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しおりを挟む翌日
ガタゴトと現代に比べれば整備されているとは言い難い、街道をカトリーヌは馬車で進む。
ようやくブラギ伯爵家から解放されたと感じたカトリーヌは誰も一緒に馬車に乗っていないのをいいことに、ぐったりとしただらしのない格好をしていた。
それだけ精神的に疲れているということでもあるが、口うるさい母も姉も侍女もいないので窓から見えない程度であれば問題ない。
おまけに貴族の馬車と言うのは、ある程度の身分以上の馬車にはプライバシーの考慮か、カーテンがついているものがある。
カトリーヌが乗っている馬車にはついているので、そのカーテンを閉めてしまえば誰にも見えない。
馬車に長時間乗る場合、眠ってしまうこともしばしばある。
そうしたときの顔や、誰にもあまり聞かれたくない、話をしているところを見られたくない時などにカーテンは閉められる。
また、長距離の移動などにおいても、その家のどんな人が乗っているのか特定できないようにするためにも用いられる。
なのでカーテンを閉めたカトリーヌは思いっきりだらけていたのだ。
「(はぁー…やっと終わった。お友達とすぐに遊べるのは良かったけれど、あの夫人、本当いい加減にしてよね!
どうして私があんたのドジの尻拭いみたいなことをしなきゃいけないのよ!)」
カトリーヌはまだきちんと納得していなくても、婚約者の家だ。
失礼が無いように振る舞わなければこの後困るのはカトリーヌの方なので、ほぼ一緒に行動している夫人のドジの被害をあれこれカバーしなければならなかった。
掃除などはメイドたちがしっかりやってくれるので、カトリーヌは夫人に声をかけて慰める、気にしていないように振る舞うくらいで良かったのだが、自身の考え抜いた末のアイデアを初っ端からこけさせたそのドジに言いたいことはいっぱいあった。
でもいえないからこそ、カトリーヌは馬車の中でぐったりとしているのである。
「やっと家に帰れる…、帰ったらパーティーがある日までグダグダしてよう…」
お友達と遊ぶ時も、さほど面白くない経験をカトリーヌはしていた。
お茶会をしようと呼ばれたので行くと、「婚約したから紹介したい」と相手を紹介されるような場が多かった。
周囲はおめでとうと祝福の声を上げるものの、一部は心から祝福しているような風ではない。
むしろ、「なんであんたの方が先に」と言いたげな表情だった。
そしてカトリーヌもその婚約者がイケメンで、自分に一目惚れして、そこから始まるラブロマンスをちょっと期待していたのだが、それほどイケメンではない。
むしろ自身の婚約者となったスカルドの方がよほどイケメンと言えるような、普通の顔立ちの令息だったので、即座に興味が失せた。
その後は令息はちょっと顔を見せに来ただけだからと退散したのも相まって、お茶会で自分たちの不満やら愚痴やらを言いたい放題のような状態だった。
思ったような楽しさもなく、ひたすらに遠出した疲ればかりが蓄積する様なブラギ伯爵家の滞在の日々。
それも終わったと意気揚々と馬車に乗りこんだカトリーヌは、その日の夜、やっと自分が一息つける自宅に到着したのだった。
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