二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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そんなこんなを繰り返し、粘り強く1年かけて母であるフリーンが話を続けて行うことで、何とか、本当に何とかカトリーヌは真面目に机に向かうようになった。

過去、こうした話し合いをすればよかったのではないかと思わないでもないが、カトリーヌの方がおそらく本気にしなかっただろうとグウェンドリンは思う。

今回ここまで母の話を聞いて、本気で机に向かうようになったのはそれだけ自分に選択肢がないと分かったからだ。

将来がそれほどまでに狭められつつあることを実感したからに他ならない。

それも原因が自身の不勉強ともなれば、今来ている縁談を一方的にお断りなんてカトリーヌもできないと自覚するには十分だ。

もっと良い所に嫁ぎたいのならきちんと令嬢としての教育を収めなさい、姉であるグウェンドリンのようにちゃんとした令嬢になりなさい。

そんな母の言葉がカトリーヌにとって、どんな重荷になったのか、それは分からないけれど、それでもまあきちんとやるようになったことからも、ナサリー先生は陰で泣くほどうれしそうだったことはここに記しておこう。

「(お母さまもあんな風に言うなんて…)」

過去十年近く合わせてもこれ以上なく真面目に机に向かい、ナサリーが出した課題をこなし、お付きの侍女に付き合ってもらいながらの礼儀作法の練習をしたりとこれまでの人生において、グウェンドリンが視察に行った時の詰め込み教育の日々と同等の忙しい1日を過ごした。

今は休憩中だが、これまでのさぼりとやる気のなさが一気に襲い掛かるような時間だったと言えるだろう。
そんな中でもカトリーヌは延々と母に言われたことを考える。

「(平民に許された行為。でも私は平民になりたいわけじゃない)」

前世においても学生だったカトリーヌはまだ就労に関してを経験していたわけではない。

バイトに関してもしていなかった彼女は、平民になって働くことを望んでいるわけでもなかった。

平民はごく限られた優秀な商家の家だったり、特定の家の後見を受けるほどに優秀な平民でなければ学園にも入れない。

学園に入ってより良い将来の道を切り開くチャンスのない者は、この家の同年代の下働きの少年少女のように働くしかない。

毎日毎日働くのを、まだカトリーヌは前世の両親や今生の父、そしてここ最近の姉の姿でしか知らない。

「(でも、攻略対象に当たる人との出会いは諦められない)」

紹介された縁組が相応に良いものだというのはカトリーヌにも分かっている。

父が一押しするものだし、母にもこの縁組を諦めて受けろと言う程に家にも良いものなのだろう。

でも、それでもカトリーヌは諦められない。

この世界の自分の運命の人だと言えるはずの、素敵な攻略対象者が必ずやってきてくれると信じているから。
だからこそ、母の言う高位貴族に嫁ぐのならもっと頑張らなければならないという言葉はそのまま受け止め、今更ながらではあっても努力しているのである。

そしてついに15歳。

学園への入学が許される年になる。

「(頑張れば、きっと今の婚約の話以上に素敵な出会いがあるはず!)」

努力することは確かに始めたものの、まだ希望を捨てられないカトリーヌはむん、と自分に気合を入れるようにグッと両手を握り、顔の前で少し上下させた。
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