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咲く恋
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七月に入り、日中のじめじめとした暑さとは異なり、比較的涼しさを感じる早朝の中、咲人は大通りのガードレールに肘掛けながら何をする訳でもなく、ただ一人、アイスを口にしていた。
胸下までの短い丈のTシャツに、ショートパンツ。サンダルを履いた両脚の片方を、ブランコを漕ぐ様にぶらぶらとさせながら、空を見上げた。
彼の名は鶴見咲人。中学生だが、桃色のショートカットに、長い睫毛の大きな碧色の瞳に加え、両耳に数多のピアスが飾られている彼は、中性的な雰囲気を帯びている。
空には入道雲が浮かび、辺りでは、うるさい程に蝉が鳴いている。咲人以外に人影はなく、交通量も少ない。
一人で佇んでいると、自転車のベルを数回鳴らす音と共に、コツコツと一定のリズムで靴音を鳴らしながら、一人の青年が近付いてきた。漆黒の短髪に、純日本人に多い黒に近い茶色の瞳。身長は咲人より20センチ程高く、咲人の目線が青年の方に向き、彼を視界に捉えた瞬間、眼を大きく瞬かせ、笑みが浮かんだ。
「先生、おはよ」
「おう、おはよ。お前、こんな朝早くから何してんだよ?」
「涼しいから、ちょっと散歩してたの」
「学校はまともに行ってんのか?」
先生と呼ばれた青年は苦笑しながら咲人の前で止まり、その脇に自転車を停めると、同じガードレールに両肘を組ませた。青年の問いに、「一応、ね」と悪びれる様子なく返答すると、咲人は思い付いた、と言わんばかりに眼を輝かせた。
「ねぇ、今日先生ん家行ってもいい?」
「断っても来るんだろ」
「もちろん。先生、一人じゃ寝れないでしょ?」
「ガキじゃねぇんだから、一人で過ごせるわ。
つーか、まさか泊まる気じゃねぇだろうな?」
青年の言葉に、不思議そうに眼を向けると、澄んだ碧色の瞳が細まり、悪戯に笑みを浮かべる。どうやら、その気の様だ。
当然と言わんばかりの咲人の態度に、青年は溜息を吐く。
「母さんが寂しがるだろ。晩飯食ったら帰れ」
「大丈夫だよ。母さん仕事だし」
「・・・ったく。俺から彩花さんに連絡入れとくから、一泊だけだぞ」
彩花という人物は、咲人の母親だ。母子家庭で育った彼の唯一の家族である。
青年とも顔馴染みで、咲人がまだ幼い頃から付き合いがある。青年が十四の頃に咲人が生まれ、それ以降、近所という事もあり、彩花が仕事で帰宅が遅くなる際には度々面倒を見ていた。
青年は、彼の事を実の弟の様に可愛がっていた。
「ありがと、先生。大好き」
「はいはい」
青年基、蓮田涼眞。彼女と別れて八年目になる彼は、近所の男子中学生に好意を持たれている。涼眞の恋愛対象は女性だが、咲人に対してはまた別の感情を抱いている様である。それは彼自身でも、まだ明確な答えが出ておらず、毎度咲人のペースに呑まれがちだ。
しかしそれは、今に始まった事ではない。咲人は昔から、涼眞にしか興味がないと言っても過言ではない程、彼と接してきている。
涼眞は、大学卒業と共に一人暮らしを始めたが、実家とはそう遠くない距離の場所に住んでいる。その為、咲人が度々泊まりに来ているのだ。
風呂を除き、寝る時も、咲人の要望で一緒の布団で寝ているが、勿論男性、それも中学生に手を出す様な事はない。それは自身が高校の教師という立場もあるが、何より真面目な性格故に、行動には細心の注意を払っている。
「んー。夕飯何にすっかな」
「先生の作る料理だったら、なんでも好きだよ」
「そう言われると、作る側としてはありがてぇな。まぁ、適当に考えとく」
「仕事が終わったらまた連絡する」と告げると、涼眞は自転車に跨り、咲人に向けて手を振った。同じ様に咲人も手を振り返し、自転車を漕ぐ姿が見えなくなるまで、その場を離れなかった。
胸下までの短い丈のTシャツに、ショートパンツ。サンダルを履いた両脚の片方を、ブランコを漕ぐ様にぶらぶらとさせながら、空を見上げた。
彼の名は鶴見咲人。中学生だが、桃色のショートカットに、長い睫毛の大きな碧色の瞳に加え、両耳に数多のピアスが飾られている彼は、中性的な雰囲気を帯びている。
空には入道雲が浮かび、辺りでは、うるさい程に蝉が鳴いている。咲人以外に人影はなく、交通量も少ない。
一人で佇んでいると、自転車のベルを数回鳴らす音と共に、コツコツと一定のリズムで靴音を鳴らしながら、一人の青年が近付いてきた。漆黒の短髪に、純日本人に多い黒に近い茶色の瞳。身長は咲人より20センチ程高く、咲人の目線が青年の方に向き、彼を視界に捉えた瞬間、眼を大きく瞬かせ、笑みが浮かんだ。
「先生、おはよ」
「おう、おはよ。お前、こんな朝早くから何してんだよ?」
「涼しいから、ちょっと散歩してたの」
「学校はまともに行ってんのか?」
先生と呼ばれた青年は苦笑しながら咲人の前で止まり、その脇に自転車を停めると、同じガードレールに両肘を組ませた。青年の問いに、「一応、ね」と悪びれる様子なく返答すると、咲人は思い付いた、と言わんばかりに眼を輝かせた。
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「もちろん。先生、一人じゃ寝れないでしょ?」
「ガキじゃねぇんだから、一人で過ごせるわ。
つーか、まさか泊まる気じゃねぇだろうな?」
青年の言葉に、不思議そうに眼を向けると、澄んだ碧色の瞳が細まり、悪戯に笑みを浮かべる。どうやら、その気の様だ。
当然と言わんばかりの咲人の態度に、青年は溜息を吐く。
「母さんが寂しがるだろ。晩飯食ったら帰れ」
「大丈夫だよ。母さん仕事だし」
「・・・ったく。俺から彩花さんに連絡入れとくから、一泊だけだぞ」
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「ありがと、先生。大好き」
「はいはい」
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しかしそれは、今に始まった事ではない。咲人は昔から、涼眞にしか興味がないと言っても過言ではない程、彼と接してきている。
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「んー。夕飯何にすっかな」
「先生の作る料理だったら、なんでも好きだよ」
「そう言われると、作る側としてはありがてぇな。まぁ、適当に考えとく」
「仕事が終わったらまた連絡する」と告げると、涼眞は自転車に跨り、咲人に向けて手を振った。同じ様に咲人も手を振り返し、自転車を漕ぐ姿が見えなくなるまで、その場を離れなかった。
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