二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

文字の大きさ
25 / 247

25.

しおりを挟む
冷たい視線がグンナールを貫く。

今の今までガウト伯爵家の中、長男である兄とは違い教育は施されながらも甘やかされることが多かったグンナールにとって、自分はこの夜会の中でもトップクラスにいい男だという自負がなぜかあった。

そのため、両親が言う良縁の一つであるヴォーダン伯爵家の双子の娘のどちらかと婚姻を結び、婿入りできれば万々歳であるということをこの夜会前に吹き込まれていたのもあり、自分の顔と素晴らしいガウト伯爵家の威光があれば、ヴォーダン伯爵家の双子の娘等意のままにできるほど惚れさせられると思っていたのである。

そのため、他の格下の家はもちろんのこと、爵位的には同格であるヴォーダン伯爵家に対しても上から目線で高圧的に出ても問題ないとすら思っていた。

更にグンナールにとって悪かったのがカトリーヌの存在だった。

カトリーヌはこの初参加の夜会こそが、自分と乙女ゲームの攻略対象との出会いの場の一つだと考えて意気揚々と参加していたのだが、その中でもちょっと俺様なところがあり、他の周りにいる子息より派手に目立っていたグンナールのことを、幼馴染のちょっと生意気な子息ポジションだろうと勝手に思い込み、彼をヨイショしてしまったのである。

甘やかされたボンボンで、なおかつ調子に乗りやすいグンナールはカトリーヌがとんでもなく褒めちぎるのを調子よく受け取り、そのままその姉であるグウェンドリンの方へ来たことで騒ぎが起こった。

カトリーヌの時はカトリーヌが「すごいですね!」「本当ですか!?頼りになる方なんですね」と下手に出てくる女の子だったのと、彼女自身可愛らしい容姿なのも相まって、鼻の下がのびのびで調子に乗っていたグンナールは、少しくらい乱暴で男らしい部分を見せておいた方がいいとおかしな考え方をしていた。

グウェンドリンがいるのはグンナールでは話について行けずに敢え無く出て行った跡取りの多いグループ。

次男や三男もいることにはいるが、グンナールとはこれでもかと言わんばかりに話が合わなかった。

次男同士ということで話してみれば、将来はどんなふうに身を立てていくのか、結婚するとしてもどういう家の支え方をするのかだとか、そんなことばかりを話すのである。

とはいえ、実のところこういう話をきちんとしておいた方が将来的に自分の希望に合った家の令嬢と知り合った時に紹介できたり、ちょっとした付き合いから希望職種の求人を教えてあげられたりするので、横の繋がり的にも次男同士は仲良くしておいた方がよかったのだが、グンナールはあっさりとそれを足蹴にした。

ガウト伯爵家は他に爵位を抱えておらず、すでに伯爵位自体は長男に譲られることが決まっているのにそうした将来に関してを全く見定めていないグンナールに、他の次男面子も呆れた顔をして離れて行ったのだが。

そしてグンナールのように将来的なものをまだ定めていない、定めるのに少し時間がかかっていて、その分遊び回っている状態の子息子女が集まったのがカトリーヌ側の集団だったのである。

結果、肩を乱暴につかんで振り向かせ、グウェンドリンがいた集団のすべてを敵に回した状態にあるグンナールは冷たい視線が180度全域から放たれている現状にすこしタジタジしつつも、それでも偉そうにふんぞり返った。

「俺はお前かカトリーヌ嬢と婚約すると言われているんだ!俺と仲良くしておけというのが分からないのか!?」

「そんなお話は全く知りません。いったいどこの誰ですか、そんな突拍子もない話をしたのは。
貴方の様な暴力的で粗野で、礼儀も知らない男などこちらから願い下げです。
さっさと向こうへ帰ってください」

眼を合わせるつもりもないとグウェンドリンがそっぽを向けば、その対応に苛立ったのか、今度は胸倉をつかむ勢いで食って掛かろうとしたところを、そっとグウェンドリンを後ろにかばうように背後に下がらせたのが、シュヴァルドであった。

「我が家主催の夜会で暴力沙汰を起こされては困るんだけど?
それで、婚約の話が出ているらしき令嬢に対して暴力を奮うのは紳士として躾けられた男のやる事かぁ?」

「なんだ貴様!そこをどけ!!」

「そこをどくのはお前の方だよ。我が家だって言っただろ?俺はシュヴァルド、アルファズル侯爵家の次男で、この場で一番爵位の高い家の子供だけど、なんか文句あるのか?」

「え!?」

「お前のせいでグウェンドリン嬢との話が邪魔されてんだよ。とっとと下がれ」

ドン、と肩を強く押して尻もちをついたグンナールに視線を向けることも無く、絡まれたグウェンドリンを囲うようにしてグループはまた集まった。

グンナールが後ろで喚こうとも見向きもせず、再び楽しい談笑を始まらせて後ろを気にもしない。

けれど、そんな子供たちの後ろではグンナールの両親であるガウト伯爵夫妻がペコペコと頭を下げて子供の無礼を詫びている姿があった。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...