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冷たい視線がグンナールを貫く。
今の今までガウト伯爵家の中、長男である兄とは違い教育は施されながらも甘やかされることが多かったグンナールにとって、自分はこの夜会の中でもトップクラスにいい男だという自負がなぜかあった。
そのため、両親が言う良縁の一つであるヴォーダン伯爵家の双子の娘のどちらかと婚姻を結び、婿入りできれば万々歳であるということをこの夜会前に吹き込まれていたのもあり、自分の顔と素晴らしいガウト伯爵家の威光があれば、ヴォーダン伯爵家の双子の娘等意のままにできるほど惚れさせられると思っていたのである。
そのため、他の格下の家はもちろんのこと、爵位的には同格であるヴォーダン伯爵家に対しても上から目線で高圧的に出ても問題ないとすら思っていた。
更にグンナールにとって悪かったのがカトリーヌの存在だった。
カトリーヌはこの初参加の夜会こそが、自分と乙女ゲームの攻略対象との出会いの場の一つだと考えて意気揚々と参加していたのだが、その中でもちょっと俺様なところがあり、他の周りにいる子息より派手に目立っていたグンナールのことを、幼馴染のちょっと生意気な子息ポジションだろうと勝手に思い込み、彼をヨイショしてしまったのである。
甘やかされたボンボンで、なおかつ調子に乗りやすいグンナールはカトリーヌがとんでもなく褒めちぎるのを調子よく受け取り、そのままその姉であるグウェンドリンの方へ来たことで騒ぎが起こった。
カトリーヌの時はカトリーヌが「すごいですね!」「本当ですか!?頼りになる方なんですね」と下手に出てくる女の子だったのと、彼女自身可愛らしい容姿なのも相まって、鼻の下がのびのびで調子に乗っていたグンナールは、少しくらい乱暴で男らしい部分を見せておいた方がいいとおかしな考え方をしていた。
グウェンドリンがいるのはグンナールでは話について行けずに敢え無く出て行った跡取りの多いグループ。
次男や三男もいることにはいるが、グンナールとはこれでもかと言わんばかりに話が合わなかった。
次男同士ということで話してみれば、将来はどんなふうに身を立てていくのか、結婚するとしてもどういう家の支え方をするのかだとか、そんなことばかりを話すのである。
とはいえ、実のところこういう話をきちんとしておいた方が将来的に自分の希望に合った家の令嬢と知り合った時に紹介できたり、ちょっとした付き合いから希望職種の求人を教えてあげられたりするので、横の繋がり的にも次男同士は仲良くしておいた方がよかったのだが、グンナールはあっさりとそれを足蹴にした。
ガウト伯爵家は他に爵位を抱えておらず、すでに伯爵位自体は長男に譲られることが決まっているのにそうした将来に関してを全く見定めていないグンナールに、他の次男面子も呆れた顔をして離れて行ったのだが。
そしてグンナールのように将来的なものをまだ定めていない、定めるのに少し時間がかかっていて、その分遊び回っている状態の子息子女が集まったのがカトリーヌ側の集団だったのである。
結果、肩を乱暴につかんで振り向かせ、グウェンドリンがいた集団のすべてを敵に回した状態にあるグンナールは冷たい視線が180度全域から放たれている現状にすこしタジタジしつつも、それでも偉そうにふんぞり返った。
「俺はお前かカトリーヌ嬢と婚約すると言われているんだ!俺と仲良くしておけというのが分からないのか!?」
「そんなお話は全く知りません。いったいどこの誰ですか、そんな突拍子もない話をしたのは。
貴方の様な暴力的で粗野で、礼儀も知らない男などこちらから願い下げです。
さっさと向こうへ帰ってください」
眼を合わせるつもりもないとグウェンドリンがそっぽを向けば、その対応に苛立ったのか、今度は胸倉をつかむ勢いで食って掛かろうとしたところを、そっとグウェンドリンを後ろにかばうように背後に下がらせたのが、シュヴァルドであった。
「我が家主催の夜会で暴力沙汰を起こされては困るんだけど?
