二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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カトリーヌは何とか自分なりに論理的な理由を手紙にずらりと書いて、とにかく母が提案するだろう、あちらの申し出を断ってほしいということを力強く書いた。

そしてそれをどうにかこうにか即座に乾かそうと必死でばたばた扇いでいたところ、見かねた侍女たちが手伝ってくれ、なんとか速やかにインクを乾かすことができた。

こういう時、速乾だった前世のボールペンのインクは本当にすごかったんだとカトリーヌは実感する。

「(はぁー…手間ばっかり。イケメン多いのは良いけど、こういう手間がかかるのは好きじゃないのよねぇ)」

現代の便利なものばかりにあふれた生活に慣れきっていたカトリーヌにとってこうした手間のかかる中世の生活はどうしてもストレスだった。

こうした手間のかかる生活が好きであれば嬉々として乾かすまでの時間も含めて素敵な時間になるのだろうが、それがストレスに感じられるのであれば何をしてもストレスを感じるようなものだった。

インクが乾いたのを確認して、封筒に入れて封蝋を押したそれを即座に侍女に押し付ける。

「これをお母様の手紙を配達する時に一緒に配達してもらって!
絶対にお母様の手紙より後に着かないようにして!」

それだけは必須事項なのでカトリーヌは必死になって侍女に申し伝え、それを侍女は「かしこまりました」と一礼して部屋を出て行った。

後はもうなる様にしかならない。

多分父は母の提案を受けるだろうとカトリーヌも分かっている。

それでも、それでも一縷の希望に縋りつきたいカトリーヌは後は祈る事しかできないからこそ、必死になってぐっと両手を組んで握りしめ、手紙を開いた父が自分の事情を汲んでくれることを祈る。

ただ、自分の父が貴族家の当主であり、家の利益と付き合いも考えて非常にシビアな決定を下すことに時としては躊躇わない人間でもあるということを、彼女は忘れていた。

翌日、領地にいるヴァルファズルには二通の手紙が届いた。

一通は妻であるフリーンから、もう一通は娘であるカトリーヌから。

ヴァルファズルはカトリーヌの名前を見た瞬間、一瞬グウェンドリンと見間違えたかと思ったが、何度も見返しても差出人名はカトリーヌだった。

その瞬間ぎょっとした顔をしたものの、カトリーヌからの初めての手紙に興味が勝って、まずそちらを開いた。

そしてそこにつらつらと書かれていブラギ伯爵家からの申し出の事、そしてそれを断りたいという旨、その理由に目を通してヴァルファズルは「はあ」とため息を吐いた。
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