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10歳の誕生日パーティーが終わってから3日後、ようやく平穏な毎日が戻ってきた。
まあ、戻ってきたと感じるのはグウェンドリンやカトリーヌだけで、大人たちはその裏でガウト伯爵家への訴訟を視野に入れたあれこれのために動いているうえに、王家との会談の日取りがある程度決まったのも相まって忙しい。
おまけにパーティーの翌日は遠方から来た親類縁者が深夜に戻れないというのもあって泊りがけできていたのもあって、その泊りがけの客人のためにあくせく働いていたのも大きい。
朝方に帰っていく人間もいれば、少し話をしてから帰るため昼頃になってしまう客人もいて、見送りにばたばたしている。
そして使用人たちはパーティーの後片付けもあって基本2日ほどは非常に忙しい日を送っていた。
グウェンドリンやカトリーヌはその間、お祝いの手紙に対してのお礼状を認めたり、泊まった客人の相手を務めたりと忙しい日を送っていた。
相手を務めるとは言っても、基本的には同じ年ごろの子供たち相手のお話やお茶くらいなものだった。
グウェンドリンは父に呼ばれて天蚕に関しての根回しをした貴族の大人に顔合わせして話をしたが、本当にそれ以外の大人との対談はさせられなかった。
なので、家全体が落ち着いたのはパーティーから3日後だったのである。
そしてカトリーヌは少し落ち込んだように部屋から出てこなかった。
流石に婚約者候補になるはずだった男があっさりと消え去ったのは多少なりともショックだったらしい。
ただ、本格的に婚約する前だったからこそ、彼女は傷ものにならなくて済んだので、その点においては彼女もさすがに助かったと言わんばかりの息を吐いていた。
「それで、ガウト伯爵家は今どうなっているの?」
部屋の中で、カトリーヌもいないのもあって恒例のグウェンドリン付きの面子のみのお茶会。
大人たちがガウト伯爵家に対してあれこれ動いているのを知っているからこそ、グウェンドリンはそれを聞いた。
どうせ彼女たちも使用人たちの中の噂話で知っているはずだ。
「今結構ガウト伯爵家は大変そうですよ。今のご当主が即座に引退したいなんてこぼすくらいに」
答えたのは部屋付きメイドの1人だ。
彼女は部屋付きメイドになる前は下働きとして雑用メイドの職についていたので、その際の交流で実は出入りの商人や郵便配達の人間と顔見知りだった。
なので、今でも顔を合わせたりしたときには軽く話をして花を咲かすのだとかなんとか。
その伝手でガウト伯爵家の事を知ったからこそ、彼女はさらっと話をしている。
実際、自分がお仕えする自慢のお嬢様に暴力沙汰を働きかけた、教育失敗の上に無礼な令息などさっさとどこかに行けばいいと事態を知ったときには他の面子も合わせて大激怒だったので、これほどまでに淡々と話せるのである。
「あら、でも次のご当主の長男の方はまだ成人にはなっていないでしょう?」
「ええ、したくてもできないということで泣きながら職務に当たっているのではないでしょうか」
「もしくは寄り親に何とかしてもらっているかでしょうね」
ガウト伯爵家は寄り親の関係にある侯爵家が実はいる。
元々収入が程々かつ、林業関係くらいでしか強みのない土地にいる分、売り出し方がかなり限定される領地だからこそ、他の大きな貴族家に守ってもらわないといけない部分があるのだろう。
しかし、今回の事で寄り親寄り子の関係も切られてしまいそうな感じがするが、そう易々切り捨てれば他の寄り子たちも親から離れていく可能性がある。
かなりシビアな判断が求められるだろう。
「それで、例の次男は部屋に監禁されているそうですよ」
ガウト伯爵家にも行き来することのある、ここらを担当している郵便配達の人間が、伯爵家内から「出してくれ!」と叫ぶまだ年若い少年の声が聞こえたとこぼしていた。
ドンドンと叩くことで響く扉の音もあって、直接家の信用できる人へ渡してほしいと頼まれ、直接家へ訪れて執事に渡そうとしたときの出来事だったのも相まって、かなりびっくりしたとも言っていたらしい。
「監禁はちょっとやりすぎと言われるかもしれないけれど、まあこれ以上やらかされても困るだろうし、それが妥当なのかもしれないわね」
グンナールに関しては、今後のガウト伯爵の采配次第で大きく未来が変わる。
