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舞踏会のトラブルから約半月後、制服のサイズ測定なども終えていつも通り仕事に励むグウェンドリンとシュヴァルドの元に、一つの連絡が国から来た。
「…これは」
上等な紙に書かれたそれは、海を挟んで向こう側にある砂漠の広がる国へ友好の証としてエリマック侯爵家の令嬢、グラニアが嫁ぐというものだった。
「砂漠の国であるパルミューラはそこまで仲良くはないけれど貿易に関しての手を組んでいる国だ」
「シルクはそこからの輸入でしたね」
「ああ」
所謂前世の地球におけるシルクロードの先にある、シリアやアラブ共和国のようなところだと思えばいいだろう。
実際、本で読んだり話を聞いたりしたところ、更に東側にある国から絹を交易で得て、それを絹織物などに加工したり、更に別の国へ輸出したりしている国らしい。
そして、パルミューラの特徴は国が砂漠に囲まれているだけでなく、一般男性に至るまで一夫多妻が認められている国でもあるということだ。
ちなみに地球における一夫多妻は簡単に男性が決められる事ではなくなっている。
国によっては裁判官の許可が必要なところもあれば、第一夫人にお伺いを立てて娶るといった段階を踏まなければならないことも多い。
更に近代的な考え方をする女性も多くなってきたことで、現在では一夫多妻の状態にある事自体かなり少なくなっている国もめずらしくない。
そして、ドバイなどにおける一夫多妻は戦争が尽きない時代に未亡人が続出したことで、そんな女性たちを守るために経済的に豊かな男性たちが生活保障を行うという目的から認められたという歴史からくるものでもある。
残念ながら、この中世風味の世界においての一夫多妻は誰もが安易に考えられるハーレム願望のそれと同じだ。
「…グラニア嬢は、第四王子の第三夫人ですか」
「まあ、あんだけやらかした身の上と考えれば高い方だな」
一夫多妻が認められている国の第三夫人と言われると微妙なところだが、あれだけ騒ぎ立てた上に王家からの覚えもかなり悪くなっただろうグラニアにとっては十分高い方である。
下手すると王家の人間ではなく高官の妻の1人として送られた可能性もある。
しかし、グラニアにとってはそちらの方がずっと良かったのかもしれない。
パルミューラ王国の男性王族はその多くが外見的に非常にふくよか。
いわゆるメタボ体型だ。
第四王子も例に漏れず、適度に痩せていたり、鍛えられていてすらっとした男性が素敵だと思う人が見ればまず顔をしかめる贅肉の溜め込み具合だという。
相撲取りタイプならOKという女性であっても「これはない」と言い切るくらい、筋肉を感じさせない太り方をしている30代の王子らしい。
シュヴァルドにあれだけ熱烈に恋をしていると分かるグラニアにとっては地獄の様な結婚になるだろう。
おまけに第一夫人はパルミューラの大臣の娘で年齢は20代前半、第二夫人は大商人の娘の30代。
第一夫人はともかく、下手に高いプライドをひけらかして生家が自分の生家よりも格下であるからと偉そうにした場合大変なことになる。
ああした一夫多妻が認められている王国での第一夫人は国内における相応の影響力のある権力者の娘等、嫁ぎ先の地位や権力を固められる家の者が選ばれる。
第二夫人は男性が選ぶこともあるだろうが、王家ともなれば財力などを基準に選ぶことが当たり前。
つまり、今のエリマック侯爵家よりも莫大な財産を保有している可能性を秘めているのが第二夫人の生家である。
下手に馬鹿にすると「借金で首が回らない家の娘が何を偉そうに」と剛速球の嫌味が飛んでくることになる。
更に、第二夫人としてしっかり受け入れられているということは、第一夫人とも相応に仲良くできているということであるので、第二夫人を敵に回すような事をした挙句、険悪な関係しか築けないだろうと思われたら最後、第一夫人が味方になってくれることも望めなくなる。
「…まあ、頑張ってほしいですね」
「とりあえずこっちにはちゃんと金払ってほしいな」
王家に対してグラニアを他国に嫁がせることを進言したとしても、その代わりに何かを要求した可能性は高い。
多分金銭だろうと思うからこそ、シュヴァルドはグラニアの先行きなどには思いをはせることなく、迷惑をかけられたこちらにきちんと金を払ってくれとしか口に出さずに、グウェンドリンと共に再び仕事に戻るのであった。
