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カトリーヌの目からすれば、不適の笑みに見えただろう。
余りにも獲物を見定めるような、強者の笑み。
―逃げられない
一瞬にしてカトリーヌはそう思った。
「本当に恥知らずな考えだこと。
あなた、確かきちんと令嬢としての教育の基礎は終わっていたはずよね?
私の元にもきちんと報告が来たのだもの。
終わってないなんてこと、ありえるはずないわ」
それなのに
「それなのに、不貞を一度でも考えるだなんて…。
もう、領地に帰っておく?
なんならヴァルファズルにお願いして出家先も見繕っておいてあげましょうか」
「や、やめ」
「ブラギ家とスカルド令息に関してはこちらできちんと対応するから、あなたは気にしなくていいわよ。
むしろ、もう我が家の事を何も知る必要はなくなるでしょうから、あなたは決められたところで静かに暮らしていなさい」
どうにか母の言葉を遮ろうとするカトリーヌの言葉など知らぬとばかりに畳みかけるフリーンの顔は恐ろしいことに笑顔のまま変わらない。
ただ、その目は決して笑っていなかった。
おまけに話は終わりだと言わんばかりに席を立とうとした母を、カトリーヌが躍起になって止めた。
「待ってください!!」
令嬢らしからぬ大声かもしれないが、カトリーヌが叫ぶように大声を出すことなど、ヴォーダン伯爵家にとっては日常茶飯事に近い。
特に領地の本邸の使用人たちにとっては「まーた叫んでるよ」と嫌な顔する程度で終わるような本当に日常的なものに近かった。
タウンハウスの使用人たちはそれほどまだ慣れてはいなかったが、フリーン付きの侍女が押しとどめ「あれはいつものことですから」と宥めて各々を仕事に戻らせた。
「……」
「待って、ください!お願いします!」
「……」
「ふ、不貞のことを考えてしまったのはすみません、私が悪いです」
実際、お互いに好き合ってではなくても婚約の相手がいるのに別の相手を好きになり、不貞を考えるというのは非常識だ。
またカトリーヌの場合は他に好きな人ができているわけでもないのに、将来を考えて不貞の計画を立てていると言っても過言ではない思考をしているので余計に性質が悪い。
「…それで?」
フリーンは謝罪で終わりなのかと冷たい表情でカトリーヌを見下ろした。
「も、もう不貞なんて考えません。スカルド様と、婚約して、結婚します。
だから領地には!」
「別に領地に戻ってもスカルド様と結婚すればいいだけの話じゃない?
ここに残らなくても別段問題ないわよ?」
「私、学園に行きたいんです!」
「学園に行けば、あなた不貞の相手を無意識に探すかもしれないじゃない。
私としてはそちらのほうが心配です」
「絶対にしません!」
最早泣きながらに近い宣言に、フリーンは一拍考え込んで、自身についている侍女を呼び出して、紙とペンを用意させてテーブルの上でさらさらと文章を書いていく。
「これにサインなさい」
「、これは」
「誓約書です」
フリーンが差し出したのは誓約書だ。
きちんと形式に乗って作成されているため、きちんと効力を発揮する代物でもある。
そしてそこにはすでにフリーンの名前がフルネームで記載されている。
フルネームで記載され、家族に記載させるということは家族だからというなあなあの態度を一切取り合わず、冷酷に記された内容に沿った対応をするという本気の態度でもあった。
「これにサインした瞬間、あなたの不貞行為を考えるような素振りを一瞬でも誰かから報告を受けたその時、即刻領地に戻らせ家を出します。
二度と家に戻れるとは思うのではありません。
追放処分です。
ヴァルファズルには後で手紙で伝達しておきますので、安心なさい」
余りにも獲物を見定めるような、強者の笑み。
―逃げられない
一瞬にしてカトリーヌはそう思った。
「本当に恥知らずな考えだこと。
あなた、確かきちんと令嬢としての教育の基礎は終わっていたはずよね?
私の元にもきちんと報告が来たのだもの。
終わってないなんてこと、ありえるはずないわ」
それなのに
「それなのに、不貞を一度でも考えるだなんて…。
もう、領地に帰っておく?
なんならヴァルファズルにお願いして出家先も見繕っておいてあげましょうか」
「や、やめ」
「ブラギ家とスカルド令息に関してはこちらできちんと対応するから、あなたは気にしなくていいわよ。
むしろ、もう我が家の事を何も知る必要はなくなるでしょうから、あなたは決められたところで静かに暮らしていなさい」
どうにか母の言葉を遮ろうとするカトリーヌの言葉など知らぬとばかりに畳みかけるフリーンの顔は恐ろしいことに笑顔のまま変わらない。
ただ、その目は決して笑っていなかった。
おまけに話は終わりだと言わんばかりに席を立とうとした母を、カトリーヌが躍起になって止めた。
「待ってください!!」
令嬢らしからぬ大声かもしれないが、カトリーヌが叫ぶように大声を出すことなど、ヴォーダン伯爵家にとっては日常茶飯事に近い。
特に領地の本邸の使用人たちにとっては「まーた叫んでるよ」と嫌な顔する程度で終わるような本当に日常的なものに近かった。
タウンハウスの使用人たちはそれほどまだ慣れてはいなかったが、フリーン付きの侍女が押しとどめ「あれはいつものことですから」と宥めて各々を仕事に戻らせた。
「……」
「待って、ください!お願いします!」
「……」
「ふ、不貞のことを考えてしまったのはすみません、私が悪いです」
実際、お互いに好き合ってではなくても婚約の相手がいるのに別の相手を好きになり、不貞を考えるというのは非常識だ。
またカトリーヌの場合は他に好きな人ができているわけでもないのに、将来を考えて不貞の計画を立てていると言っても過言ではない思考をしているので余計に性質が悪い。
「…それで?」
フリーンは謝罪で終わりなのかと冷たい表情でカトリーヌを見下ろした。
「も、もう不貞なんて考えません。スカルド様と、婚約して、結婚します。
だから領地には!」
「別に領地に戻ってもスカルド様と結婚すればいいだけの話じゃない?
ここに残らなくても別段問題ないわよ?」
「私、学園に行きたいんです!」
「学園に行けば、あなた不貞の相手を無意識に探すかもしれないじゃない。
私としてはそちらのほうが心配です」
「絶対にしません!」
最早泣きながらに近い宣言に、フリーンは一拍考え込んで、自身についている侍女を呼び出して、紙とペンを用意させてテーブルの上でさらさらと文章を書いていく。
「これにサインなさい」
「、これは」
「誓約書です」
フリーンが差し出したのは誓約書だ。
きちんと形式に乗って作成されているため、きちんと効力を発揮する代物でもある。
そしてそこにはすでにフリーンの名前がフルネームで記載されている。
フルネームで記載され、家族に記載させるということは家族だからというなあなあの態度を一切取り合わず、冷酷に記された内容に沿った対応をするという本気の態度でもあった。
「これにサインした瞬間、あなたの不貞行為を考えるような素振りを一瞬でも誰かから報告を受けたその時、即刻領地に戻らせ家を出します。
二度と家に戻れるとは思うのではありません。
追放処分です。
ヴァルファズルには後で手紙で伝達しておきますので、安心なさい」
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