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謁見の間に入る。
大きく豪華な扉が開かれたその先には、赤く立派な絨毯が敷かれ、少しの段差の上に絢爛たる玉座が置かれている。
すでに謁見の間の側面部分には、護衛の兵士と共にこの国の上層部、そしてその部下たちがそれぞれ感覚を空けながら配置されていた。
中にはヴァルファズルの顔を見て少し驚いたように横にいる法衣貴族に話しかける人間もいるが、この場にいるほとんどの法衣貴族は今日なぜここにヴァルファズルがいるのかの事情を知っている。
だからこそ、ヴァルファズルへ向ける視線にはどことなく悪意の含まれたいやらしいものが含まれている。
金の林檎が実る木、金の卵を産むガチョウ、黄金の湧く泉。
まさに今後高価でありながら、決して価値が衰えることのないものを得た貴族が目の前にいるからである。
できることなら自分たちがその絹で得られる利益を横取りしたい、権利をこちらに寄越させるようにしてやりたい、金を集りたい、そんな欲塗れの視線が多く集中するも、ヴァルファズルは何も気にせず謁見の間の中央へと足を進め、そこで待機。
それから数分後、玉座の間に宰相であるソアーが入室すると、玉座の間のすぐ下で国王陛下と王妃殿下の入室を告げる。
「国王陛下、王妃殿下の御成り」
グウェンドリンがいたのであれば、現代においてもドラマや映画でよく言っているあの「おなーりー」の言葉だと少しドキドキしていたことだろう。
残念ながら彼女はおらず、そこにいるのは静かに最敬礼をしてその場で首を垂れる貴族たちと護衛兵たちのみである。
謁見の間に現れた国王陛下と王妃殿下は、ヴァルファズルが入ってきた側とは反対側、玉座のある側の壁に作られた扉から現れた。
豪華絢爛、王族としての権力を象徴するかの如く立派な装飾で彩られた正装で現れたご両名はそのまま跪き、頭を下げたままの貴族たちを目に入れながら玉座に進み、そして座る。
そして一拍空けてから「面を上げよ」と国王陛下が口にすることでやっと多くの貴族たちは最敬礼を解いた。
「さて、ヴォーダン伯爵。今回は約束の品の献上ということだったな」
「は、国王陛下ならびに王妃殿下の御眼鏡に適う品と自負しておりますれば」
「そうかそうか、楽しみだな」
冷徹な表情を浮かべるのがデフォルトな国王陛下には珍しく、うっすらと笑みを浮かべているのを見て、王妃殿下もまた何なのかと少し楽しそうに国王陛下へと口を開く。
「まあ陛下、私にも内緒で何をしておられるのです?」
「少し待て。宰相、持ってこさせろ」
「は」
秘密にしている献上品とは何かと気になっている王妃殿下へのサプライズを成功させるためにも、そしてこの場にいる貴族たちにどのようなものが献上されたのかを見せるためにも、国王陛下は宰相へ向けて指示を出す。
その宰相が直々に箱を持ち、玉座へと持って行けば国王陛下が箱を受け取り、そして開いた。
「おお…!」
「なんと美しい薄緑…」
箱の中からでもわかるほど、光を浴びて潤うかのように艶めく薄緑の絹に感嘆の声が出る。
そうしてその箱から絹自体を取り出し、王妃殿下へと渡せば多くの貴族がその絹を目にすることになり、同時に感嘆の声がひどく大きくなっていく。
「これが伯爵領で取れた絹か!」
「は、さようでございます」
「なんと美しい…!これを献上すると申すか!」
「ぜひとも王妃殿下のドレスに仕立てていただければ」
「ええ、ええ!この後すぐに仕立て屋を呼ばなければ」
王妃殿下は淡い緑の天蚕にすっかり心を奪われていた。
手触りも滑らか、現在普及している絹より少し厚みがあるようにも感じるが、それ以上に艶があり、軽く広げて折りたたんでと手でいじりながら見ているが、今の所皺もつかない強靭さ。
これは素晴らしいドレスになると王妃殿下は珍しくワクワクした顔、満足そうな表情で箱に絹をもう一度入れ直した。