「…これは」
上等な紙に書かれたそれは、海を挟んで向こう側にある砂漠の広がる国へ友好の証としてエリマック侯爵家の令嬢、グラニアが嫁ぐというものだった。
「砂漠の国であるパルミューラはそこまで仲良くはないけれど貿易に関しての手を組んでいる国だ」
「シルクはそこからの輸入でしたね」
「ああ」
所謂前世の地球におけるシルクロードの先にある、シリアやアラブ共和国のようなところだと思えばいいだろう。
実際、本で読んだり話を聞いたりしたところ、更に東側にある国から絹を交易で得て、それを絹織物などに加工したり、更に別の国へ輸出したりしている国らしい。
そして、パルミューラの特徴は国が砂漠に囲まれているだけでなく、一般男性に至るまで一夫多妻が認められている国でもあるということだ。
ちなみに地球における一夫多妻は簡単に男性が決められる事ではなくなっている。
国によっては裁判官の許可が必要なところもあれば、第一夫人にお伺いを立てて娶るといった段階を踏まなければならないことも多い。
更に近代的な考え方をする女性も多くなってきたことで、現在では一夫多妻の状態にある事自体かなり少なくなっている国もめずらしくない。
そして、ドバイなどにおける一夫多妻は戦争が尽きない時代に未亡人が続出したことで、そんな女性たちを守るために経済的に豊かな男性たちが生活保障を行うという目的から認められたという歴史からくるものでもある。
残念ながら、この中世風味の世界においての一夫多妻は誰もが安易に考えられるハーレム願望のそれと同じだ。
「…グラニア嬢は、第四王子の第三夫人ですか」
「まあ、あんだけやらかした身の上と考えれば高い方だな」
一夫多妻が認められている国の第三夫人と言われると微妙なところだが、あれだけ騒ぎ立てた上に王家からの覚えもかなり悪くなっただろうグラニアにとっては十分高い方である。
下手すると王家の人間ではなく高官の妻の1人として送られた可能性もある。
しかし、グラニアにとってはそちらの方がずっと良かったのかもしれない。
パルミューラ王国の男性王族はその多くが外見的に非常にふくよか。
いわゆるメタボ体型だ。
第四王子も例に漏れず、適度に痩せていたり、鍛えられていてすらっとした男性が素敵だと思う人が見ればまず顔をしかめる贅肉の溜め込み具合だという。
相撲取りタイプならOKという女性であっても「これはない」と言い切るくらい、筋肉を感じさせない太り方をしている30代の王子らしい。
シュヴァルドにあれだけ熱烈に恋をしていると分かるグラニアにとっては地獄の様な結婚になるだろう。
おまけに第一夫人はパルミューラの大臣の娘で年齢は20代前半、第二夫人は大商人の娘の30代。
第一夫人はともかく、下手に高いプライドをひけらかして生家が自分の生家よりも格下であるからと偉そうにした場合大変なことになる。
ああした一夫多妻が認められている王国での第一夫人は国内における相応の影響力のある権力者の娘等、嫁ぎ先の地位や権力を固められる家の者が選ばれる。
第二夫人は男性が選ぶこともあるだろうが、王家ともなれば財力などを基準に選ぶことが当たり前。
つまり、今のエリマック侯爵家よりも莫大な財産を保有している可能性を秘めているのが第二夫人の生家である。
下手に馬鹿にすると「借金で首が回らない家の娘が何を偉そうに」と剛速球の嫌味が飛んでくることになる。
更に、第二夫人としてしっかり受け入れられているということは、第一夫人とも相応に仲良くできているということであるので、第二夫人を敵に回すような事をした挙句、険悪な関係しか築けないだろうと思われたら最後、第一夫人が味方になってくれることも望めなくなる。
「…まあ、頑張ってほしいですね」
「とりあえずこっちにはちゃんと金払ってほしいな」
王家に対してグラニアを他国に嫁がせることを進言したとしても、その代わりに何かを要求した可能性は高い。
多分金銭だろうと思うからこそ、シュヴァルドはグラニアの先行きなどには思いをはせることなく、迷惑をかけられたこちらにきちんと金を払ってくれとしか口に出さずに、グウェンドリンと共に再び仕事に戻るのであった。
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