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異質な存在
しおりを挟む「鶴見、ちょっといいか?」
涼眞と別れ、暫くしてから学校へ行くと、早々に、廊下で擦れ違った担任の教師に呼び止められた。
咲人は一瞬ばつが悪そうな顔を浮かべたが、いつもの笑顔で振り向く。
「吉川先生、おはようございます」
「おはよう。
・・・あのなぁ、鶴見。学校に来るのは良い事だ。だけど、その髪とピアスは、先生として見過ごせないぞ」
「そのうち直してくるよ。成績も悪くないし、少しだけ見逃して?」
「まったく、調子いいんだから・・・。夏休み終わるまでには直してこいよ」
担任の言葉に肯定も否定もせず、ただ笑みを浮かべながら、職員室へ向かう彼の後ろ姿に手を振った。
咲人は、入学当初から、良くも悪くも目立つ存在だった。所謂、不良達から目をつけられる事もあったが、明るく人見知りせず、男女問わず誰に対しても平等に接する性格から、今では逆に可愛がられている。
成績も、学年で上位に入る程だ。というのも、毎日の様に涼眞から教わっているという事が、理由の一つである。
そんな事から、教員や生徒達からも、他にはいない、異質な存在だと思われている様だ。
ただ、先程の様に、その奇抜な見た目から、教員達は頭を悩ませている。校則に反する格好でなければ、普通の中学生。
咲人は自分の感情に素直だが、時々何を考えているのか分からない面がある。それは教員に関わらず、涼眞も同様に悩んでいた。
そんな事は露知らず、本人は「おはよー」と言いながら教室に入って行った。
席に着くと同時に、前の席の男子生徒が椅子ごと振り返ってきた。
「咲人、今日の放課後、俺ん家来いよ」
「ごめん。今日は学校終わったら行く所あるんだ」
「咲人がやりたがってたゲーム買ったのにー」
「えっ、本当?また今度行くから、その時やらせて」
「分かった。絶対来いよ?」
男子生徒は残念そうに頷くと、再び正面に戻った。
予鈴が鳴り響き、教室の騒めきが次第に収まっていく。
間もなくして、先程廊下で会った担任が静かにドアを開けて教卓に立つと、日直の女子生徒が大きく高い声を上げる。
「起立!礼!」
生徒全員が彼女の掛け声通りに行動し、合図と共に着席すると、担任の吉川は普段の様に点呼を取り始めた。
全員の名前を呼び終わると、教卓に身を乗り出しながら、ゆっくりと話し始めた。
「来週から夏休みが始まります。気が緩みがちだちだと思うけど、休み中も部活がある人は遅れない様に。
宿題も、最終日に慌ててやらず、余裕を持ってやれよー」
それから・・・と付け足すと、吉川は真っ先に咲人を見た後、周りを見渡した。
「髪染めたり、ピアス空けてる人は、夏休みが終わるまでに直しておく事。先生も生徒指導の先生から注意されんだから、頼むぞ」
ホームルームが終わると、生徒達は授業の準備を始めだす。一時間目は理科の為、教室から移動しなければならない。
咲人は、今朝話し掛けてきた男子生徒と並び、理科室へと向かった。
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