大きく豪華な扉が開かれたその先には、赤く立派な絨毯が敷かれ、少しの段差の上に絢爛たる玉座が置かれている。
すでに謁見の間の側面部分には、護衛の兵士と共にこの国の上層部、そしてその部下たちがそれぞれ感覚を空けながら配置されていた。
中にはヴァルファズルの顔を見て少し驚いたように横にいる法衣貴族に話しかける人間もいるが、この場にいるほとんどの法衣貴族は今日なぜここにヴァルファズルがいるのかの事情を知っている。
だからこそ、ヴァルファズルへ向ける視線にはどことなく悪意の含まれたいやらしいものが含まれている。
金の林檎が実る木、金の卵を産むガチョウ、黄金の湧く泉。
まさに今後高価でありながら、決して価値が衰えることのないものを得た貴族が目の前にいるからである。
できることなら自分たちがその絹で得られる利益を横取りしたい、権利をこちらに寄越させるようにしてやりたい、金を集りたい、そんな欲塗れの視線が多く集中するも、ヴァルファズルは何も気にせず謁見の間の中央へと足を進め、そこで待機。
それから数分後、玉座の間に宰相であるソアーが入室すると、玉座の間のすぐ下で国王陛下と王妃殿下の入室を告げる。
「国王陛下、王妃殿下の御成り」
グウェンドリンがいたのであれば、現代においてもドラマや映画でよく言っているあの「おなーりー」の言葉だと少しドキドキしていたことだろう。
残念ながら彼女はおらず、そこにいるのは静かに最敬礼をしてその場で首を垂れる貴族たちと護衛兵たちのみである。
謁見の間に現れた国王陛下と王妃殿下は、ヴァルファズルが入ってきた側とは反対側、玉座のある側の壁に作られた扉から現れた。
豪華絢爛、王族としての権力を象徴するかの如く立派な装飾で彩られた正装で現れたご両名はそのまま跪き、頭を下げたままの貴族たちを目に入れながら玉座に進み、そして座る。
そして一拍空けてから「面を上げよ」と国王陛下が口にすることでやっと多くの貴族たちは最敬礼を解いた。
「さて、ヴォーダン伯爵。今回は約束の品の献上ということだったな」
「は、国王陛下ならびに王妃殿下の御眼鏡に適う品と自負しておりますれば」
「そうかそうか、楽しみだな」
冷徹な表情を浮かべるのがデフォルトな国王陛下には珍しく、うっすらと笑みを浮かべているのを見て、王妃殿下もまた何なのかと少し楽しそうに国王陛下へと口を開く。
「まあ陛下、私にも内緒で何をしておられるのです?」
「少し待て。宰相、持ってこさせろ」
「は」
秘密にしている献上品とは何かと気になっている王妃殿下へのサプライズを成功させるためにも、そしてこの場にいる貴族たちにどのようなものが献上されたのかを見せるためにも、国王陛下は宰相へ向けて指示を出す。
その宰相が直々に箱を持ち、玉座へと持って行けば国王陛下が箱を受け取り、そして開いた。
「おお…!」
「なんと美しい薄緑…」
箱の中からでもわかるほど、光を浴びて潤うかのように艶めく薄緑の絹に感嘆の声が出る。
そうしてその箱から絹自体を取り出し、王妃殿下へと渡せば多くの貴族がその絹を目にすることになり、同時に感嘆の声がひどく大きくなっていく。
「これが伯爵領で取れた絹か!」
「は、さようでございます」
「なんと美しい…!これを献上すると申すか!」
「ぜひとも王妃殿下のドレスに仕立てていただければ」
「ええ、ええ!この後すぐに仕立て屋を呼ばなければ」
王妃殿下は淡い緑の天蚕にすっかり心を奪われていた。
手触りも滑らか、現在普及している絹より少し厚みがあるようにも感じるが、それ以上に艶があり、軽く広げて折りたたんでと手でいじりながら見ているが、今の所皺もつかない強靭さ。
これは素晴らしいドレスになると王妃殿下は珍しくワクワクした顔、満足そうな表情で箱に絹をもう一度入れ直した。
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