしよう!

「3号店の店長?ナツさんが?」桜花はまだ、内容を把握しきれずにいる。
「はい!国王様の指名です!」
「玲子、どういう事?」
「新しい店長をと思って考えていたんだけど、桜花さんは忙しいからリョウタさんに聞いてみたの。」
「なるほど・・・。それで、ナツさんが送られてきたと。」
「はい!国王様直々のご指名です!」
「ああ~、カレンさんと仲がいいもんね。ナツさんは。そういう事か。」
「ええ、悪い客は私が精神操作しますわ!」俄然、ナツはヤル気である。
「そんなことは、しなくていい!」桜花は慌てて手をブンブンと振った。

「まあ、カレンさんのお墨付きだから、大丈夫だと思うから店長をやってもらおうかな。」
「はい!よろしくお願いします!」ぺこりと頭を下げる。
「それで、いつから手伝ってくれるの?」
「今からでも大丈夫です!」
「今日は閉店したよ?今日は帰って、明日から来てよ。」

 ナツは急に黙り込んでしまった。
「どうしたの?」俺も玲子も黙り込むナツに謎を覚える。
「実は、家がないんです。」ぽつり。
「冒険者ギルドの職員は全寮制だから、ギルドを辞めた私には家がないんです!」
「ええ⁉それじゃあ、これからどうするつもりだったの?」
「ここで住まわせて貰おうかと思いまして・・・。」

 思い切りがいいのにも程がある・・・。玲子はナツの行動力に感心?呆れていた。

「まあ、部屋は余ってるし、住み込みでいいよ。」桜花も呆れ顔になっている。
「ありがとうございます!」ナツは元気いっぱいに何度もお辞儀をした。

「それでですね、オウカ様!」
「何でしょう?仕事の話なら、現場で教えますよ。」
「私をオウカ様のお嫁さんにしてくださいな。」

 ナツさん、何をしれっと、当たり前のように言ってんの?もう、嫁は要らないよ?
「私、知ってるんです。オウカ様に名付けをしてもらったら、お嫁さんになれるって。」
「だ、誰から聞いたのかな?」
「カレンからです!」カレンさ~ん、何を余計なことをしゃべったの?
「でも、ナツさんには名前がありますよね?誰から付けて貰ったんですか?」
「カレンからです!」

 そっかぁ~、女性が女性に付けるのもありだもんなぁ~。
 桜花は、クラクラする頭を手で抑えるように俯いてしまった。

「大丈夫です!私と結婚してくだされば、私の精神操作で天国に連れて行ってあげます!」
 ナツは桜花に飛びつかんと迫ってくる。
「連れて行かんでいい!」桜花は、逃げるように立ち上がり、距離を取る。

「オウカ様?」
「なんだ!」
「私の名前は、なんと言いますか?」
「貴女の名前は「ナツ」さんです!あっ!」

 しまった!勢いにやられて、つい言ってしまった!

「これで、私はオウカ様のお嫁さん!」と赤らめた頬を両手で抑えるナツ。

「今度は魔族の嫁かよ~。」桜花は頭を抱え込んでしまった。
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