それで、婚約の話が出ているらしき令嬢に対して暴力を奮うのは紳士として躾けられた男のやる事かぁ?」
「なんだ貴様!そこをどけ!!」
「そこをどくのはお前の方だよ。我が家だって言っただろ?俺はシュヴァルド、アルファズル侯爵家の次男で、この場で一番爵位の高い家の子供だけど、なんか文句あるのか?」
「え!?」
「お前のせいでグウェンドリン嬢との話が邪魔されてんだよ。とっとと下がれ」
ドン、と肩を強く押して尻もちをついたグンナールに視線を向けることも無く、絡まれたグウェンドリンを囲うようにしてグループはまた集まった。
グンナールが後ろで喚こうとも見向きもせず、再び楽しい談笑を始まらせて後ろを気にもしない。
けれど、そんな子供たちの後ろではグンナールの両親であるガウト伯爵夫妻がペコペコと頭を下げて子供の無礼を詫びている姿があった。
今の今までガウト伯爵家の中、長男である兄とは違い教育は施されながらも甘やかされることが多かったグンナールにとって、自分はこの夜会の中でもトップクラスにいい男だという自負がなぜかあった。
そのため、両親が言う良縁の一つであるヴォーダン伯爵家の双子の娘のどちらかと婚姻を結び、婿入りできれば万々歳であるということをこの夜会前に吹き込まれていたのもあり、自分の顔と素晴らしいガウト伯爵家の威光があれば、ヴォーダン伯爵家の双子の娘等意のままにできるほど惚れさせられると思っていたのである。
そのため、他の格下の家はもちろんのこと、爵位的には同格であるヴォーダン伯爵家に対しても上から目線で高圧的に出ても問題ないとすら思っていた。
更にグンナールにとって悪かったのがカトリーヌの存在だった。
カトリーヌはこの初参加の夜会こそが、自分と乙女ゲームの攻略対象との出会いの場の一つだと考えて意気揚々と参加していたのだが、その中でもちょっと俺様なところがあり、他の周りにいる子息より派手に目立っていたグンナールのことを、幼馴染のちょっと生意気な子息ポジションだろうと勝手に思い込み、彼をヨイショしてしまったのである。
甘やかされたボンボンで、なおかつ調子に乗りやすいグンナールはカトリーヌがとんでもなく褒めちぎるのを調子よく受け取り、そのままその姉であるグウェンドリンの方へ来たことで騒ぎが起こった。
カトリーヌの時はカトリーヌが「すごいですね!」「本当ですか!?頼りになる方なんですね」と下手に出てくる女の子だったのと、彼女自身可愛らしい容姿なのも相まって、鼻の下がのびのびで調子に乗っていたグンナールは、少しくらい乱暴で男らしい部分を見せておいた方がいいとおかしな考え方をしていた。
グウェンドリンがいるのはグンナールでは話について行けずに敢え無く出て行った跡取りの多いグループ。
次男や三男もいることにはいるが、グンナールとはこれでもかと言わんばかりに話が合わなかった。
次男同士ということで話してみれば、将来はどんなふうに身を立てていくのか、結婚するとしてもどういう家の支え方をするのかだとか、そんなことばかりを話すのである。
とはいえ、実のところこういう話をきちんとしておいた方が将来的に自分の希望に合った家の令嬢と知り合った時に紹介できたり、ちょっとした付き合いから希望職種の求人を教えてあげられたりするので、横の繋がり的にも次男同士は仲良くしておいた方がよかったのだが、グンナールはあっさりとそれを足蹴にした。
ガウト伯爵家は他に爵位を抱えておらず、すでに伯爵位自体は長男に譲られることが決まっているのにそうした将来に関してを全く見定めていないグンナールに、他の次男面子も呆れた顔をして離れて行ったのだが。
そしてグンナールのように将来的なものをまだ定めていない、定めるのに少し時間がかかっていて、その分遊び回っている状態の子息子女が集まったのがカトリーヌ側の集団だったのである。
結果、肩を乱暴につかんで振り向かせ、グウェンドリンがいた集団のすべてを敵に回した状態にあるグンナールは冷たい視線が180度全域から放たれている現状にすこしタジタジしつつも、それでも偉そうにふんぞり返った。
「俺はお前かカトリーヌ嬢と婚約すると言われているんだ!俺と仲良くしておけというのが分からないのか!?」
「そんなお話は全く知りません。いったいどこの誰ですか、そんな突拍子もない話をしたのは。
貴方の様な暴力的で粗野で、礼儀も知らない男などこちらから願い下げです。
さっさと向こうへ帰ってください」
眼を合わせるつもりもないとグウェンドリンがそっぽを向けば、その対応に苛立ったのか、今度は胸倉をつかむ勢いで食って掛かろうとしたところを、そっとグウェンドリンを後ろにかばうように背後に下がらせたのが、シュヴァルドであった。
「我が家主催の夜会で暴力沙汰を起こされては困るんだけど?
それで、婚約の話が出ているらしき令嬢に対して暴力を奮うのは紳士として躾けられた男のやる事かぁ?」
「なんだ貴様!そこをどけ!!」
「そこをどくのはお前の方だよ。我が家だって言っただろ?俺はシュヴァルド、アルファズル侯爵家の次男で、この場で一番爵位の高い家の子供だけど、なんか文句あるのか?」
「え!?」
「お前のせいでグウェンドリン嬢との話が邪魔されてんだよ。とっとと下がれ」
ドン、と肩を強く押して尻もちをついたグンナールに視線を向けることも無く、絡まれたグウェンドリンを囲うようにしてグループはまた集まった。
グンナールが後ろで喚こうとも見向きもせず、再び楽しい談笑を始まらせて後ろを気にもしない。
けれど、そんな子供たちの後ろではグンナールの両親であるガウト伯爵夫妻がペコペコと頭を下げて子供の無礼を詫びている姿があった。
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