二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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エリマック侯爵の謝罪行脚が行われた翌日、一つの子爵家に手紙が届いた。

アルファズル侯爵家の封蝋で閉じられた下位貴族ではめったに見られない上等な紙の中でもより上質なそれに、現当主である子爵は震える手でペーパーナイフで封蝋を切って開け、中を見る。

そしてその場に居合わせた息子である子爵令息と子爵の妻である夫人は顔色が悪く、お互いに何があっても寄り添えるようにとちょっと近くにいた。

おまけに子爵令息は例の舞踏会のトラブルであるグラニアとの婚約が本決まりになりそうだったあの令息であったため、尚更顔が真っ青だった。

何せ、アルヴァズル侯爵家から手紙が来るなんて言うと例のトラブルの件に他ならないと思ったからである。

「(あああ、やっぱり謝罪に来いって書かれてるのかなー!?嫌だなー!さっさと父上に言って約束取り付けとくんだったなぁー!!)」

内心、やけくその様な大声を上げているが実際に声を出すことはできない。

それくらい手紙の内容が怖すぎる。

恐る恐る手紙を眺めている父の反応を母と共に伺う令息は、次の瞬間「はぁ!?」と大声をあげた父によって知らぬ間に背後にキュウリを置かれた猫の如く体をはねさせた。

横で思いっきり体をはねさせ、というかびっくりしすぎてジャンプした息子をびっくりした眼で見つめた母がいたが、一拍置いてすぐに父に視線を戻したため何も言われなかったのが幸運である。

「アルファズル侯爵家が後見になってくれるそうだ!」

「「は!?」」

見てみろ!と言われて手紙を渡された二人は、それぞれが片端を片手で持ち合い、内容を見てみると

今回のトラブルにおいて、そちらの令息も巻き込まれて災難なことだったね。

エリマック侯爵家が後見に付くということであちらの娘との婚約が本決まりになりそうだったようだけれど、もうエリマック侯爵家が後見についてもそちらに旨味はないだろうし、うちが後見になるからエリマック侯爵家との縁を薄くしてもらえないだろうか?

エリマック侯爵家の方にはうちが上手い事言っておくから、今回のトラブルの件で申し訳ないけれど婚約の話は辞退させていただきたいという旨を伝えておくだけで大丈夫。

ただ、あちらの自然災害に関しての材木や人材の派遣や購入に関してはもちろん、通常の商売上の関係は咎めないのであちらからの値引きなどに応じず、いつも通りの価格での商売にしてね。

非常に簡単にまとめると、こんなことが書いてあった。

もう少しいうとアルファズル侯爵家が後見に付くことでのメリットなどが書かれていたりもするのだが、とにかくこちらに来ればいいこといっぱいあるよというのが書いてあるわけだ。

「…アルヴァズル侯爵家の後見を受けよう」

「「異議なし」」

即決で議論がまとまったように見えるが、実はこの子爵家は結構エリマック侯爵家に困らされていた立場にある。

自然災害における材木や人材の支払いが遅れるのは仕方のない事だが、普段の購入においての支払いもかなり滞らせることが多かった。

おまけに「すまないが、こちらも忙しいからもう少し待ってくれないか」という明確な支払い期日延長の理由も教えてくれない始末。

税収の入金が遅れているなり、会計担当がまだ小切手などを用意できていないなり、もっとらしい理由を伝える事ができるはずなのに、それをしてくれないのでいつかツケ払いを延々と繰り返すような気がして気が気がじゃなかったのである。

その後知ったのが、娘であるグラニアの馬鹿げた価格のドレス購入による家の傾きと、その後の自然災害の復興のための出費による上向きにならない財政である。

高位貴族ともなればこうした財政に関してのみっともないところを見せられないというのもあって隠すのも仕方ないのだろうが、商売上の信頼にも関わるのできちんと上っ面だけでもきちんとした理由を提示してほしかったのが子爵家側の言い分なのである。

おまけにこちらとの縁を強固につないで災害に備えたいのか、例のトラブル娘であるグラニアと我が家の息子との縁組を持ってくる始末。

侯爵家という雲にも近いところにいる貴族家からの申し出ともなれば、お断りするのもとても難しい。

なので、どうにかまだ候補で留めておいたのだが今回それがこれ以上なく功を奏した。

「良かった、謝罪に来いとか書かれてなくて…!」

「全くだ!お前が先にすぐに謝ってくれていて助かったぞ!」

「良かった、よかったわ。これで我が家も安泰ね!婚約者を選び直さないと!」

我が家のこれからが安泰であるというのもあって、安心した子爵夫妻が安堵の涙をこぼし、わいわいとこれからの事を話し出す。

ちなみにこの後子爵令息はグラニアから解放されたことなどを合わせて雄たけびを上げてめちゃくちゃ怒られた。

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