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すでに頭を抱えることくらいしかできない状態に近いガウト伯爵家に関して、ヴォーダン伯爵家はすでに自身の家が抱えている優秀な弁護士に後は任せ、当主とその妻のヴァルファズルとフリーンは王家との対談の日に向けての準備に忙しかった。
対談の際に提出する書類はもちろんのこと、後見または助力する代わりに一部絹やレンタル業などに対しての口利きをすることを契約している貴族の署名に、権利をグウェンドリンのものとするために煮詰めた案のいくつか。
それらをきちんとまとめ、王家に提出するための紙に清書してといったものの最後の最後に近い段階にあった。
元々パーティーの時点ですでに8割がた完成していたのだが、ようやく日時が決まり、さてパーティーが終わり次第完成させて余裕を持って対談へ行こうと思ったところで、ガウト伯爵家への訴訟が入ったので予定が狂った。
とはいえ、すでに終わりかけの業務を1時間もかけずに終わらせるようなもの。
あっさりと終わる。
予定されている日時は1週間後の午後だが、それまでに急な業務が入らないとは限らないので、その間にグウェンドリンにある程度の執務に関しての指導を行うことも決まっていた。
「ではグウェンドリン。これから執務における書類の処理の仕方を教える。
きちんと覚えておくように」
その言葉で唐突に仕事を覚えることになったのを知ったグウェンドリンは、少し待ってほしいと伝えた後、部屋の中から一枚のノートを持って慌てて執事に先導されて執務室へと入っていった。
それからは夕食の時間になるまで、延々と仕事の処理の仕方を覚えることになった。
特に手こずったのは決算につながる書類の分類の仕方。
税金に関しての知識はそれほど多くはないし、簿記の勉強をしたくらいの少女が正確に行うことは難しい。
なので、しっかりとノートにメモとやり方を取りながら一枚一枚時間をかけて処理することになる。
おまけにグウェンドリンが白目をむくのではないかと驚いたのは、書式が統一されていないことにあった。
領地の各地から代官として任された面々が各々の思う書式で送ってきているので、慣れないと判別がつかないものが多かった。
さらに貸借対照表や現金出納帳などの参考書類もまた書式が代ごとに全然違う。
白目をむきたくなっても仕方がないと言えた。
ただ、それでもやらなければと思えたのは、この年齢から多くの家が仕事の処理の仕方を教え始めるというのをこっそり執事のジェームズに聞いたからだ。
家を継ぐのはすでに自分であるという自負がある以上、投げ出すわけにもいかない。
結果、その日から勉強と武術、馬術の稽古以外はそれまでの業務の教育以上にかなり熱心な当主教育、それも実務ありに変わったグウェンドリンであった。
そのグウェンドリンにある程度の執務のやり方を教えて、時間をかけてでも少しでもできるようになったことを確認できた1週間後、伯爵夫妻は王宮へ向けて馬車で出立する。
「では、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
「「行ってらっしゃいませ」」
玄関先で大いに関係者になるグウェンドリンが見送りの挨拶をした後、そろって使用人たちが見送りの挨拶を口にする。
それに手を振って二人は応えた後、馬車へ乗り込み、少しずつ見えなくなっていった。
「ではグウェンドリン様、ご夫妻が王宮で頑張られている間にお勉強と執務を頑張りましょう」
グウェンドリンの補佐として残されたジェームズの言葉に、グウェンドリンは内心渇いた笑いを浮かべて先日と同じ激務に感じるほど慣れない仕事へ向かうことになる。
対談の際に提出する書類はもちろんのこと、後見または助力する代わりに一部絹やレンタル業などに対しての口利きをすることを契約している貴族の署名に、権利をグウェンドリンのものとするために煮詰めた案のいくつか。
それらをきちんとまとめ、王家に提出するための紙に清書してといったものの最後の最後に近い段階にあった。
元々パーティーの時点ですでに8割がた完成していたのだが、ようやく日時が決まり、さてパーティーが終わり次第完成させて余裕を持って対談へ行こうと思ったところで、ガウト伯爵家への訴訟が入ったので予定が狂った。
とはいえ、すでに終わりかけの業務を1時間もかけずに終わらせるようなもの。
あっさりと終わる。
予定されている日時は1週間後の午後だが、それまでに急な業務が入らないとは限らないので、その間にグウェンドリンにある程度の執務に関しての指導を行うことも決まっていた。
「ではグウェンドリン。これから執務における書類の処理の仕方を教える。
きちんと覚えておくように」
その言葉で唐突に仕事を覚えることになったのを知ったグウェンドリンは、少し待ってほしいと伝えた後、部屋の中から一枚のノートを持って慌てて執事に先導されて執務室へと入っていった。
それからは夕食の時間になるまで、延々と仕事の処理の仕方を覚えることになった。
特に手こずったのは決算につながる書類の分類の仕方。
税金に関しての知識はそれほど多くはないし、簿記の勉強をしたくらいの少女が正確に行うことは難しい。
なので、しっかりとノートにメモとやり方を取りながら一枚一枚時間をかけて処理することになる。
おまけにグウェンドリンが白目をむくのではないかと驚いたのは、書式が統一されていないことにあった。
領地の各地から代官として任された面々が各々の思う書式で送ってきているので、慣れないと判別がつかないものが多かった。
さらに貸借対照表や現金出納帳などの参考書類もまた書式が代ごとに全然違う。
白目をむきたくなっても仕方がないと言えた。
ただ、それでもやらなければと思えたのは、この年齢から多くの家が仕事の処理の仕方を教え始めるというのをこっそり執事のジェームズに聞いたからだ。
家を継ぐのはすでに自分であるという自負がある以上、投げ出すわけにもいかない。
結果、その日から勉強と武術、馬術の稽古以外はそれまでの業務の教育以上にかなり熱心な当主教育、それも実務ありに変わったグウェンドリンであった。
そのグウェンドリンにある程度の執務のやり方を教えて、時間をかけてでも少しでもできるようになったことを確認できた1週間後、伯爵夫妻は王宮へ向けて馬車で出立する。
「では、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
「「行ってらっしゃいませ」」
玄関先で大いに関係者になるグウェンドリンが見送りの挨拶をした後、そろって使用人たちが見送りの挨拶を口にする。
それに手を振って二人は応えた後、馬車へ乗り込み、少しずつ見えなくなっていった。
「ではグウェンドリン様、ご夫妻が王宮で頑張られている間にお勉強と執務を頑張りましょう」
グウェンドリンの補佐として残されたジェームズの言葉に、グウェンドリンは内心渇いた笑いを浮かべて先日と同じ激務に感じるほど慣れない仕事へ向かうことになる。
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