二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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「これ、一応グウェンドリンにも知らせておきますか?」

執務室の椅子に座り込み、頭を抱えつつもフリーンが声にした言葉がこれだ。

グウェンドリンにも一応知らせておこうというのは、彼女が次期当主確定ですでに家の事に関してを把握させつつあるからであり、更に来春から学園に通うからこそ、知らせておいてカトリーヌが他の令息になびくような事があればこちらに知らせてもらう役割を担ってもらいたい意図がある。

グウェンドリンよりもお茶会に頻繁に参加するカトリーヌは、その分知り合いも多いし、グウェンドリンの権利や次期当主としての立場を考えてもつながりたい、縁を結びたいという多くの人間からの標的にされている。
そしてそれは学園に入ればより過激なものになるだろう。

現在すでに多くの人間からヴォーダン伯爵家の地位と財力、そして次期当主の持つ事業の権利を目当てに群がられている状態なのに学園に入れば、それこそハニートラップの如く顔が良くて現在婚約者候補になっている令息以上の相手に落とされるなんてことも考えられる。

それだけは避けなければならないとフリーンが考えて、言葉にした。

その言葉にはヴァルファズルも同意見らしく、大きくコクリとうなずいて、傍にいた執事のジェームズにグウェンドリンを呼びに行かせるのであった。

「……なんというか、まあ」

「言いたいことは分かる。とてもよくわかる」

執務室に呼ばれ、そこで両親からカトリーヌの婚約者候補の令息に関しての話を聞かされ、相手側が求めている条件がなんと言葉にしていいのか分からないで、何とか声にした言葉にヴァルファズルはよくわかるとうなずいた。

実際カトリーヌのお相手は実に都合がいい、むしろそういう相手を敢えて誂えたのではないかと言わんばかりのぴったりさにグウェンドリンは遠い目をした。

ただ、それだけぴったりなのにカトリーヌはいまだになぜか会おうとしないし、手紙の返事も書かない。

けれどそれが良い、それでよいと相手は言う。

このとんでもない状態が相手側が望んでいる状態だということに関して、もはや言葉も出ない。

頭が痛いとばかりに両親と同じように頭に手をやって大きく息を吐く。

「それで、私が任されるのはカトリーヌの監視ですか?」

その言葉に話が早いなと言わんばかりにヴァルファズルは口を開く。

「厳密に言えば、学園入学後にカトリーヌが別の令息になびくようなそぶりを見せた場合、こちらに知らせてほしい」

「法衣伯爵家の令息は浮気などに関しては決して許しはしませんから、なびくような素振りを見せた瞬間、候補に関しても即座に切る可能性がありますからね」

「なるほど、委細承知しました。まあ、私の場合は学園入学後も仕事を手伝うこともありますから、お伝えする機会は多いのでその点に関しては安心ですね」

もしもこれが寮生活を強要される場合、手紙で報告することになるので多少時間がかかる。

場合によっては学園側に不利な内容を手紙に書くことを懸念した学園側が手紙を検閲する可能性もあった。

王立学園だからこそ、検閲の可能性は非常に高い。

その場合、カトリーヌが他の令息になびいているようなことを学園に知られることになり、伯爵家の弱みになりかねなかった。

けれど、寮生活ではないのでその点の心配はもうない。

四六時中、とは言わなくても学園内でカトリーヌに逐一目を光らせなければならないという負担はあるが、それでもまだ報告の手間は少ない。

「もういっそのこと、お相手の家に仕来りを教え込むという名目で預けてしまってはいかがです?
強制的に顔合わせができますし、あちらの家での扱いがどんなものなのかを知れば、意外と前向きになるかもしれませんよ?」

「さすがにカトリーヌを相手の家に預けるのは向こうが迷惑だろう。
ナサリー先生もあちらに行かなければならんし、移動の手間がかかる」

「ああ、確かにそうですね」

「分かってくれたか?それでは、話は以上だ。
急に呼び出して悪かったな。また明日、仕事を頼むぞ」

「はい、失礼します」

休養日として指定している今日は本来ゆっくりするはずだったグウェンドリンに謝罪を伝えて、下がらせる。
複雑化するカトリーヌの婚約関係の話に、室内室外どちらでも親子は同時に溜息を吐いた。
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