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グウェンドリンの準備期間はカトリーヌの思い込みによる「お姉さまだけ旅行なんてずるいわ!」「私も連れて行ってよ!」という突撃、暴走行為がところどころあったのもあったが、何よりも勉強に関してが多岐に渡っていること、そして婚約者候補となったシュヴァルドからの手紙が来たのも大きなポイントだっただろう。
村や町の特色、そして疫病や賊の被害を受けたことがあるかの過去記録を漁り、メイドをはじめとした使用人の中にその村や町の出身がいるのであれば、その村や町について、住民の目から見たものを聞き取り。
学ぶための時間が限られているからこそ、焦っているグウェンドリンはどうにか学べるだけ学ぼうと自身の持ち得る時間を全て勉強に充てようとしていたのであるが、タイミング悪くシュヴァルドからの手紙が到着したのである。
「……」
「お、お嬢様」
「まさか、このタイミングで…」
非常に頭が痛い。
急ぎの仕事を仕上げようとしている時に重要なメールが届いてその返事を考えなければならないのは頭を抱えてしまう事態だ。
手紙の返事は後でも構わないが、あまり遅くなるとアルファズル侯爵家に失礼だし、そもそも視察が近づけば近づくほどグウェンドリンもその準備のために時間が拘束されてしまう。
武術の鍛錬と馬術の稽古の最終確認と、視察に同行する人間との顔合わせ、それから視察に赴いた先での行動のタイムスケジュール、それからどこに顔を出して何を見るのかの大まかな説明、その他諸々。
特に視察前に町や村に何かあれば、追加でそちらにも対処しなければならないので、そのために時間に余裕を持たせつつも仕事ができるようにしておかなければならないのだ。
なので、手紙を書く余裕がそれほどない。
おまけに婚約者候補からの手紙となれば内容に合わせてあれこれ考えなければならないことがあったり、対応しなければならないこともある。
今回はまだ挨拶程度ではあると思われるため、1日2日返事が遅れてもさほど問題はないが、グウェンドリンは初の外出、初の視察でひどく緊張状態にある。
何でもかんでも早く終わらせて、じっくりと視察に挑みたいので手紙の返事を今のうちに終わらせるべきか、それとも勉強が終わって寝る前にサカサカ書いてしまうかで悩んでしまっているのだ。
「どうしようかしらね。多分挨拶だと思うんだけど…」
「そうですね…。とはいえ、ちょっと封筒が分厚いような」
普通婚約者候補になったことでのあいさつであれば、それほど長く書く事は無いし、お互いの好き嫌いだったり、何かの好みであったりするものを聞くとしてもそう封筒が分厚くなる事は無い。
が、シュヴァルドから送られてきた手紙はちょっと分厚い。
挨拶にしてはかなり文字を書き込んできたな、といった感想をマーガレットたちも抱かざるを得ない量である。
「と、とりあえず封を開けてみてはいかがでしょうか?」
「…そうね、読んでみる」
ペーパーナイフで封を切り、便箋を取り出す。
まさかの6枚つづり。
一体何を書いてるんだ、とその場に居合わせた面子が凍る。
まさかの6枚つづりに思わずグウェンドリンの手も震えるが、何とか最初の一枚を持ち、目を通す。
拝啓から始まる丁寧な言葉遣いに、グウェンドリンはちょっとホッとした。
変なことは書かれていない。
婚約者候補にとどまっているが、かなり前向きに検討されているため恐らく本決まりになると思われるので、ぜひ仲良くしたいということが書かれている。
しかし、その内容がちょっと怪しくなってきたのは3枚目に入ってくる頃からだった。
1枚目はぜひ仲良くしてほしい旨が丁寧に書かれていたが、2枚目からは好みの話、好きなものの話、苦手なものの話などが書かれていて、少しずつプライベートなことに入っていっていた。
3枚目は、夜会の時のグンナールにしつこくされていないか、厄介なことになっているのであればこちらが全力でもって潰しに行くというとんでもないことが書かれている。
「―――」
婚約者候補になった相手に初めて送る手紙に書くことか?とは思うが、あの夜会でごたごたがあった以上気になるものなのかもしれない。
おまけにあんな態度の相手だったので、婚約者候補に入っていて、なおかつあの夜会の被害者であるグウェンドリンに対して、あまり不安にさせないように自分がこれだけ強く出られるんだというのを見せたいのかもと思う。
ただ、だいぶ物騒。
それ以降はとにかくどうしてあなたに婚約を申し込んだのか、どれほど婚約を申し込みたかったかといった惚気話が延々と続いていた。
「(あ、甘っ!?)」
自分に向けているものだとしても、これほど惚気られるともはや甘さしか感じない。
ちなみに、グウェンドリンにシュヴァルドが語っているものの中には、あの侯爵を驚愕させた朝、枕元に立っている事件も書き連ねられていた。
これを読んだグウェンドリンは、とにかくアルファズル侯爵が苦労している事は強く伝わったなとは感じて、ひどく強い疲労感に襲われるようにして手紙を読み終えたのである。
「これに、返事を書くの?」
この熱量に同量のものを返せと言うのか。
頭を抱えたグウェンドリンを心配したマーガレットとメイドたちは、スッと差し出されたシュヴァルドからの手紙を見てひどく可哀想なものを見る目でグウェンドリンを見た。
