本好きゆめの冒険譚

モカ☆まった〜り

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第八十頁

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 ゆめはベッドで横になっていた。

「私が悪魔と・・・」

・・・眠れない・・・お父さんの言葉が頭から離れない・・・

 気晴らしにもならないのだが、部屋の中をグルグルと歩き回り、リビングへ・・・

 リビングにある写真立てを手に取り、「パパ、ママ…私はどうすればいいの?教えてよ。」

 写真からは返事がないのは解っていても、頼ってしまう。

 こんな時はお笑い番組でも見て気を紛らわすしかない・・・テレビを点けた。

 どこのチャンネルも「緊急特番」でもちきりだった。

 ギリシャだけの話だと思っていた。思っていたのだが、今やヨーロッパ・ロシア・中国・インド・アジア・米国と世界中に広がり、「集団的に」行方不明者が増えているとの事だった・・・。

 現場中継をしている人が今の状態を話している。
 その人すらも画面から消えた。

「あれ?」何かが映っていたのをゆめは見逃さなかった。

 黒い翼を持つ者が、人間の上を通っただけで、人が一瞬のうちに消えた事・・・

 ニュースでは、「原因不明」「人が突然消失する」と報道している。

「みんな見えてないんだ…人には見えてない?それとも早すぎるから目が追いつかない?」

 大通りの「集団喪失の瞬間」のスクープ映像も流れた。確かに街行く人の上空を「黒い者」が通り過ぎた瞬間に人が消えていると言うより、吸い込まれている・・・。

 本来、恐怖と不安で一杯になるはずの映像なのだが、ゆめは冷静沈着にその状況を見ていた。

「消えてしまった人にも家族がいるだろうに、可愛そうだな・・・」

 眼の前の人が消えてしまったら、何と思うだろう・・・見えない恐怖、何処に逃げれば安全なのか判らない恐怖・・・

 考えているうちに、ゆめの中に何かの感情が込み上げてきた。

 両親を失った時の悲しさ、虚しさ、喪失感・・・あの時の何とも表現できない心の叫び・・・もし、皆の為に私が役にたつのであれば・・・もし、一人でも多くの人を悲しみから助ける事が出来る力が私にあるのであれば・・・

 ゆめは、光と共に消えた・・・

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