息子がまだかわいいと思っていて、なおかつヴォーダン伯爵家からの賠償金などの負債を全て家が負担すると方向性を決めたのであれば、彼は教会に出家させられる程度に終わるだろう。
これまでの様な優雅で贅沢な暮らしはできないが、ヴォーダン伯爵家とガウト伯爵家に関係しない地方で一修道士としての暮らしは保証される。
家とは勘当されることになるので、二度と戻る事は出来ない。
両親からの最後の愛情が暮らしの保証のされる出家であるということを身に染みて感じながら生涯を過ごすことになる。
逆にグンナールに対してすでに愛想を尽かしていて、なおかつ家がヴォーダン伯爵家からの負債を肩代わりするのを拒否した場合は、彼は過酷な労働の生涯を進むことになる。
流石にグンナールに即座にすべて払えというのは無理があるので、一度は肩代わりするものの、借用書などを作成したうえで彼をどこかに売り払うことになるか、ガウト伯爵家が調べ上げた高額報酬や高額な給料を払ってくれるところへ出稼ぎに行かせることになる。
この世界における高額報酬や高額給与の筆頭は、平民であれば王宮や高位貴族の使用人、それもそれなりの役職に就いている状態にある場合だが、グンナールはそうした王宮や高位貴族の使用人として働けるような人間ではなくなった。
すでにガウト伯爵家という名前自体がアウトになっている可能性は非常に高い。
特に、先日の誕生日パーティーに参加していた貴族とつながりのある所は完全に道を閉ざしたことだろう。
であれば、過酷な鉱山労働や一度出立すれば簡単に帰れない輸出業に関わる船乗りか、もしくは最も危険だが賃金は高い傭兵業かと言ったところだろう。
どれもこれも非常に危ないが、その分のリターンも大きな職業だ。
下手するとあっさり死ぬかもしれないけれど。
これらの職業が嫌だと言ったら、もう彼に残されたのは男娼としてそれなりに良い娼館での働き口しか残されていない。
それほどまでに、賠償金は大きくなるのだ。
貴族の娘に対しての暴行未遂だけでも大事なのに、貴族の威信につながりかねないパーティーで粗相としたわけだから、相手の貴族がどれほど怒り狂うのかをグンナールは分かっていなかったのだろう。
まだほんのり温かい紅茶を口にしながら、グウェンドリンはグンナールの末路を考えた後、その考えをあっさりと捨てて、もう思い出さなかった。
まあ、戻ってきたと感じるのはグウェンドリンやカトリーヌだけで、大人たちはその裏でガウト伯爵家への訴訟を視野に入れたあれこれのために動いているうえに、王家との会談の日取りがある程度決まったのも相まって忙しい。
おまけにパーティーの翌日は遠方から来た親類縁者が深夜に戻れないというのもあって泊りがけできていたのもあって、その泊りがけの客人のためにあくせく働いていたのも大きい。
朝方に帰っていく人間もいれば、少し話をしてから帰るため昼頃になってしまう客人もいて、見送りにばたばたしている。
そして使用人たちはパーティーの後片付けもあって基本2日ほどは非常に忙しい日を送っていた。
グウェンドリンやカトリーヌはその間、お祝いの手紙に対してのお礼状を認めたり、泊まった客人の相手を務めたりと忙しい日を送っていた。
相手を務めるとは言っても、基本的には同じ年ごろの子供たち相手のお話やお茶くらいなものだった。
グウェンドリンは父に呼ばれて天蚕に関しての根回しをした貴族の大人に顔合わせして話をしたが、本当にそれ以外の大人との対談はさせられなかった。
なので、家全体が落ち着いたのはパーティーから3日後だったのである。
そしてカトリーヌは少し落ち込んだように部屋から出てこなかった。
流石に婚約者候補になるはずだった男があっさりと消え去ったのは多少なりともショックだったらしい。
ただ、本格的に婚約する前だったからこそ、彼女は傷ものにならなくて済んだので、その点においては彼女もさすがに助かったと言わんばかりの息を吐いていた。
「それで、ガウト伯爵家は今どうなっているの?」
部屋の中で、カトリーヌもいないのもあって恒例のグウェンドリン付きの面子のみのお茶会。
大人たちがガウト伯爵家に対してあれこれ動いているのを知っているからこそ、グウェンドリンはそれを聞いた。
どうせ彼女たちも使用人たちの中の噂話で知っているはずだ。
「今結構ガウト伯爵家は大変そうですよ。今のご当主が即座に引退したいなんてこぼすくらいに」
答えたのは部屋付きメイドの1人だ。
彼女は部屋付きメイドになる前は下働きとして雑用メイドの職についていたので、その際の交流で実は出入りの商人や郵便配達の人間と顔見知りだった。