結局、寝る前に彼よりは短くなるものの、返事を格式通りに書くことにしてグウェンドリンはその手紙のことを視察が終わるまで頭の片隅に投げておくことを決めて、ベッドにもぐりこんだ。
村や町の特色、そして疫病や賊の被害を受けたことがあるかの過去記録を漁り、メイドをはじめとした使用人の中にその村や町の出身がいるのであれば、その村や町について、住民の目から見たものを聞き取り。
学ぶための時間が限られているからこそ、焦っているグウェンドリンはどうにか学べるだけ学ぼうと自身の持ち得る時間を全て勉強に充てようとしていたのであるが、タイミング悪くシュヴァルドからの手紙が到着したのである。
「……」
「お、お嬢様」
「まさか、このタイミングで…」
非常に頭が痛い。
急ぎの仕事を仕上げようとしている時に重要なメールが届いてその返事を考えなければならないのは頭を抱えてしまう事態だ。
手紙の返事は後でも構わないが、あまり遅くなるとアルファズル侯爵家に失礼だし、そもそも視察が近づけば近づくほどグウェンドリンもその準備のために時間が拘束されてしまう。
武術の鍛錬と馬術の稽古の最終確認と、視察に同行する人間との顔合わせ、それから視察に赴いた先での行動のタイムスケジュール、それからどこに顔を出して何を見るのかの大まかな説明、その他諸々。
特に視察前に町や村に何かあれば、追加でそちらにも対処しなければならないので、そのために時間に余裕を持たせつつも仕事ができるようにしておかなければならないのだ。
なので、手紙を書く余裕がそれほどない。
おまけに婚約者候補からの手紙となれば内容に合わせてあれこれ考えなければならないことがあったり、対応しなければならないこともある。
今回はまだ挨拶程度ではあると思われるため、1日2日返事が遅れてもさほど問題はないが、グウェンドリンは初の外出、初の視察でひどく緊張状態にある。
何でもかんでも早く終わらせて、じっくりと視察に挑みたいので手紙の返事を今のうちに終わらせるべきか、それとも勉強が終わって寝る前にサカサカ書いてしまうかで悩んでしまっているのだ。
「どうしようかしらね。多分挨拶だと思うんだけど…」
「そうですね…。とはいえ、ちょっと封筒が分厚いような」
普通婚約者候補になったことでのあいさつであれば、それほど長く書く事は無いし、お互いの好き嫌いだったり、何かの好みであったりするものを聞くとしてもそう封筒が分厚くなる事は無い。
が、シュヴァルドから送られてきた手紙はちょっと分厚い。
挨拶にしてはかなり文字を書き込んできたな、といった感想をマーガレットたちも抱かざるを得ない量である。
「と、とりあえず封を開けてみてはいかがでしょうか?」
「…そうね、読んでみる」
ペーパーナイフで封を切り、便箋を取り出す。
まさかの6枚つづり。
一体何を書いてるんだ、とその場に居合わせた面子が凍る。
まさかの6枚つづりに思わずグウェンドリンの手も震えるが、何とか最初の一枚を持ち、目を通す。
拝啓から始まる丁寧な言葉遣いに、グウェンドリンはちょっとホッとした。
変なことは書かれていない。
婚約者候補にとどまっているが、かなり前向きに検討されているため恐らく本決まりになると思われるので、ぜひ仲良くしたいということが書かれている。
しかし、その内容がちょっと怪しくなってきたのは3枚目に入ってくる頃からだった。
1枚目はぜひ仲良くしてほしい旨が丁寧に書かれていたが、2枚目からは好みの話、好きなものの話、苦手なものの話などが書かれていて、少しずつプライベートなことに入っていっていた。
3枚目は、夜会の時のグンナールにしつこくされていないか、厄介なことになっているのであればこちらが全力でもって潰しに行くというとんでもないことが書かれている。
「―――」
婚約者候補になった相手に初めて送る手紙に書くことか?とは思うが、あの夜会でごたごたがあった以上気になるものなのかもしれない。
おまけにあんな態度の相手だったので、婚約者候補に入っていて、なおかつあの夜会の被害者であるグウェンドリンに対して、あまり不安にさせないように自分がこれだけ強く出られるんだというのを見せたいのかもと思う。
ただ、だいぶ物騒。
それ以降はとにかくどうしてあなたに婚約を申し込んだのか、どれほど婚約を申し込みたかったかといった惚気話が延々と続いていた。
「(あ、甘っ!?)」
自分に向けているものだとしても、これほど惚気られるともはや甘さしか感じない。
ちなみに、グウェンドリンにシュヴァルドが語っているものの中には、あの侯爵を驚愕させた朝、枕元に立っている事件も書き連ねられていた。
これを読んだグウェンドリンは、とにかくアルファズル侯爵が苦労している事は強く伝わったなとは感じて、ひどく強い疲労感に襲われるようにして手紙を読み終えたのである。
「これに、返事を書くの?」
この熱量に同量のものを返せと言うのか。
頭を抱えたグウェンドリンを心配したマーガレットとメイドたちは、スッと差し出されたシュヴァルドからの手紙を見てひどく可哀想なものを見る目でグウェンドリンを見た。
結局、寝る前に彼よりは短くなるものの、返事を格式通りに書くことにしてグウェンドリンはその手紙のことを視察が終わるまで頭の片隅に投げておくことを決めて、ベッドにもぐりこんだ。
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