二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

文字の大きさ
138 / 247

138.

しおりを挟む
舞踏会のトラブルから約半月後、制服のサイズ測定なども終えていつも通り仕事に励むグウェンドリンとシュヴァルドの元に、一つの連絡が国から来た。

「…これは」

上等な紙に書かれたそれは、海を挟んで向こう側にある砂漠の広がる国へ友好の証としてエリマック侯爵家の令嬢、グラニアが嫁ぐというものだった。

「砂漠の国であるパルミューラはそこまで仲良くはないけれど貿易に関しての手を組んでいる国だ」

「シルクはそこからの輸入でしたね」

「ああ」

所謂前世の地球におけるシルクロードの先にある、シリアやアラブ共和国のようなところだと思えばいいだろう。

実際、本で読んだり話を聞いたりしたところ、更に東側にある国から絹を交易で得て、それを絹織物などに加工したり、更に別の国へ輸出したりしている国らしい。

そして、パルミューラの特徴は国が砂漠に囲まれているだけでなく、一般男性に至るまで一夫多妻が認められている国でもあるということだ。

ちなみに地球における一夫多妻は簡単に男性が決められる事ではなくなっている。

国によっては裁判官の許可が必要なところもあれば、第一夫人にお伺いを立てて娶るといった段階を踏まなければならないことも多い。

更に近代的な考え方をする女性も多くなってきたことで、現在では一夫多妻の状態にある事自体かなり少なくなっている国もめずらしくない。

そして、ドバイなどにおける一夫多妻は戦争が尽きない時代に未亡人が続出したことで、そんな女性たちを守るために経済的に豊かな男性たちが生活保障を行うという目的から認められたという歴史からくるものでもある。

残念ながら、この中世風味の世界においての一夫多妻は誰もが安易に考えられるハーレム願望のそれと同じだ。

「…グラニア嬢は、第四王子の第三夫人ですか」

「まあ、あんだけやらかした身の上と考えれば高い方だな」

一夫多妻が認められている国の第三夫人と言われると微妙なところだが、あれだけ騒ぎ立てた上に王家からの覚えもかなり悪くなっただろうグラニアにとっては十分高い方である。

下手すると王家の人間ではなく高官の妻の1人として送られた可能性もある。

しかし、グラニアにとってはそちらの方がずっと良かったのかもしれない。

パルミューラ王国の男性王族はその多くが外見的に非常にふくよか。

いわゆるメタボ体型だ。

第四王子も例に漏れず、適度に痩せていたり、鍛えられていてすらっとした男性が素敵だと思う人が見ればまず顔をしかめる贅肉の溜め込み具合だという。

相撲取りタイプならOKという女性であっても「これはない」と言い切るくらい、筋肉を感じさせない太り方をしている30代の王子らしい。

シュヴァルドにあれだけ熱烈に恋をしていると分かるグラニアにとっては地獄の様な結婚になるだろう。

おまけに第一夫人はパルミューラの大臣の娘で年齢は20代前半、第二夫人は大商人の娘の30代。

第一夫人はともかく、下手に高いプライドをひけらかして生家が自分の生家よりも格下であるからと偉そうにした場合大変なことになる。

ああした一夫多妻が認められている王国での第一夫人は国内における相応の影響力のある権力者の娘等、嫁ぎ先の地位や権力を固められる家の者が選ばれる。

第二夫人は男性が選ぶこともあるだろうが、王家ともなれば財力などを基準に選ぶことが当たり前。

つまり、今のエリマック侯爵家よりも莫大な財産を保有している可能性を秘めているのが第二夫人の生家である。

下手に馬鹿にすると「借金で首が回らない家の娘が何を偉そうに」と剛速球の嫌味が飛んでくることになる。

更に、第二夫人としてしっかり受け入れられているということは、第一夫人とも相応に仲良くできているということであるので、第二夫人を敵に回すような事をした挙句、険悪な関係しか築けないだろうと思われたら最後、第一夫人が味方になってくれることも望めなくなる。

「…まあ、頑張ってほしいですね」

「とりあえずこっちにはちゃんと金払ってほしいな」

王家に対してグラニアを他国に嫁がせることを進言したとしても、その代わりに何かを要求した可能性は高い。

多分金銭だろうと思うからこそ、シュヴァルドはグラニアの先行きなどには思いをはせることなく、迷惑をかけられたこちらにきちんと金を払ってくれとしか口に出さずに、グウェンドリンと共に再び仕事に戻るのであった。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

処理中です...