なので、今でも顔を合わせたりしたときには軽く話をして花を咲かすのだとかなんとか。
その伝手でガウト伯爵家の事を知ったからこそ、彼女はさらっと話をしている。
実際、自分がお仕えする自慢のお嬢様に暴力沙汰を働きかけた、教育失敗の上に無礼な令息などさっさとどこかに行けばいいと事態を知ったときには他の面子も合わせて大激怒だったので、これほどまでに淡々と話せるのである。
「あら、でも次のご当主の長男の方はまだ成人にはなっていないでしょう?」
「ええ、したくてもできないということで泣きながら職務に当たっているのではないでしょうか」
「もしくは寄り親に何とかしてもらっているかでしょうね」
ガウト伯爵家は寄り親の関係にある侯爵家が実はいる。
元々収入が程々かつ、林業関係くらいでしか強みのない土地にいる分、売り出し方がかなり限定される領地だからこそ、他の大きな貴族家に守ってもらわないといけない部分があるのだろう。
しかし、今回の事で寄り親寄り子の関係も切られてしまいそうな感じがするが、そう易々切り捨てれば他の寄り子たちも親から離れていく可能性がある。
かなりシビアな判断が求められるだろう。
「それで、例の次男は部屋に監禁されているそうですよ」
ガウト伯爵家にも行き来することのある、ここらを担当している郵便配達の人間が、伯爵家内から「出してくれ!」と叫ぶまだ年若い少年の声が聞こえたとこぼしていた。
ドンドンと叩くことで響く扉の音もあって、直接家の信用できる人へ渡してほしいと頼まれ、直接家へ訪れて執事に渡そうとしたときの出来事だったのも相まって、かなりびっくりしたとも言っていたらしい。
「監禁はちょっとやりすぎと言われるかもしれないけれど、まあこれ以上やらかされても困るだろうし、それが妥当なのかもしれないわね」
グンナールに関しては、今後のガウト伯爵の采配次第で大きく未来が変わる。
息子がまだかわいいと思っていて、なおかつヴォーダン伯爵家からの賠償金などの負債を全て家が負担すると方向性を決めたのであれば、彼は教会に出家させられる程度に終わるだろう。
これまでの様な優雅で贅沢な暮らしはできないが、ヴォーダン伯爵家とガウト伯爵家に関係しない地方で一修道士としての暮らしは保証される。
家とは勘当されることになるので、二度と戻る事は出来ない。
両親からの最後の愛情が暮らしの保証のされる出家であるということを身に染みて感じながら生涯を過ごすことになる。
逆にグンナールに対してすでに愛想を尽かしていて、なおかつ家がヴォーダン伯爵家からの負債を肩代わりするのを拒否した場合は、彼は過酷な労働の生涯を進むことになる。
流石にグンナールに即座にすべて払えというのは無理があるので、一度は肩代わりするものの、借用書などを作成したうえで彼をどこかに売り払うことになるか、ガウト伯爵家が調べ上げた高額報酬や高額な給料を払ってくれるところへ出稼ぎに行かせることになる。
この世界における高額報酬や高額給与の筆頭は、平民であれば王宮や高位貴族の使用人、それもそれなりの役職に就いている状態にある場合だが、グンナールはそうした王宮や高位貴族の使用人として働けるような人間ではなくなった。
すでにガウト伯爵家という名前自体がアウトになっている可能性は非常に高い。
特に、先日の誕生日パーティーに参加していた貴族とつながりのある所は完全に道を閉ざしたことだろう。
であれば、過酷な鉱山労働や一度出立すれば簡単に帰れない輸出業に関わる船乗りか、もしくは最も危険だが賃金は高い傭兵業かと言ったところだろう。
どれもこれも非常に危ないが、その分のリターンも大きな職業だ。
下手するとあっさり死ぬかもしれないけれど。
これらの職業が嫌だと言ったら、もう彼に残されたのは男娼としてそれなりに良い娼館での働き口しか残されていない。
それほどまでに、賠償金は大きくなるのだ。
貴族の娘に対しての暴行未遂だけでも大事なのに、貴族の威信につながりかねないパーティーで粗相としたわけだから、相手の貴族がどれほど怒り狂うのかをグンナールは分かっていなかったのだろう。
まだほんのり温かい紅茶を口にしながら、グウェンドリンはグンナールの末路を考えた後、その考えをあっさりと捨てて、もう思い出さなかった。
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