二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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それからおおよそ1時間以上経過した後、男爵家に至るまですべてが挨拶を終えて国王陛下の合図で楽団が音楽を奏で始める。

最初の曲はカリドール。

四人一組となって踊る方舞で、ちなみに前世における原点は9世紀のフランスで起こったものだという。

舞踏会では身分が上の者から順番に踊っていくため、最初は国王陛下と王妃殿下、そして王太子殿下と王太子妃殿下が踊り、次に公爵家、辺境伯家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家、という順番で踊り始める。

グウェンドリンはカリドールに関してはシュヴァルドとヒルド、そしてヒルドの婚約者であるヘジンと踊る事を予定していた。

ちなみに、こうした宮廷舞踏会などの大きな催しの場合は曲のプログラムが一緒に送付されていて、曲を確かめることができるようになっているのと同時に、踊りたい人をあらかじめ記載できるようにもなっていたりする。

プログラムに記載されている曲の横に空欄があるため、そこに踊りたい男性の名前を書くのだが、家族公認の恋人がいたり、すでに婚約者が定まっていなかったりする場合は母親がそこに家が決めた男性の名前を記載する。

そして、そこに名前が多く書かれた男性が本命として選ばれるのである。

グウェンドリンとカトリーヌの場合は、すでに相手が決まっている為、それぞれお相手の名前を書いている。

グウェンドリンの場合は当たり前のようにシュヴァルドで、カトリーヌの場合は例の伯爵令息だ。

ただ、4回連続で同じ相手と踊るのはマナー違反とされていたため、グウェンドリンは3曲シュヴァルドと踊ったら、父か別の相手と踊って4回連続を回避するか、踊らずに社交に精を出すつもりだった。

実際、グウェンドリンはこの舞踏会においても社交の方に力を出さなければならない立場にある。

事業のことでの顔つなぎもあるし、先ほどの王妃殿下や王太子妃殿下も注目し、聞き出そうとした美しい髪の秘訣のこともある。

かなり人に話しかけられることになるので、下手すると最初のカリドールを終えたら話しかけられるなんてことになる可能性もあった。

とはいえ、シュヴァルドがそんなことにするわけもない。

カリドールが終わってワルツに入ると、そのままグウェンドリンと横に逸れて、国王陛下と王妃殿下、王太子殿下と王太子妃殿下がワルツを踊り出せば、少しずつ踊るのを休んで他の人との談笑を行う人も増えてくる。

グウェンドリンに話しかけたいと言わんばかりに近づく人間も少なからずいたものの、シュヴァルドがグウェンドリンの視線を固定するかのように腰を抱き、延々と話していたのである。

「(おおう…、さすがの独占欲ね)」

それを近くで見ながら次のワルツをヘジンと踊るために順番待ちをしているヒルドが苦笑しそうな顔を何とか整えて、あまりジロジロ見るのははしたないと気持ちを戻し、スッと視線を王族の皆様方に戻す。

今日はとにかく美しく整えられたグウェンドリンに、シュヴァルドからなんとか奪い取れないかという下心から話しかけたい男や、事業のことでつながりを作りたくて話しかけようとしている男女をとにかく視線を自分に固定することでシャットダウンしている手腕はちょっと見習いたいともヒルドは思った。

ヒルドもまた、友人に対しても婚約者に対してもシュヴァルドには劣るものの独占欲がそれなりにある女である。
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